「みんな、スダッティランギルドは解散だ。俺は……家に帰って頭を下げるよ。家で働かせてくれてってな。そしてデムソもポムも……スダーヌも受け入れてくれってな」

 ベロンの顔は明るくなっていた。
 訪れた限界、見通せない未来に頭を悩ませていたけれど、どうするのかひとまず道が定まったのだ。

 いまだにベロンの双肩にはみんなの責任がのしかかっているが、今はただみんなをどうにかしなければならないという感情ではなく、みんなでどうにかしていこうと思えた。

「……お前たちはどうするつもりなんだ?」

 スダッティランギルドは解散することを決めてしまったがイースラたちはまだ子供である。
 引き取った以上最後まで責任は取るつもりがベロンにはあった。

「ダンジョンで見たと思いますが、俺たちはオーラが使えます」

「そういえば……! どうなってるんだ? オーラなんて……しかも三人ともって」

 思い出したようにデムソが驚く。
 腕を失った衝撃やスダッティランギルドの解散という話で触れられてこなかったけれど、イースラたちがオーラを扱えたというのは大きな話である。

 しかもイースラ一人でもなくクラインやサシャを含めた三人ともオーラを使えるのだから実際一番大きな話題だったのかもしれない。
 イースラたちがオーラユーザーだったからダンジョンでは助かった。

「隠していてごめんなさい。でも騒ぎになるのも怖かったので」

「ベロンは知っていたのか?」

「イースラは、な。クラインとサシャがオーラを使えたなんて知らなかった。バルデダル、お前は?」

「私も知りませんでした。よほどのことがない限り勝手にオーラも出てきませんから見ているだけでなかなか気づけません」

 ベロンとバルデダルはイースラがオーラユーザーであることは知っていた。
 けれどもクラインとサシャまでオーラを使えることは知らなかった。

「……俺たちはとんでもない子を引き取ったのかもしれないな」

 本当なら追及すべきことなのかもしれない。
 しかし大きくため息をついたベロンは笑った。

 どうでもいいと思ったのだ。
 大切なのは今生きていること。

 そしてこれから。
 イースラたちはダンジョンにおける命の恩人であり、これからの方針を導いてくれた恩人でもある。

 気にならないといえば嘘になる。
 しかしもしかしたら神が遣わした何かの道標だったのかもしれないとベロンは考えた。

「俺は何も聞かない。イースラ、お前は初めて会った時から何か考えを持っているようだった。これからのことも考えてるんだろう。なんであれ、応援するよ」

「ベロンさん……」

「君たちがどう成長するか楽しみだ。ありがとう、イースラ」

 回帰前はクラインもサシャも死に、絶望の中でスダッティランギルドまで無くなった。
 今回ベロンは回帰前と異なった選択をした。

 このことがどんな結果を生むのかイースラには分からない。
 けれどもスダッティランギルドとして共に歩んできた仲間たちがベロンのそばにはいる。

 どんなことがあっても乗り越えられるだろう。

「こちらこそあの孤児院から連れ出してくれたことは感謝してます」

 スダッティランギルドがなかったら孤児院から飛び出して活動することは難しかったかもしれない。
 そのことは回帰前も今も感謝している。

「でももうちょっとだけお世話になりますよ」

 イースラはニヤッと笑った。
 計画はまだ続いている。