2日目ともなると、流れに揺蕩いつづけることに躊躇いを覚え一つずつ問題の整理に取り組むことにした。

それにしたって苦味の強い曲者たちを嚥下するのに手ぶらなのはあまりに無謀すぎると思い立ち、インスタントのカフェオレをホットミルクで溶かした即席の中和剤を用意してダイニングテーブルにコトリと置いた。

「……………はぁ」

空気よりも重い溜め息を机に落として、伏せた瞼を渋々持ち上げる。

まずは、真人(まなと)のことから、か。

心で呟くと同時に彼の笑顔を思い出す辺り、まだまだ失恋は新鮮だ。心因性の痛みも、相変わらずみたい。

不快に胸を突き刺す刺激を和らげたくて胸に手を置いてみたけれど、何度も彼に触れた手が心臓に近くなったことで想い出が次々と蘇ってきた。

結婚を前提に付き合い始めたわけではなかった。
それでも順調に進んでいく交際に疑問も不安も覚えたことがなくて、突然別れを切り出されたときは青天の霹靂にも程があった。

当然理由を求めたけれど、何の変哲もない答えを真剣に返されたときは絶望した。


“私達の関係って、そんな簡単なことで終わるもの?”


そんな正直な感想を彼にぶつけたら、もう修復を望むことは出来ないのだろう。
何度か体験してきた別れの経験から、終らせ方は十分に分かっていた。

目を見れば、彼のことはなんだって分かった。
だからこそ、今彼が本気で別れを望んでいることが真っ直ぐに伝わってきて、重ねた時間の重さに余計呼吸が引き攣った。

細い息からようやく絞り出たか細い別れの言葉を彼が聞き逃すことはなく、よく或る感謝を義務的に唱えて私の人生から去っていった。