「トゥーラさん、いいんですよ」

「でも……」

「彼らは人でありませんから。それにクリャウ様以外の命令は聞きません」

「えっ?」

「みんな、フードと仮面取って」

 クリャウが命じるとスケルトンたちはフードと仮面を外す。

「あら!」

 トゥーラは驚いた顔をしたけれど恐怖などの感情はないように見えた。

「んー、でも座れるなら座って。スケルトンでも」

「……じゃあみんな椅子に座って」

 スケルトンであると知ってもなおトゥーラは椅子に座ることを勧めた。
 今度はクリャウの方が驚かされた。

 とんでもなく心が広い人だなと思いながらスケルトンたちに命令すると大人しく空いている席に座る。

「これが死の王の力なのね」

 トゥーラは興味深そうにスケルトンを見つめる。
 どこでもなく虚空を見つめるスケルトンは大人しく座っていると置物のようである。

「まあ話は食べながらにしましょう」

「あっ、手伝いますよ」

「ありがとう、カティナ。ミューナ、お父さんを起こしてきて」

「……分かった」

 少し不満そうな顔をしてミューナがいまだに倒れている族長を起こしにいく間トゥーラとカティナで料理を持ってくる。

「わぁ……」

 まともな料理なんていつぶりだろうとクリャウは思う。
 旅の最中は正体がバレることを恐れてレストランなんかには寄らず、ミューナたちと出会う前はその日の食べ物さえ怪しい生活をしていた。

 温かい、人が作った料理にクリャウは唾を飲み込んだ。

「好きに食べて。あなたのために作ったのだから」

「……は、はい。いただきます」

 ミューナは激しく族長のことをゆすっているがなかなか起きない。

 その間に料理が全部並べられてトゥーラはクリャウに料理を取り分けてくれた。
 ミューナもすぐにくるだろうと先に食べ始めることにした。

「どうかしら?」

「……美味しいです。すごく、美味しいです!」

 ちょっと濃いめの味付けで嘘偽りなく美味しいと感じた。
 クリャウは食べる手が止まらなくてかき込むように料理を口に運ぶ。

「ほ、ほんとに……美味しいです……」

「あらあら……」

 気づいたら涙が出てきていた。
 母親の料理とはだいぶ違う。

 でも誰かのためを思って作る出来立ての温かい料理はとても美味しくて、クリャウの胸の中にある感情を刺激した。

「無くなったら作ってあげるからゆっくり食べなさい」

「う……はい……」

 泣きながらも食べた。
 冷ましてしまうには惜しいから温かいうちに食べたかった。

「……こんなことなら少しは何か作ってあげればよかったですね」

「そうだな」

 旅の途中は時間がないからと簡単なものばかり食べてきた。
 クリャウもそれで文句を言わなかったし集落まで移動することが最優先だった。

 しかし食べるものぐらいもう少しなんとかできることはあった。
 泣きながら食べるクリャウを見てカティナとケーランは少し気まずい顔をする。

「トゥーラの料理は美味いからな。泣いてしまっても仕方ない」

 起きた族長が席につく。
 場の空気を変えようと少し冗談混じりの言葉を口にする。

 最初こそ威嚇するような態度を取ったけれど泣きながら料理を食べる様子を見てそんな気もどこかに失せてしまった。

「みんなも食べなさい。泣くほど美味しい料理だ」

「ええ、本当に美味しいですね」