静かに海を眺めながら、私たちは波打ち際に立っていた。

遠くの水平線が夕陽に染まって、さっきまで輝いていた青い海は、柔らかいオレンジ色に変わっている

少しだけ風が涼しくなって、頬を撫でるたびに、心が静かに落ち着いていく

だけど——

海藤くんの隣にいるっていうだけでも、私の心臓だけはさっきからずっと落ち着かない

「ねえ」

ふいに、海藤くんが小さく口を開いた。

「うん」

「……この夏、めっちゃ楽しかった！」

「うん、私も！」

「でも……たぶん、海に来れたのが、一番楽しいかも。」

「え？」

なんとなく胸が高鳴る

この気持ちは...

私、もしかして...

「いや、正確には……廣瀬と、海に来れたのが、一番楽しかった！」

君の横顔を見た

少しだけ照れくさそうで、それでも真剣な表情

夕陽が君の顔を淡く照らしていて、まるで映画のワンシーンみたいだった

「だからさ……その、俺、廣瀬のこと好きなんだけど」

...え!

頭の中が一瞬、真っ白になる

波の音が静かに響く中、海藤くんの言葉だけがはっきりと耳に残る。

「……急に、ずるいよ」

絞り出すように、そう言った

だって、心臓がうるさい

言葉にならないくらい、嬉しくて

やっと気づいた

自分の気持ちに

私はあなたが...

「……ダメ？」

不安そうに聞いてくる君に、私はそっと微笑んだ。

「ダメじゃないよ！」

夕陽に染まった海を背に、私は小さくうなずいた

「私も……海藤くんのことが...好き、だよ。」

その瞬間、風が吹いた

波の音、潮の香り、少しだけ熱を持った空気が

優しく私たちを包み込んでいた

「ほんと、に？」

「うん！」

気が付いたら、私は泣き笑いしていた

海藤くんはそんな私を優しく抱きしめた

きっとこの夏のこと、一生忘れない

...そう思った