フライパンひとつで完成するペペロンチーノと、冷凍しておいたカット野菜をコンソメで煮立たせたスープを用意して小さなダイニングテーブルに並べた。

いつもは忘れがちだけれど、今日はなんとなく思い出して手を合わる。

「いただきます」

たったこれだけのことでも、意識の外側にある時の流れを捕まえて身を持って体感できる。

たったそれだけで、“今”をきちんと生きていると満たされるのに、忙殺される日々の中で気づくのは至難の業だ。
この休暇において最初の意義を見いだせた昼食はいつもより美味しく感じて、至福の息を吐いてフォークを置いた。

ベランダの手摺にスズメが止まる。

私の視線も、そこで止まる。

移ろう景色に足を止めてただ見つめる時間に身を任せて、徐々に暮れゆく空を眺めて1日が終わった。