放課後の教室は、いつもより静かだった

窓の外では夕陽が傾き始め、オレンジ色の光が差し込んでいる

私は、自分の席に座ったまま、さっきの海藤くんの言葉を何度も頭の中で繰り返していた

——「一生お前を愛してる」

どこか切ないその言葉に

私の心の奥が、じわりと痛む。

どうして言ってくれないの？

どうして、一人で抱え込もうとするの？

私は——何もできないの？

「心和ちゃん」

ふいに、名前を呼ばれて顔を上げると、そこに立っていたのは星奈さんだった。

「……星奈さん。」

「ちょっと、話せる？」

彼女の表情は穏やかだったけれど、その目はどこか探るような色を帯びていた

私は少し迷ったけれど、こくんと頷く

二人で校舎裏まで来ると、夕陽の光が長い影を作っていた。

「……ねえ、星奈さん」

私は、思い切って聞いてみた

「海藤くんと、どういう関係なの？」

彼女は驚く様子もなく、むしろ少しだけ微笑んだ

「気になる？」

「……そりゃ、気になるよ。」

彼女はゆっくりと空を見上げた。

「私と海藤は、昔同じ中学校にいたの
　私はその時に一方的に海藤を好きになった
　それは私が中3で海藤が中2のときなの
　私ね、いろいろあって留年したんだ
　だから心和ちゃんと同じ学年なの
　それでね、一方的に好きになってストーカーしたりしてたの
　家に大量のラブレターを送ったりとか
　キモイよね...」

「……そっか」

「うん」

そこまで言って、彼女は口を噤んだ

私は息を呑んだ

まさかそんな関係だったなんて

「...そういう行為を繰り返しているうちに、私は先生に呼び出されたの
　海藤の親御さんから電話が来たみたい
　それで私は自宅謹慎になった
　そこからまったく立ち直れなくて、中学校をやめた
　それでなんとか入れてもらえる高校を探したらここで
　学校のホームページの写真に海藤がうつってて、それでここに転校したの
　私はまた一方的に恋心を伝えるんじゃなくて、謝りにここへ来たの」

「...そうだったんだ」

「ごめんね、心和ちゃん
　ほんとにごめんなさい」

星奈さんは泣きながらそう言った

彼女にそんな過去があったんだ...

「...話してくれてありがとう！もう大丈夫だよ」

「え？」

「星奈さんのこと、心寧ちゃんって呼んでもいいかな？」

「...うん！いいよ！」

こぼれる涙を拭い、心寧ちゃんはすっきりしたにこやかに笑顔を見せた