なんとまあ、呆気ない。
すべての約束とすべての時間を捨てる覚悟を、彼はたった一人で決めたのか。

私と過ごした時間を、たった一人で。

私の人生において真人の存在は大きかった。
真剣な恋愛を真摯に続けて来たつもりだ。遊んだことはないけれど、こんなに人を好きになることがあるんだと幸福の飽和状態を満喫してもいた。

それが独りよがりな妄想だったことを突きつけられて、正気でいられるアラサーなんていないだろう。
残念ながら、人生の主柱を知らず知らずのうちに彼氏で立ててしまっていた私は崩壊に耐えることが出来なかった。

………ここで終われば、まだ救われたのかもしれない。

まだ続く惨劇をこれ以上同日中に考えるかを俯瞰的に見る。

暫しの逡巡を終えて、精神衛生上で害しかないと帰着した私は冷めきったマグカップに口をつけ一気に甘さを飲み干した。