「そうです。魔物を仕舞ってしまうのです」
イレヲラは二人の様子に微笑みを浮かべた。
「今はクシャアン様を始めとしてスケルトンが三体。単に連れていくだけなら難しくないでしょう。しかしやはりそれだけでも多くの困難は目に見えております」
森の中を連れ回すのなら問題はないだろう。
しかし人里でスケルトンを連れて歩くことが大変なのはすでに承知の上である。
そして今はさらにクシャアンの教えによると魔物を従えられる可能性も出てきた。
大量の魔物を常に連れて歩くことは現実的な方法ではない。
「召喚できるんじゃないの?」
ミューナが当然のことを考えた。
召喚という方法があることはもうすでに教えてもらった。
呼び寄せることが可能ならば呼び寄せてしまえばいい。
「もちろんそれも可能でしょう。ですが収納には収納の利点があるのです」
「利点?」
「たとえばこれから隷属によって従える魔物を増やしていったとしましょう。十、百、千と……大群になるに連れて連れていくことは難しくなります。ではやはり置いていくしかありません」
千もの魔物を引き連れることができるのだろうかとクリャウは思ったけれど、ここは仮定の話である。
百や千となるといちいちどこかへ行くのに魔物を連れてはいけない。
「どこかに待機させておくとしましょう。そして離れたところで力が必要になって魔物を召喚する。遠いほど、そして多いほどより多くの魔力を必要とします。呼び出すだけでも一苦労かもしれません」
当然ながら召喚するのには魔力が必要となる。
遠くにいるほど魔物を呼ぶのに消費する魔力は多くなる。
そして多くの魔物を呼ぶとそれでも消費する魔力は多くなるのだ。
「ただ多くの魔物を呼び出す必要もない時はございます。精鋭の魔物さえいれば事足りるということもありましょう。そのような時に遠くから呼び出すとなればそれだけ力の消耗は大きくなってしまう」
「分かった! そこで収納なんだね!」
「その通り。どれほどの数を収納できるのかは分かりませんが自分の従える魔物の中でも強いものを収納しておけば遠くから呼び出すよりも魔力を使わずに済むのです」
ついでに遠くから呼ぶよりも収納から呼び出す方が早く出せるという利点もある。
「これが死霊化、隷属、強化、召喚、収納。クシャアン様が自ら気づいたものをまとめたものになります」
「ふーん……こう言っちゃなんだけど……」
「なに?」
「クリャウなら全部できそうだね」
ミューナはニヤッと笑った。
強化と召喚はできている。
死霊化と隷属も意図してはいないもののできている。
収納だけはまだ少しイメージが固まっていないけれども話を聞いた感じではできそう。
つまりクリャウなら全部できるのだとミューナは思った。
「うん……ミューナがそういうならできそうな気がする」
クリャウも根拠はないけど、ミューナができると言ってくれるならできる気がしてくる。
「えと、それで僕は何をやったらいいのかな?」
ひとまずクリャウがやれることは分かった。
五つのうちどれを練習すべきなのかクリャウは黒い板に書かれた文字を眺めながら考える。
「やはり強化でしょうな」
当然ながら今後の計画についてもイレヲラは考えていた。
召喚も収納も配下の魔物がいなければいけない。
今はまだスケルトン三体しかいないクリャウが必死になって練習すべき物ではない。
となると死霊化、隷属、強化である。
ただ死霊化と隷属は半ばセットであり、魔物を倒す必要がある。
そうなってくるとやはり強化一択となる。
今ある戦力を強くして戦うことがクリャウにとっても最善で、魔物を倒せれば死霊化と隷属を試すべきだとイレヲラはクシャアンと決めたのであった。
「……お父さんのこと強化して戦わせてもいいのかな?」
ただのスケルトンだと思っていた時にはなんとも思わなかったけれど、父親だと知ってから命令するのもなんだか気まずく感じられてしまう。
クリャウはクシャアンのことを見て少し気まずそうな顔をした。
「クシャアン様はクリャウ様のお力になりたいそうですよ。スケルトンの身でありながら自分にできることがあるならなんでも言ってほしいと言っておりました」
「私も行け、お父さん! ってやりたいけどね」
「ははっ! そんなことしたらダメだよ」
「お母さんの命令なら大人しく聞くんだけどね」
ミューナが悪い顔をして笑う。
ひとまずクリャウの黒い魔力の修行の方向性も固まった。
「明日からまた頑張りましょう」
「うん! 頑張るよ!」
ーーーーー
朝起きてから日が高く登ってお昼を食べるまでは体を動かす。
走って体力をつけ、剣を振って技術を磨いて体を鍛える。
他の子供たちも一緒に走ったり剣を振ったり手合わせしたりして交流の時間ともなっていた。
そしてお昼はミューナの家でいただく。
ミューナの母親であるトゥーラは料理の腕が良くて食が細めだったクリャウもバクバクと食べてしまうほどだった。
男の子が欲しかったのよ、なんて言いながらトゥーラもよく食べるクリャウのことを嬉しそうな顔をして見ていたりもする。
イレヲラは二人の様子に微笑みを浮かべた。
「今はクシャアン様を始めとしてスケルトンが三体。単に連れていくだけなら難しくないでしょう。しかしやはりそれだけでも多くの困難は目に見えております」
森の中を連れ回すのなら問題はないだろう。
しかし人里でスケルトンを連れて歩くことが大変なのはすでに承知の上である。
そして今はさらにクシャアンの教えによると魔物を従えられる可能性も出てきた。
大量の魔物を常に連れて歩くことは現実的な方法ではない。
「召喚できるんじゃないの?」
ミューナが当然のことを考えた。
召喚という方法があることはもうすでに教えてもらった。
呼び寄せることが可能ならば呼び寄せてしまえばいい。
「もちろんそれも可能でしょう。ですが収納には収納の利点があるのです」
「利点?」
「たとえばこれから隷属によって従える魔物を増やしていったとしましょう。十、百、千と……大群になるに連れて連れていくことは難しくなります。ではやはり置いていくしかありません」
千もの魔物を引き連れることができるのだろうかとクリャウは思ったけれど、ここは仮定の話である。
百や千となるといちいちどこかへ行くのに魔物を連れてはいけない。
「どこかに待機させておくとしましょう。そして離れたところで力が必要になって魔物を召喚する。遠いほど、そして多いほどより多くの魔力を必要とします。呼び出すだけでも一苦労かもしれません」
当然ながら召喚するのには魔力が必要となる。
遠くにいるほど魔物を呼ぶのに消費する魔力は多くなる。
そして多くの魔物を呼ぶとそれでも消費する魔力は多くなるのだ。
「ただ多くの魔物を呼び出す必要もない時はございます。精鋭の魔物さえいれば事足りるということもありましょう。そのような時に遠くから呼び出すとなればそれだけ力の消耗は大きくなってしまう」
「分かった! そこで収納なんだね!」
「その通り。どれほどの数を収納できるのかは分かりませんが自分の従える魔物の中でも強いものを収納しておけば遠くから呼び出すよりも魔力を使わずに済むのです」
ついでに遠くから呼ぶよりも収納から呼び出す方が早く出せるという利点もある。
「これが死霊化、隷属、強化、召喚、収納。クシャアン様が自ら気づいたものをまとめたものになります」
「ふーん……こう言っちゃなんだけど……」
「なに?」
「クリャウなら全部できそうだね」
ミューナはニヤッと笑った。
強化と召喚はできている。
死霊化と隷属も意図してはいないもののできている。
収納だけはまだ少しイメージが固まっていないけれども話を聞いた感じではできそう。
つまりクリャウなら全部できるのだとミューナは思った。
「うん……ミューナがそういうならできそうな気がする」
クリャウも根拠はないけど、ミューナができると言ってくれるならできる気がしてくる。
「えと、それで僕は何をやったらいいのかな?」
ひとまずクリャウがやれることは分かった。
五つのうちどれを練習すべきなのかクリャウは黒い板に書かれた文字を眺めながら考える。
「やはり強化でしょうな」
当然ながら今後の計画についてもイレヲラは考えていた。
召喚も収納も配下の魔物がいなければいけない。
今はまだスケルトン三体しかいないクリャウが必死になって練習すべき物ではない。
となると死霊化、隷属、強化である。
ただ死霊化と隷属は半ばセットであり、魔物を倒す必要がある。
そうなってくるとやはり強化一択となる。
今ある戦力を強くして戦うことがクリャウにとっても最善で、魔物を倒せれば死霊化と隷属を試すべきだとイレヲラはクシャアンと決めたのであった。
「……お父さんのこと強化して戦わせてもいいのかな?」
ただのスケルトンだと思っていた時にはなんとも思わなかったけれど、父親だと知ってから命令するのもなんだか気まずく感じられてしまう。
クリャウはクシャアンのことを見て少し気まずそうな顔をした。
「クシャアン様はクリャウ様のお力になりたいそうですよ。スケルトンの身でありながら自分にできることがあるならなんでも言ってほしいと言っておりました」
「私も行け、お父さん! ってやりたいけどね」
「ははっ! そんなことしたらダメだよ」
「お母さんの命令なら大人しく聞くんだけどね」
ミューナが悪い顔をして笑う。
ひとまずクリャウの黒い魔力の修行の方向性も固まった。
「明日からまた頑張りましょう」
「うん! 頑張るよ!」
ーーーーー
朝起きてから日が高く登ってお昼を食べるまでは体を動かす。
走って体力をつけ、剣を振って技術を磨いて体を鍛える。
他の子供たちも一緒に走ったり剣を振ったり手合わせしたりして交流の時間ともなっていた。
そしてお昼はミューナの家でいただく。
ミューナの母親であるトゥーラは料理の腕が良くて食が細めだったクリャウもバクバクと食べてしまうほどだった。
男の子が欲しかったのよ、なんて言いながらトゥーラもよく食べるクリャウのことを嬉しそうな顔をして見ていたりもする。


