「マジかよ……海藤、お前が彼女作るとか、想定外すぎるんだけど……!」

「え、海藤くんって彼女とか興味なさそうだったじゃん!? え、え、どういう流れで!?」

「いや、それよりもさ、告白したのどっち!? え、もしかして海藤くんから!?」

——質問攻め

それはもう、朝のHRどころじゃない勢いで、クラス全体がザワついていた

私はといえば、完全にオロオロ

顔は熱いし、優鞠ちゃん達に囲まれて逃げ場がない

「ちょっと、もう、落ち着いてよ……!」

必死に抵抗するけど、みんなの興味は尽きない様子

そして、そんな騒ぎの中心にいる張本人は——。

「……静かに」

ぽつりと、一言

その瞬間、まるで潮が引くように、クラスの騒ぎが一瞬で静まった

「いや……だってさ、気になるじゃん……」

「海藤、お前本当に付き合ってんの? 冗談じゃなく?」

誰かが恐る恐るそう聞くと、彼はめんどくさそうに息をついて、私を一瞬ちらりと見た

「……嘘ついてどうすんの。」

——その一言に、またしてもクラスがざわめく。

「やば……やばやばやば……!!」

「ほんとだったぁぁぁ!!!」

「いやでも待って!? どんな感じなの!? ふたりってどういう関係なの!?」

「関係って……普通に、付き合ってるだけだよ!」

「普通って何!? ねえ、普通って何!? みんな聞いた!? これが海藤くんの“普通”らしい!!」

「てかさ、付き合ってるなら、それっぽいことしてみてよ!!」

誰かがそう言った瞬間——

「……は?」

海藤くんの目が、ほんの少しだけ鋭くなった

そして、次の瞬間

「ほら。」

すっと、私の頭に手が置かれた

「え……?」

彼の手が、私の髪をくしゃっと撫でる

——それだけで

教室が、一瞬、静まり返った

「ちょっ……!!?」

驚きすぎて、私は飛び跳ねるように身を引いた

「おまっ……!? な、何して……!?」

「“それっぽいこと”しろって言うから」

「そ、そういうことじゃなくて……!!!」

「へえ」

海藤くんは、あくまで涼しい爽やかな顔。

でも、クラスメイトたちは——

「ぎゃああああああ!!!」

「見た!? え、今の見た!?」

「何あの自然な頭ぽんぽん……!!!」

「やばいやばいやばい……!!!」

完全に大パニックだった。

「……やりすぎた?」

「あ、当たり前でしょ!!!」

「まぁ、いいんじゃね?」

——こんな感じで。

私たちの2学期は、やっぱり騒がしくなりそうだった