次の日の朝――

心和は、まどろんだ意識の中で布団の中にくるまりながら、ぼんやりと目を開けた

ピコン♪

枕元のスマホが通知音を響かせる

(……またグループLINEかな)

まだ眠気が抜けきらないままスマホを手に取ると、そこには「海藤帆向」の名前が表示されていた

「おはよー。22日、空いてる?」

(22日……?)

一瞬、何の日だったか考えたけれど、特に予定はなかったはずだ

心和:「たぶん空いてるけど……なんで?」

そう返すと、すぐに既読がつき、またすぐに返信が来た

帆向:「海行こうぜ」

(……海?)

思いもよらない誘いに、心和は一瞬目を見開いた

心和:「……え?」
帆向:「夏と言えば海だろ!」
帆向:「遊園地行ったなら、次は海って相場が決まってるんだよ」

そんな決まり、初めて聞いたけど……

心和はスマホを持ったまま、少し考えた

昨日の遊園地も楽しかったし、海藤帆向という存在には、もうすっかり巻き込まれっぱなしだ

けれど、不思議と嫌ではない

「……うん、わかった」

そう返すと、またすぐにメッセージが来た

「よし!決まり!」

「じゃあ、待ち合わせは朝10時!駅前のバス停な!」

(……朝10時、バス停)

心和はその時間を脳内で反芻した

「……ん?」

ふと、何かを思い出して飛び起きる

宿題!!

遊園地で浮かれていたせいで、すっかり忘れていた

夏休みの宿題が、まだ半分以上残っている

(さすがに海の日までに終わらせないと……)

心和はベッドから飛び出し、机に向かった

プリント類を広げて、まずはどこから手をつけるか考える

「……とりあえず、数学から」

そう決めると、シャーペンを握りしめた

(22日までに終わらせる……!)

海に行くことを口実に、心和は初めて夏休みの宿題を計画的に進めようと決意したのだった