昼下がりの授業中、俺の頭の中は涼太でいっぱいだった。授業内容なんてまるで頭に入ってこなくて、ただぼんやりと涼太の後ろ姿を眺めている。
昔はスラッとしてるとは思ってたけど、今はその背中が少し頼もしく見えた。
今、どんな顔して授業受けてるんだろう。ちょっと、見てみたいような…
「佐々木!」
いきなり先生に呼ばれて、思考が一気に現実へ引き戻される。
「あ、は、はい」
「この問題、解け」
いやいや、今それどころじゃないんですけど。脳内大パニックなんですけど。
「その問題なら、佐伯くんの方が分かると思います」
「お、俺!?」
ただの当て付けだって分かっている。でも、頭の中のほとんどを占めてる奴に、これくらいの仕返しはしてもいいだろう。