午後の授業も、なんとなく上の空だった

黒板の文字を追いながらも、頭の片隅ではずっと海藤くんと星奈さんのことを考えていた

——昔、付き合ってたとか?

花緋ちゃんの言葉が何度も頭の中でリピートする

そんなわけ……

心の中で否定しようとしたけれど、もし本当にそうだったら? と思うと、胸の奥がざわざわした

海藤くんが私の知らない誰かと過ごしていた時間

それが、今、私の目の前で再び交差しようとしているのかもしれない

……気になる

だけど、聞くのが怖い

——どこまで知っていいんだろう?

放課後、私はいつも通り海藤くんのところへ行こうとした

でも、その瞬間——

「海藤くん、ちょっといい?」

星奈さんの声だった

私は思わず立ち止まる。

海藤くんは少し驚いたような顔をしたけれど、すぐに無表情に戻り、静かに頷いた

「……ああ」

「屋上、行こ?」

「……わかった」

私の視界の中で、二人が並んで歩いていく

……え?

まるで、他の誰も入り込めないみたいに、自然な距離で——

胸がぎゅっと締めつけられた

なんで……?

問いかけたいのに、何も言えなかった

そのまま二人の背中を見送ることしか、私にはできなかった