「お嬢……体を押さえてくれ。早く抜いてくれ!」
「……わ、分かった」
「一思いに……その方が痛くないんだ」
クリャウは頷いて血に濡れた矢を掴む。
「い、いくよ」
「ぐぅっ!」
矢を引っ張るとすごく奇妙な感覚がクリャウの手に返ってくる。
矢が肉に引っかかる抵抗感はあまり経験したことのないものだった。
「くぅ……はぁ……はぁ」
顔を青くして苦しそうに息をするスタットを地面に寝かせる。
「カバンの中にポーションが……」
「カティナ、くるぞ!」
カティナがスタットのことをチラリと振り向いた隙を狙うように暗闇の中から二人の男が飛び出してきた。
「はっ!」
「せめて名乗るぐらいしたらどうだ!」
カティナとイヴェールでそれぞれ一人ずつ相手にする。
「お嬢様、クリャウ様!」
しかし敵はそれだけでなかった。
カティナとイヴェールが戦う反対側からも一人飛び出してきていた。
相手が出てくるのが遅いと思っていたが回り込んでいたのである。
「くっ!」
相手の方に向かおうとしたケーランに矢が飛んでくる。
背中を向ければ射られてしまう。
「二人ともお逃げください! くそっ!」
さらに矢が飛んできてケーランは剣で叩き落とす。
いやらしいのは避けるとクリャウたちの方に飛んでいくような角度で矢を飛ばしてきていることである。
「スケルトンさん!」
怪我人のスタットもいるしどこに逃げるというのだ。
変に逃げれば焚き火の明かりも届かなくなって矢にも狙われるだろう。
どの道逃げるなんてことはできない。
クリャウが指示を飛ばすとスケルトンが動き出す。
焚き火の横で膝を抱えるようにして丸く小さくなっていたスケルトンが立ち上がって剣を抜く。
「なんだと! スケルトン!?」
クリャウの黒い魔力を受けたスケルトンは襲いかかってきた男の剣を防いだ。
急に動いたものだから被っていたフードが取れて顔があらわになってしまった。
骨の顔が見えて襲いかかってきた男は驚いていた。
「あ、あなたは……」
襲いかかってきた男の顔にクリャウは見覚えがあった。
「やはりお前か!」
その男はブラウであった。
村の中でも一、二を争うほどに剣の腕が立ち、とりわけクリャウを嫌っていた人であった。
「スケルトン……村を滅ぼしたのはお前だな!」
ブラウは無理矢理スケルトンを押し退けるとクリャウに切り掛かる。
「ダメ!」
「させない!」
「邪魔をするな!」
振り下ろされたブラウの剣をケーランが受け止めた。
「うっ!」
「ケーラン!」
そのまま反撃しようとしたケーランの後ろから矢が飛んでくる。
ケーランは体をねじって矢をかわしたけれど腕をかすめてしまった。
「ス、スケルトンさん、森の方に行って!」
ケーランを助けるべき。
だけどスケルトンに連携なんてものは皆無である。
ケーランとともにブラウと戦うのはむしろ邪魔になるかもしれない。
そこでクリャウは咄嗟にスケルトンを森の方に向かわせた。
森の暗闇に紛れて誰かが矢を撃っている。
矢のペースからしておそらく一人。
焚き火の光も届かない暗闇の中では焚き火を背にしたクリャウたちの姿が一方的に見えて不利になる。
しかしスケルトンならば暗闇も何も関係ない。
クリャウは黒い魔力をさらにスケルトンに送り込み、スケルトンは森に向かって走り出す。
森の暗闇の中から矢が飛んできてスケルトンは剣で切って落とす。
「なぜ村を滅ぼした!」
「どうしてこの子がやったと?」
確かにスケルトンはクリャウの命令で動いている。
しかしその事実は簡単には受け入れられるものではなく、クリャウがスケルトンを操っているなど普通の人は考えない。
なのにブラウは最初からクリャウを村を滅ぼした犯人である知っているかのように怒りを向けている。
そのことがケーランには引っかかった。
「父親と同じだからさ!」
「なんだと?」
「不吉な黒い魔力の持ち主、父親と同じだ! やはり父親と同じく殺しておくべきだった!」
「そ、それってどういう……」
「魔族と手を組んでいたのか。いつから計画を練っていた!」
「そんなことよりも父さんを殺したって……」
「ふっ、不吉な力を持っているから死んでもらったのさ」
「どういう……なんで……」
父親は魔物の討伐に出かけている時に不慮の事故で魔物にやられて死んだとクリャウは聞いていた。
父親が殺されたということ大きな衝撃を受けていまだに抜いた矢を持ったままの手が震える。
「父親の復讐か? だからって村のみんなを手にかけることはないだろう!」
いまいち会話が成り立っていないとミューナは思った。
だけどどうやらブラウがクリャウの父親を殺し、そのことに関係してクリャウが村を滅ぼしたのだと考えているようだと感じた。
「ケーラン、殺さずに制圧して!」
「努力致します!」
クリャウの父親の不吉な力という話も出てきた。
もしかしたらクリャウの力についても何か分かるかもしれない。
スケルトンが森に向かったので矢が飛んでこなくなりケーランはブラウと戦うことに集中できるようになった。
「ぐぅ!?」
腕の傷は浅く戦いに影響はない。
しっかりと集中して戦い始めるとケーランはブラウよりも強かった。
「……わ、分かった」
「一思いに……その方が痛くないんだ」
クリャウは頷いて血に濡れた矢を掴む。
「い、いくよ」
「ぐぅっ!」
矢を引っ張るとすごく奇妙な感覚がクリャウの手に返ってくる。
矢が肉に引っかかる抵抗感はあまり経験したことのないものだった。
「くぅ……はぁ……はぁ」
顔を青くして苦しそうに息をするスタットを地面に寝かせる。
「カバンの中にポーションが……」
「カティナ、くるぞ!」
カティナがスタットのことをチラリと振り向いた隙を狙うように暗闇の中から二人の男が飛び出してきた。
「はっ!」
「せめて名乗るぐらいしたらどうだ!」
カティナとイヴェールでそれぞれ一人ずつ相手にする。
「お嬢様、クリャウ様!」
しかし敵はそれだけでなかった。
カティナとイヴェールが戦う反対側からも一人飛び出してきていた。
相手が出てくるのが遅いと思っていたが回り込んでいたのである。
「くっ!」
相手の方に向かおうとしたケーランに矢が飛んでくる。
背中を向ければ射られてしまう。
「二人ともお逃げください! くそっ!」
さらに矢が飛んできてケーランは剣で叩き落とす。
いやらしいのは避けるとクリャウたちの方に飛んでいくような角度で矢を飛ばしてきていることである。
「スケルトンさん!」
怪我人のスタットもいるしどこに逃げるというのだ。
変に逃げれば焚き火の明かりも届かなくなって矢にも狙われるだろう。
どの道逃げるなんてことはできない。
クリャウが指示を飛ばすとスケルトンが動き出す。
焚き火の横で膝を抱えるようにして丸く小さくなっていたスケルトンが立ち上がって剣を抜く。
「なんだと! スケルトン!?」
クリャウの黒い魔力を受けたスケルトンは襲いかかってきた男の剣を防いだ。
急に動いたものだから被っていたフードが取れて顔があらわになってしまった。
骨の顔が見えて襲いかかってきた男は驚いていた。
「あ、あなたは……」
襲いかかってきた男の顔にクリャウは見覚えがあった。
「やはりお前か!」
その男はブラウであった。
村の中でも一、二を争うほどに剣の腕が立ち、とりわけクリャウを嫌っていた人であった。
「スケルトン……村を滅ぼしたのはお前だな!」
ブラウは無理矢理スケルトンを押し退けるとクリャウに切り掛かる。
「ダメ!」
「させない!」
「邪魔をするな!」
振り下ろされたブラウの剣をケーランが受け止めた。
「うっ!」
「ケーラン!」
そのまま反撃しようとしたケーランの後ろから矢が飛んでくる。
ケーランは体をねじって矢をかわしたけれど腕をかすめてしまった。
「ス、スケルトンさん、森の方に行って!」
ケーランを助けるべき。
だけどスケルトンに連携なんてものは皆無である。
ケーランとともにブラウと戦うのはむしろ邪魔になるかもしれない。
そこでクリャウは咄嗟にスケルトンを森の方に向かわせた。
森の暗闇に紛れて誰かが矢を撃っている。
矢のペースからしておそらく一人。
焚き火の光も届かない暗闇の中では焚き火を背にしたクリャウたちの姿が一方的に見えて不利になる。
しかしスケルトンならば暗闇も何も関係ない。
クリャウは黒い魔力をさらにスケルトンに送り込み、スケルトンは森に向かって走り出す。
森の暗闇の中から矢が飛んできてスケルトンは剣で切って落とす。
「なぜ村を滅ぼした!」
「どうしてこの子がやったと?」
確かにスケルトンはクリャウの命令で動いている。
しかしその事実は簡単には受け入れられるものではなく、クリャウがスケルトンを操っているなど普通の人は考えない。
なのにブラウは最初からクリャウを村を滅ぼした犯人である知っているかのように怒りを向けている。
そのことがケーランには引っかかった。
「父親と同じだからさ!」
「なんだと?」
「不吉な黒い魔力の持ち主、父親と同じだ! やはり父親と同じく殺しておくべきだった!」
「そ、それってどういう……」
「魔族と手を組んでいたのか。いつから計画を練っていた!」
「そんなことよりも父さんを殺したって……」
「ふっ、不吉な力を持っているから死んでもらったのさ」
「どういう……なんで……」
父親は魔物の討伐に出かけている時に不慮の事故で魔物にやられて死んだとクリャウは聞いていた。
父親が殺されたということ大きな衝撃を受けていまだに抜いた矢を持ったままの手が震える。
「父親の復讐か? だからって村のみんなを手にかけることはないだろう!」
いまいち会話が成り立っていないとミューナは思った。
だけどどうやらブラウがクリャウの父親を殺し、そのことに関係してクリャウが村を滅ぼしたのだと考えているようだと感じた。
「ケーラン、殺さずに制圧して!」
「努力致します!」
クリャウの父親の不吉な力という話も出てきた。
もしかしたらクリャウの力についても何か分かるかもしれない。
スケルトンが森に向かったので矢が飛んでこなくなりケーランはブラウと戦うことに集中できるようになった。
「ぐぅ!?」
腕の傷は浅く戦いに影響はない。
しっかりと集中して戦い始めるとケーランはブラウよりも強かった。


