海の香りが、風に乗ってふわりと漂ってくる
そう、今日は海藤くんとお出かけする日
私は波打ち際から少し離れた場所で、スマホを握りしめながら、海藤くんを待っていた
約束の時間まで、あと少し
少し高い空には、まぶしい太陽
波が静かに寄せては返し、遠くでは子どもたちのはしゃぐ声が聞こえる
でも、私の視線はただひとつ——
海藤くんがやってくる道の方ばかりを見ていた
「遅いな……」
そう呟きながら、スマホを開く
でも、まだ海藤くんからの通知はなかった
...本当に来るよね?
そんな不安が、少しだけ胸をよぎる
足元に視線を落とし、砂をつま先でなぞる
波が来るたびに、小さな泡が弾けて消えていくのを眺める
「……っ!」
ふと、顔を上げる
人の波の向こう、見慣れたシルエットが、こっちへ向かってくるのが見えた
白いTシャツにラフなデニム
いつもの歩き方
そして——私を見つけたのかちょっとだけ表情を和らげる
「おーい!」
君の声が、海風に乗って届く
私は、思わず笑ってしまう
「遅かったね」
そう言いながら軽く手を振ると、海藤くんは少し息を切らしながら目の前に立った
「ごめん、道混んでてさ。」
「...ギリギリに家出たとかじゃなくて?」
「……バレた?」
ふっと笑い合う
いつの間にか、緊張も不安もどこかに消えていた
海藤くんとお出かけ
それだけで、今日の海はいつもよりきらきらして見えた
「わぁ……!」
目の前に広がる青い海を見て、思わず声がこぼれた
波が静かに寄せては返し、潮風がそっと髪を揺らす
太陽の光が水面にきらきらと反射していて、まるで宝石みたいだった
「綺麗...」
隣に立つ君が、ぽつりと呟く。
「うん、すごく!」
少し照れくさくて、私は波打ち際へと駆け出した
いつもはそんなことしないのに
なぜか海藤くんが相手なら、いい気がした
波が足元をさらっていく感覚がくすぐったくて、くすっと笑う
そんな私を見て、君もふっと笑った
「冷たくない?」
「ちょっとね。でも気持ちいいよ!」
そう言って水をぱしゃっと跳ねさせると、海藤くんが驚いたような顔をした
「おい、やったな~!」
「え、そんなつもりじゃ……!」
言い訳する間もなく、君はそっと水をすくい——。
「や、やめて!」
「もう遅い。」
ばしゃっ。
思わず逃げようとしたけど、間に合わなかった。
「もう〜!」
「はは、ごめんごめん。」
笑いながら手を差し出す海藤くん
ちょっとだけ拗ねたふりをして、それでも私は、その手を取った
その手はあったかくて、大きくて、まるで海藤くんの人柄が溢れ出ているように見えた
潮風がやさしく吹いて、波の音が静かに響く
気づけば、1時間ほどふたりで水平線を見つめていた
この夏の思い出が、波にさらわれずにずっと残りますように
...そんなことを、ふと思った。
そう、今日は海藤くんとお出かけする日
私は波打ち際から少し離れた場所で、スマホを握りしめながら、海藤くんを待っていた
約束の時間まで、あと少し
少し高い空には、まぶしい太陽
波が静かに寄せては返し、遠くでは子どもたちのはしゃぐ声が聞こえる
でも、私の視線はただひとつ——
海藤くんがやってくる道の方ばかりを見ていた
「遅いな……」
そう呟きながら、スマホを開く
でも、まだ海藤くんからの通知はなかった
...本当に来るよね?
そんな不安が、少しだけ胸をよぎる
足元に視線を落とし、砂をつま先でなぞる
波が来るたびに、小さな泡が弾けて消えていくのを眺める
「……っ!」
ふと、顔を上げる
人の波の向こう、見慣れたシルエットが、こっちへ向かってくるのが見えた
白いTシャツにラフなデニム
いつもの歩き方
そして——私を見つけたのかちょっとだけ表情を和らげる
「おーい!」
君の声が、海風に乗って届く
私は、思わず笑ってしまう
「遅かったね」
そう言いながら軽く手を振ると、海藤くんは少し息を切らしながら目の前に立った
「ごめん、道混んでてさ。」
「...ギリギリに家出たとかじゃなくて?」
「……バレた?」
ふっと笑い合う
いつの間にか、緊張も不安もどこかに消えていた
海藤くんとお出かけ
それだけで、今日の海はいつもよりきらきらして見えた
「わぁ……!」
目の前に広がる青い海を見て、思わず声がこぼれた
波が静かに寄せては返し、潮風がそっと髪を揺らす
太陽の光が水面にきらきらと反射していて、まるで宝石みたいだった
「綺麗...」
隣に立つ君が、ぽつりと呟く。
「うん、すごく!」
少し照れくさくて、私は波打ち際へと駆け出した
いつもはそんなことしないのに
なぜか海藤くんが相手なら、いい気がした
波が足元をさらっていく感覚がくすぐったくて、くすっと笑う
そんな私を見て、君もふっと笑った
「冷たくない?」
「ちょっとね。でも気持ちいいよ!」
そう言って水をぱしゃっと跳ねさせると、海藤くんが驚いたような顔をした
「おい、やったな~!」
「え、そんなつもりじゃ……!」
言い訳する間もなく、君はそっと水をすくい——。
「や、やめて!」
「もう遅い。」
ばしゃっ。
思わず逃げようとしたけど、間に合わなかった。
「もう〜!」
「はは、ごめんごめん。」
笑いながら手を差し出す海藤くん
ちょっとだけ拗ねたふりをして、それでも私は、その手を取った
その手はあったかくて、大きくて、まるで海藤くんの人柄が溢れ出ているように見えた
潮風がやさしく吹いて、波の音が静かに響く
気づけば、1時間ほどふたりで水平線を見つめていた
この夏の思い出が、波にさらわれずにずっと残りますように
...そんなことを、ふと思った。



