翌日の放課後、私は叶翔くんに呼ばれた中庭へ向かった
秋の風がそっと髪を揺らし、空はどこまでも澄んでいる
だけど、心は落ち着かないままだった
「……待たせた?」
「いや、ちょうど来たとこだよ」
ベンチに座っていた叶翔くんは、私を見ると小さく笑った
「……何か話したいことがあるんだよね?」
そう言うと、叶翔くんは少しだけ目を伏せて、ゆっくりと息を吐いた
「……あいつと、何かあった?」
「え?」
「昨日から、海藤の様子が変なんだよな~元気ないっていうか、ずっと考え込んでる感じでさ」
私はぎゅっとスカートの裾を握った
それって……やっぱり、星奈さんのこと?
「……昨日、屋上で二人が話してるのを聞いちゃったの」
正直に話した
星奈さんが、海藤くんのことをまだ好きだと言ったこと
それでも諦めないと宣言したこと
でも、海藤くんは何も言わなかったこと
叶翔くんは黙って聞いていた
「……そっか」
しばらくして、彼はぽつりと呟いた。
「廣瀬は……海藤のこと、信じてる?」
「え?」
「俺も星奈のことはよく知らないんだ。でも、海藤のことなら、昔からずっと見てきた。だからわかるんだよ。」
そう言って、叶翔くんは私の目を真っ直ぐ見た
「……あいつ、お前のこと、本気で大事に思ってるよ」
「……」
「それでも不安か?」
私は答えられなかった。
(信じたい!でも——)
心のどこかに引っかかる、あの違和感
「……海藤くんが、何か隠してる気がするの。」
思わず口をついて出た言葉に、叶翔くんの表情がわずかに変わった
「……なんでそう思う?」
「なんとなく……でも、ずっと感じてるの。話してくれないことがあるんじゃないかって。」
叶翔くんはしばらく沈黙したあと、静かに目を閉じた
そして、ゆっくりと口を開く
「……廣瀬には、まだ言えない。」
「え?」
「俺からは……いや、俺だって、ほんとは言いたくないんだ、けど……」
そこで一度言葉を切って、彼は少しだけ苦しそうに笑った。
「お前は、このまま何も知らないほうがいいかもしれない。」
「——!」
胸がぎゅっと締め付けられる
「どういう意味……?」
聞きたかった
でも、叶翔くんは首を横に振るだけだった
「……ごめん。」
それだけ言うと、彼は静かに立ち上がった
「でも、一つだけ言える。海藤は、お前のことが好きだよ。お前が思ってるより、ずっと。」
叶翔くんの背中が遠ざかる
私はその場に立ち尽くしたまま、胸の奥のざわつきが静まらないのを感じていた
(私が、何も知らないほうがいい?)
じゃあ、やっぱり……
海藤くんは、何かを隠してるんだ——
秋の風がそっと髪を揺らし、空はどこまでも澄んでいる
だけど、心は落ち着かないままだった
「……待たせた?」
「いや、ちょうど来たとこだよ」
ベンチに座っていた叶翔くんは、私を見ると小さく笑った
「……何か話したいことがあるんだよね?」
そう言うと、叶翔くんは少しだけ目を伏せて、ゆっくりと息を吐いた
「……あいつと、何かあった?」
「え?」
「昨日から、海藤の様子が変なんだよな~元気ないっていうか、ずっと考え込んでる感じでさ」
私はぎゅっとスカートの裾を握った
それって……やっぱり、星奈さんのこと?
「……昨日、屋上で二人が話してるのを聞いちゃったの」
正直に話した
星奈さんが、海藤くんのことをまだ好きだと言ったこと
それでも諦めないと宣言したこと
でも、海藤くんは何も言わなかったこと
叶翔くんは黙って聞いていた
「……そっか」
しばらくして、彼はぽつりと呟いた。
「廣瀬は……海藤のこと、信じてる?」
「え?」
「俺も星奈のことはよく知らないんだ。でも、海藤のことなら、昔からずっと見てきた。だからわかるんだよ。」
そう言って、叶翔くんは私の目を真っ直ぐ見た
「……あいつ、お前のこと、本気で大事に思ってるよ」
「……」
「それでも不安か?」
私は答えられなかった。
(信じたい!でも——)
心のどこかに引っかかる、あの違和感
「……海藤くんが、何か隠してる気がするの。」
思わず口をついて出た言葉に、叶翔くんの表情がわずかに変わった
「……なんでそう思う?」
「なんとなく……でも、ずっと感じてるの。話してくれないことがあるんじゃないかって。」
叶翔くんはしばらく沈黙したあと、静かに目を閉じた
そして、ゆっくりと口を開く
「……廣瀬には、まだ言えない。」
「え?」
「俺からは……いや、俺だって、ほんとは言いたくないんだ、けど……」
そこで一度言葉を切って、彼は少しだけ苦しそうに笑った。
「お前は、このまま何も知らないほうがいいかもしれない。」
「——!」
胸がぎゅっと締め付けられる
「どういう意味……?」
聞きたかった
でも、叶翔くんは首を横に振るだけだった
「……ごめん。」
それだけ言うと、彼は静かに立ち上がった
「でも、一つだけ言える。海藤は、お前のことが好きだよ。お前が思ってるより、ずっと。」
叶翔くんの背中が遠ざかる
私はその場に立ち尽くしたまま、胸の奥のざわつきが静まらないのを感じていた
(私が、何も知らないほうがいい?)
じゃあ、やっぱり……
海藤くんは、何かを隠してるんだ——



