「……ようやく、落ち着いた……」

そう呟いて、私はぐったりと机に突っ伏した

あれから数日

「海藤くんと付き合ってる」騒動はなんとか収束した

最初こそ、みんな面白がってからかってきたけど、しばらくすれば慣れたのか、

「ま、海藤もそういうことあるんだな」くらいの扱いになった

優鞠ちゃんも純鈴ちゃんも花緋ちゃんも、質問攻めにするのはやめたみたいだった

おかげで、やっと落ち着いて学校生活が送れるようになった……と思っていたら

「なぁ、お前。」

授業終わり、ふいに声をかけられた

「ん?」

顔を上げると、そこにいたのは——叶翔くん

「ちょっと話したいことあるんだけど、放課後、体育館裏に来てくんない?」

「え……?」

体育館裏

それって、なんとなく「告白される場所」ってイメージがあるんだけど……

「おい、叶翔」

横から低い声が響いた

「うわ、こえぇ」

振り向くと、海藤くんがジト目で叶翔くんを見ていた

「お前、何しようとしてんの?」

「いやいやいや、変なことしねぇって!」

叶翔くんは両手を上げて、ひょいっと肩をすくめる

「ちょっと話したいだけだって~!な? だから、来てよ。」

「……う、うん!わかった!」

なんだろう、ちょっと気になるけど...

「よし、じゃあ放課後な!」

そう言い残して、叶翔くんは軽く手を振りながら教室を出て行った

「……お前、行くの?」

海藤くんがじとっとした目で私を見てくる

「う、うん……別に怪しい話じゃなさそうだし……」

「ふーん」

「なんでそんな顔してるの?」

「別に?」

全然「別に」じゃない気がする。

でも、なんとなく、この感じ——

少しだけ、嫉妬してるみたいで、可愛いかも

そんなことを思いながら、私は体育館裏へ向かうことにした。

...放課後、叶翔くんは何を話すつもりなんだろう?