「どうして?」
困ったような表情を浮かべるクリャウにミューナも困ったような顔をする。
「……あの村にはもう誰もいないから」
「…………どうして?」
「……魔物に襲われたんだ」
自分がやったのだと言えずクリャウは少し誤魔化した。
「そんな……じゃあ生き残ってる人は?」
「何人かはいるかもしれないけど……」
スケルトンも完全ではない。
暴れ始めた時に離れたところにいた人の中には逃げ切ってしまった人もいるだろうとクリャウは思う。
「……あなたは? あなたは村の子じゃないの? というか何でこんな時間にこんなところに……」
「俺は……スケルトンさん?」
急にスケルトンが剣を抜いた。
「どうし……」
「お嬢!」
「スケルトンさん!」
突然森の中から人が飛び出してきた。
フードを被った男はスケルトンを目掛けて剣を振り、スケルトンが吹き飛ばされた。
「……スケルトンだと!?」
木に叩きつけられてスケルトンのフードが外れた。
骨の顔が現れてフードの男もミューナも驚きを隠せない。
「スケルトン……まさか! ケーラン、ダメ!」
「うっ……ぐっ!」
ミューナがフードの男ケーランに声をかける。
スケルトンにトドメを刺そうとしていたケーランはスケルトンギリギリのところで剣を止めた。
スケルトンはその一瞬の隙をついて剣を突き出し、ケーランの肩をかすめた。
「ス、スケルトンさんダメ!」
追撃するスケルトンと防御するケーランの剣がぶつかってスケルトンが力負けする。
今は黒い魔力による強化もしていないのでスケルトンは非常に非力なのである。
「スケルトンが動きを止めた……」
クリャウの命令に従ってスケルトンが振り上げていた剣を下ろす。
対してケーランも剣を構えたまま警戒はしているがスケルトンに攻撃はしない。
「……あなたが操ってるの?」
後ろからかけられたミューナの疑問にクリャウは答えられられなかった。
肯定の返事はその先のリアクションが怖く、否定するにはどう言い訳したらいいのか分からなかった。
ただこのまま何も言わなければそれは肯定と変わりがなくなってしまう。
肯定したらどうなるのか。
二人はクリャウのことをどう思うか。
敵対するだろうか。
戦って殺すか、殺されるかしなければならないだろうか。
クリャウの中でグルグルと考えが巡る。
ただ言い訳は思いつかなくて沈黙の消極的な答えという選択に自然となってしまった。
せっかく上手く助けたのに戦いになってしまう。
逃がしてくれといったら逃がしてくれるだろうかと次の考えが頭に浮かぶ。
「あなたがスケルトンを操ってるのね」
「……うん」
もう否定するには遅すぎた。
クリャウはミューナから顔を背けたまま頷く。
右手にこっそりと魔力を集めておく。
いざとなれば魔力を放って目隠しをし、スケルトンに力を与えるつもりだった。
「お嬢!?」
「えっ!?」
「あなたこそ私たちが探していた王だわ!」
ミューナは急に膝をついてクリャウに向けて頭を下げた。
ケーランもクリャウも予想もしていなかった行動に驚いた。
「ど、どいうこと?」
ケーランもミューナに従うように膝をついてクリャウはただ困惑するしかない。
「王って何のこと?」
「我々魔族を覆う闇を飲み込み、魔族を導く黒き光の標となる死の王が現れる」
「へ……へ?」
「少し前に信託があり、私は貴方様を探していました」
「……何が言いたいのか分からないよ」
ミューナの強い意思を宿した燃えるような瞳が向けられてクリャウはただただ圧倒されていた。
ーーーーー
「えと……つまり君は魔族で……黒い魔力を探していたってこと?」
人の血の匂いは魔物を引きつけてしまう。
クリャウが倒した男たちの荷物の一部を奪い、クリャウたちは場所を移した。
新しく焚き火を用意してクリャウとミューナは焚き火を挟んで向かい合うように座った。
改めてミューナから何をしていたのかという説明を受けた。
ミューナとケーランはクリャウの予想通り魔族であった。
今いる場所から遠いところでひっそりと小さい集落で暮らしている魔族だったのだが、ある時一族の占い師が夢を見たと言ったのである。
“我々魔族を覆う闇を飲み込み、魔族を導く黒き光の標となる死の王が現れる”
占い師はこんな言葉を聞いたと口にした。
人間と獣人の連合軍に敗れてから魔族は虐げられ続けてきた。
そんな魔族が堂々と生きられるように導いてくれる王たる存在が現れると夢での信託を受けたのである。
そしてタビロホ村にその存在がいると告げられた。
本来ならばミューナたち集落の長である人が王たる人を探して迎え入れるべきなのだが集落の長が抜けては不都合が大きい。
たまたまその時に集落に問題もあったので代わりに長の娘であるミューナが探しに出たのだ。
「そうです。黒い魔力を持つ貴方様こそ魔族を導く王なのです」
どんな人が王たる人なのか。
見た目の情報はなかった。
ただ王たる人は黒い魔力を持ち、死を操る力を持っているということをミューナは聞いていた。
クリャウは黒い魔力を持っていて、なおかつスケルトンを操っている。
信託の王たる人であるとミューナはビビッときた。
困ったような表情を浮かべるクリャウにミューナも困ったような顔をする。
「……あの村にはもう誰もいないから」
「…………どうして?」
「……魔物に襲われたんだ」
自分がやったのだと言えずクリャウは少し誤魔化した。
「そんな……じゃあ生き残ってる人は?」
「何人かはいるかもしれないけど……」
スケルトンも完全ではない。
暴れ始めた時に離れたところにいた人の中には逃げ切ってしまった人もいるだろうとクリャウは思う。
「……あなたは? あなたは村の子じゃないの? というか何でこんな時間にこんなところに……」
「俺は……スケルトンさん?」
急にスケルトンが剣を抜いた。
「どうし……」
「お嬢!」
「スケルトンさん!」
突然森の中から人が飛び出してきた。
フードを被った男はスケルトンを目掛けて剣を振り、スケルトンが吹き飛ばされた。
「……スケルトンだと!?」
木に叩きつけられてスケルトンのフードが外れた。
骨の顔が現れてフードの男もミューナも驚きを隠せない。
「スケルトン……まさか! ケーラン、ダメ!」
「うっ……ぐっ!」
ミューナがフードの男ケーランに声をかける。
スケルトンにトドメを刺そうとしていたケーランはスケルトンギリギリのところで剣を止めた。
スケルトンはその一瞬の隙をついて剣を突き出し、ケーランの肩をかすめた。
「ス、スケルトンさんダメ!」
追撃するスケルトンと防御するケーランの剣がぶつかってスケルトンが力負けする。
今は黒い魔力による強化もしていないのでスケルトンは非常に非力なのである。
「スケルトンが動きを止めた……」
クリャウの命令に従ってスケルトンが振り上げていた剣を下ろす。
対してケーランも剣を構えたまま警戒はしているがスケルトンに攻撃はしない。
「……あなたが操ってるの?」
後ろからかけられたミューナの疑問にクリャウは答えられられなかった。
肯定の返事はその先のリアクションが怖く、否定するにはどう言い訳したらいいのか分からなかった。
ただこのまま何も言わなければそれは肯定と変わりがなくなってしまう。
肯定したらどうなるのか。
二人はクリャウのことをどう思うか。
敵対するだろうか。
戦って殺すか、殺されるかしなければならないだろうか。
クリャウの中でグルグルと考えが巡る。
ただ言い訳は思いつかなくて沈黙の消極的な答えという選択に自然となってしまった。
せっかく上手く助けたのに戦いになってしまう。
逃がしてくれといったら逃がしてくれるだろうかと次の考えが頭に浮かぶ。
「あなたがスケルトンを操ってるのね」
「……うん」
もう否定するには遅すぎた。
クリャウはミューナから顔を背けたまま頷く。
右手にこっそりと魔力を集めておく。
いざとなれば魔力を放って目隠しをし、スケルトンに力を与えるつもりだった。
「お嬢!?」
「えっ!?」
「あなたこそ私たちが探していた王だわ!」
ミューナは急に膝をついてクリャウに向けて頭を下げた。
ケーランもクリャウも予想もしていなかった行動に驚いた。
「ど、どいうこと?」
ケーランもミューナに従うように膝をついてクリャウはただ困惑するしかない。
「王って何のこと?」
「我々魔族を覆う闇を飲み込み、魔族を導く黒き光の標となる死の王が現れる」
「へ……へ?」
「少し前に信託があり、私は貴方様を探していました」
「……何が言いたいのか分からないよ」
ミューナの強い意思を宿した燃えるような瞳が向けられてクリャウはただただ圧倒されていた。
ーーーーー
「えと……つまり君は魔族で……黒い魔力を探していたってこと?」
人の血の匂いは魔物を引きつけてしまう。
クリャウが倒した男たちの荷物の一部を奪い、クリャウたちは場所を移した。
新しく焚き火を用意してクリャウとミューナは焚き火を挟んで向かい合うように座った。
改めてミューナから何をしていたのかという説明を受けた。
ミューナとケーランはクリャウの予想通り魔族であった。
今いる場所から遠いところでひっそりと小さい集落で暮らしている魔族だったのだが、ある時一族の占い師が夢を見たと言ったのである。
“我々魔族を覆う闇を飲み込み、魔族を導く黒き光の標となる死の王が現れる”
占い師はこんな言葉を聞いたと口にした。
人間と獣人の連合軍に敗れてから魔族は虐げられ続けてきた。
そんな魔族が堂々と生きられるように導いてくれる王たる存在が現れると夢での信託を受けたのである。
そしてタビロホ村にその存在がいると告げられた。
本来ならばミューナたち集落の長である人が王たる人を探して迎え入れるべきなのだが集落の長が抜けては不都合が大きい。
たまたまその時に集落に問題もあったので代わりに長の娘であるミューナが探しに出たのだ。
「そうです。黒い魔力を持つ貴方様こそ魔族を導く王なのです」
どんな人が王たる人なのか。
見た目の情報はなかった。
ただ王たる人は黒い魔力を持ち、死を操る力を持っているということをミューナは聞いていた。
クリャウは黒い魔力を持っていて、なおかつスケルトンを操っている。
信託の王たる人であるとミューナはビビッときた。


