「まあ細かい説明はおいおいしていくとしよう。今は左上にあるステータスってところを触るって意識しながら触ってみ?」

「左上……わっ!」

 サシャが左上の項目を触ってみるともう一つ画面が現れた。

「なんか、出たぞ?」

「それがステータス画面だ」

「ス、ステータスってなに?」

 ステータス画面は左側に何か文字と数字が並んでいる。
 そして右側には四角い枠だけがいくつもあった。

「要するにお前らの強さだ。スキルとかってものはあるけど今は……あれ?」

「どうかしたの?」

 イースラの目が驚きに見開かれた。

「……最初で最後の一人?」

 イースラも自分のステータス画面を開いていた。
 画面の右側にはスキルスロットというスキルが入る場所がある。

 特別な才能がない限り最初はスキルスロットは空である。
 イースラも回帰前はスキルスロットが空の状態で始まっていたことは記憶に残っている。
 
 なのにイースラのスキルスロットには一つスキルがあった。
 回帰前にもみたことがないスキルであり、“最初で最後の一人”というものだった。

「おーい、イースラ?」

「悪いな、少し待ってくれ」

 イースラはスキルの説明を開いた。

『最初で最後の一人
 あなたは残された最後の一人となりました!
 その業績を称えて魂にあなたという存在を刻み込みましょう!
 何があってもあなたは最後まで生き残った一人なのです!
 最後の一人になるのは最初の一人だけです!
 あなたの魂に刻まれた力は決して失われたわけではありません。
 あなたの魂に刻まれた活躍をあなたは取り戻すことができます。
 魂のショップを利用することができます』

「訳が分からない……」

 スキルの説明を見たけれど意味が分からないとイースラは顔をしかめた。
 通常のスキルとは少し違った雰囲気の説明のスキルでどんな効果があるのかいまいち理解できない。

「魂のショップ……おっと!」

 ふとつぶやいた言葉に反応して画面が開いた。

「ショップ……? ただなんか……」

 開いた画面には物の画像と名前、数字が並んでいる。
 イースラでもあまり知らない画面でより謎が深まる。

「これは一体……」

「イースラ!」

「うわっ!?」

 スキルといい、見慣れない画面といいなんなのだと悩んでいると画面の奥からサシャの顔が現れてイースラは驚いた。

「いつまで一人でブツブツ言ってんの?」

 訳が分かっていないのはサシャとクラインも同じだった。
 それなのにイースラが一人で何かに夢中になってるものだからサシャは怒ったような顔をしていた。

「ああ、悪かったよ」

 謎のスキルについては後で一人の時にでも見ようと思った。

「んで、これが俺の強さだって?」

 とりあえず説明の続きに戻ることにした。

「そうだ。力、素早さ、体力、器用さ、魔力、それに幸運。これが個人個人に与えられた能力値で数値が高いほど強いんだ」

 体を鍛えたり経験を積むとこれらの能力値が上がる。
 今の段階では何の経験もない子供なので能力値は低いはずなのだけど、自分の能力値を見てイースラは割と高めだなと思った。

 ひとまずそこも置いておく。

「今はまだ何も知らない弱いガキだけど……ここから強くなっていこう」

「……強く、なれんのか?」

「なれるさ。やり方を間違わなきゃな」

 イースラの頭の中には回帰前の記憶がある。
 最高の方法でなくともまだまだ他の人が知らないような強くなる方法を知っている。

「あとは……まずステータス画面を消す。消えろって思えば消えるから」

「あ、本当だ」

「それでメニュー画面の真ん中の……右側にある動画配信ってのがあるんだけどそれを押してみて」

「真ん中の右……これかな? うわっ、なにこれ!?」

 サシャがメニュー画面を触るとまた新しく画面が開いて表示された。
 今度は四角い枠がたくさんあってその中で人が動いていたりする。

 ここまでで最も訳がわからないものだった。

「さっき説明しただろ? これが配信ってやつだよ。画面共有」

 イースラは適当な配信を選んで開き、他の人にも画面を見えるようにした。

『ということで今回はデラピウス渓谷にあるゲートに挑戦したいと思います』

 画面から声が聞こえてくる。
 武装した冒険者が画面に向かって話しかけてきていてサシャもクラインも不思議そうにその様子を見ている。

『挑戦するのは僕も含めてこの五人です。よかったらパトロンお願いしますね』

 映し出された景色が動いて他の冒険者の姿が映る。

「これが……配信」

「そうだ。今多くの人が配信を見るか、あるいは自分で配信して時間を過ごしてる。そしてこの配信が俺たちを強くするんだ。ついでに言えば俺たちをここ連れてきたのも配信を手伝わせるためだ」

「不思議だね……離れたところのものをこんなふうに見られるなんて」

「不思議だな。結局この魔法も何なのか分からないし、この魔法を運んできた商人の正体も不明だ。だがあるもんは使っていかなきゃいけない」

 この世界は配信されるようになった。
 配信する者と配信を見る者という奇妙な関係が出来上がった。

「細かいことは面倒だからその都度説明する」

 ギルドの人たちは配信について何も説明してくれなかったことを覚えている。
 説明してくれなかったというよりギルドの人たちもあまり配信について知らなかったのだ。

 だがイースラは回帰前の経験から色々知っている。
 それを活かして今度こそ世界を救ってみせる。

「とりあえず買い物に行こう。このままじゃ次の飯も作れない」