放課後

私は指定された体育館裏へ向かった

夕方の柔らかい風が頬を撫でる。静かな空気の中で、少しだけ緊張しながら待っていると...

「お、来た来た!」

ひょいっと片手を上げながら、叶翔くんが現れた

「……で、話って?」

「まぁ、そんな構えんなって~!ちょっと世間話しようぜ!」

「え、世間話?」

「そうそう!」

彼は壁にもたれかかりながら、軽く伸びをする

「なぁ、海藤と付き合ってみて、どう?」

「えっ?」

「いや、普通に気になってさ~」

私は一瞬、考え込む

「……楽しいよ!」

正直、それ以外の言葉が見つからなかった

「ふーん、そっか!」

叶翔くんは、少しだけ目を細める

「なら、よかった~」

「……?」

その言葉に、なんとなく引っかかるものを感じた

「……ねぇ、なんでそんな聞き方するの?」

「え?」

「なんか、すごく確認するみたいな……」

彼はふっと笑った

「ま、深い意味はねーよ!ただ……お前には、海藤との時間を大事にしてほしいなって思ってさ~」

「……どういう意味?」

「そのまんまの意味だぜ?」

「……叶翔くん?」

思わず、彼の目を覗き込む。

何かを隠してる

そう確信した。

だけど——

「まぁ、あいつ鈍感だからさ」

叶翔くんは、明るい口調で続けた

「好きってちゃんと伝えないと、すぐふざけるだろ? だから、ちゃんと伝えてやれよな」

「……うん」

私は頷いたけど、彼が本当に言いたかったことが何なのか、まだ分からないままだった

夕陽が、彼の横顔を淡く染めていた。

どこか、寂しそうに見えたのは——きっと気のせいじゃない