君が居場所をくれたから

帆向の隣に座ることになった心和は、内心ひどく戸惑っていた

彼は、まるでこの空間の空気を変えてしまうような存在だった

自由奔放で、眩しいくらいに明るくて、クラスの中心にいるタイプ

──自分とは正反対の人間

「なあ、廣瀬ってさ、あんまり人と喋んないよな?」

突然の問いかけに、心和は一瞬言葉を失った

人と深く関わることを避けてきたし、それを特別気にしたこともなかった

けれど、こうして真正面から言われると、どう答えればいいのか分からない

「……別に、話す必要がないだけ」

できるだけそっけなく返す

だが、帆向は気にする様子もなく、ニッと笑った

「そっか~!でもさ、喋ると意外と普通なんだな!」

「……意外と?」

「うん、もっと暗い感じかと思ってた!」

遠慮のない言葉に、心和は思わず睨むように帆向を見た

しかし、彼は気にするどころか、むしろ楽しそうに笑っている

「ほら、そうやってムスッとするのも意外!」

「……何が面白いの」

「いや、だって表情が変わるの、見てて楽しいし」

心和はますます困惑した

こんなふうに正面から自分に興味を向けてくる人は、今までいなかった

「なあ、俺たちってさ、話す機会全然なかったよな?」

「……そうだね」

「じゃあ、今日からは話すことにしようぜ!」

あまりにも唐突な宣言に、心和は言葉を失った

「……どうして?」

「んー、なんとなく?」

帆向は軽い口調でそう言うと、机の上に頬杖をつく

「なんかさ、廣瀬ってさ、ずっと一人でいるのが普通みたいな顔してるけど、
 本当はそうでもないんじゃねえの?」

「……そんなこと」

「まあまあ、まだ否定しなくていいって!」

帆向は無邪気に笑いながら言った

その笑顔が、今までの高校生活にはなかった種類のものに思えて、心和は小さく息をのんだ