文化祭の準備が終わり、私は花緋ちゃんを探して校舎を歩いていた

——あのあと、優鞠ちゃんはずっと落ち込んでいた

でも、花緋ちゃんのほうも、あのままじゃきっと後悔しているはず

「……花緋ちゃん、どこ行ったんだろ」

渡り廊下を抜け、階段のほうへ向かう

——すると、階段の上に花緋ちゃんが立っていた

「……花緋ちゃん！」

思わず駆け寄ろうとすると、彼女がこちらを振り返る

その表情は、驚くほど冷たかった

「……心和、何しに来たの？」

「えっと……優鞠ちゃんのこと、まだ怒ってる？」

「……別に。」

「なら、話し合ったほうがいいよ。優鞠ちゃんも——」

「うるさい」

花緋ちゃんの声が、ピシャリと私の言葉を遮る

「……え？」

「なんであんたがそんなこと言うの？」

「……だって、二人とも仲直りしてほしいし——」

「ふざけないで！！！」

突然、花緋ちゃんが叫んだ

驚いて、一歩後ずさる

「……花緋ちゃん？」

「全部あんたのせいでしょ！！！」

「……え？」

「なんであんたばっかり……！！！」

彼女の目は怒りと、なにか別の感情で揺れていた

「海藤くんにも、優鞠にも、みんなにも……あんたばっかり特別扱いされて……！！！」

「……そんなこと——」

言いかけた瞬間だった

——ドンッ！！！

「——っ！！！」

強い衝撃が背中を襲った

私はバランスを崩し、階段から落ちそうになる——

その瞬間——

「心和！！！」

誰かの腕が私を引き寄せた

——海藤くんだった

「っ……！！」

気づいたときには、彼の腕の中にいた

落ちる直前で、ぎりぎりのところで受け止めてくれたのだ

「お前……っ、何やってんだよ……！！！」

彼の声が震えている

「……ごめん……っ」

動揺しながらも、私は花緋ちゃんのほうを見る

彼女は、息を荒くしながら立ち尽くしていた。

「……っ」

その顔には、怒りだけじゃなく——涙が浮かんでいた

「……花緋ちゃん……」

「……ちがう……そんなつもりじゃ……」

彼女は震える声でそう言うと、そのまま走り去ってしまった

私は何も言えなかった

ただ、海藤くんの腕の中で、自分の心臓の音だけが響いていた——。