カフェの店内に足を踏み入れると、周囲は女性客ばかりで思わず足が止まった。
賑やかな会話と甘い香りに包まれた空間に、場違いな気がして息を詰める。
でも、涼太と一緒だから不思議と怖くない。
…怖くはないけど、落ち着きはしない。
涼太はすでに席を取っていたが、俺はなかなかこの空気に馴染めずにソワソワした気分で席につく。けれど、メニュー表を見たらそんな気持ちもどこかへ吹っ飛んでしまった。
「俺はこのふわふわフルーツパンケーキが食いたい。涼太は?」
「じゃあ、蓮と同じのにする。」
しばらく軽く雑談していると、目当てのパンケーキが俺たちのテーブルへと届いた。
一口食べると、口の中に広がる甘さとふわふわの食感に思わず『うめえ!』と叫んでしまいそうになる。
「これ、うますぎるだろ。」
しばらくパンケーキに夢中になっていて気が付かなかったが、なんだか涼太の視線を浴びているような気がした。
「俺の顔見過ぎだろ。なんかついてるなら言え。」
涼太はぼーっとしていたのか、肩をピクっとさせた。
「蓮かわいいなーって思って見てただけだよ。」
――俺が可愛い??
たまにこいつは突然を冗談を言う。きっとこれも冗談に違いない。
言われてドキッとしたのは不意をつかれたから。絶対に、間違いなくただそれだけの理由だ。
「かわいいなんて言われても嬉しくねーよ。」
この動揺を悟られてたまるか、と言う気持ちで気を紛らわせるために今度は涼太の服装に視線を移す。
「っつーかお前、見た目と性格にギャップありすぎだろ。」
「でもこの方がギャップ萌えするんじゃない?」
ギャップ萌えーーよくクラスの女子がそんなことを言っていた気がする。佐伯涼太はギャップ萌え要素がたくさんある、とかなんとか。
確かに幼い頃は、か弱そうな見た目をしていながら、いつでもどこでも俺を助けてくれた男前だった記憶がある。
そんなことを考えながらパンケーキを食べていると、ふと思い出す。
涼太の家は今、おばさんたちが出張でしばらく留守のはずだ。
「おばさんたち、しばらく出張で家にいないんだろ?俺の家でご飯食べて行きなよ。うちも今日は誰もいないし。」
何気なく言ったつもりだったのに、涼太は驚いたように目を開いて固まった。
――しまった。
気づけば、いつの間にか口にしていた。ただなんとなく、自然に。
二人きりじゃなければ、普通の幼馴染みのように接してくれる。だから、つい忘れてしまう。
こいつは二人きりになった途端、変わってしまうことを。
「…じょ、冗談だから気にすんな。」
つい誤魔化すように笑う。けれど、言いながらどこか苦しくなった。
「あー、行きたいんだけど、今日は予定があるんだ。ごめんね。」
やっぱり断られた。分かっていたはずなのに、少し苦しい。でも、どこかでほっとしている自分もいる。
「お前さ…なんで…」
ーーなんで、二人のときだけ俺を避けようとするんだよ。
続きを口にすることはできなかった。自分でも理由は分からない。でも、今この言葉を口にしたら幼馴染でいられなくなるような気がして、必死に喉の奥で押しとどめる。
涼太は、何も聞いていないと言いたげな様子で、ただフォークを弄んでいた。
賑やかな会話と甘い香りに包まれた空間に、場違いな気がして息を詰める。
でも、涼太と一緒だから不思議と怖くない。
…怖くはないけど、落ち着きはしない。
涼太はすでに席を取っていたが、俺はなかなかこの空気に馴染めずにソワソワした気分で席につく。けれど、メニュー表を見たらそんな気持ちもどこかへ吹っ飛んでしまった。
「俺はこのふわふわフルーツパンケーキが食いたい。涼太は?」
「じゃあ、蓮と同じのにする。」
しばらく軽く雑談していると、目当てのパンケーキが俺たちのテーブルへと届いた。
一口食べると、口の中に広がる甘さとふわふわの食感に思わず『うめえ!』と叫んでしまいそうになる。
「これ、うますぎるだろ。」
しばらくパンケーキに夢中になっていて気が付かなかったが、なんだか涼太の視線を浴びているような気がした。
「俺の顔見過ぎだろ。なんかついてるなら言え。」
涼太はぼーっとしていたのか、肩をピクっとさせた。
「蓮かわいいなーって思って見てただけだよ。」
――俺が可愛い??
たまにこいつは突然を冗談を言う。きっとこれも冗談に違いない。
言われてドキッとしたのは不意をつかれたから。絶対に、間違いなくただそれだけの理由だ。
「かわいいなんて言われても嬉しくねーよ。」
この動揺を悟られてたまるか、と言う気持ちで気を紛らわせるために今度は涼太の服装に視線を移す。
「っつーかお前、見た目と性格にギャップありすぎだろ。」
「でもこの方がギャップ萌えするんじゃない?」
ギャップ萌えーーよくクラスの女子がそんなことを言っていた気がする。佐伯涼太はギャップ萌え要素がたくさんある、とかなんとか。
確かに幼い頃は、か弱そうな見た目をしていながら、いつでもどこでも俺を助けてくれた男前だった記憶がある。
そんなことを考えながらパンケーキを食べていると、ふと思い出す。
涼太の家は今、おばさんたちが出張でしばらく留守のはずだ。
「おばさんたち、しばらく出張で家にいないんだろ?俺の家でご飯食べて行きなよ。うちも今日は誰もいないし。」
何気なく言ったつもりだったのに、涼太は驚いたように目を開いて固まった。
――しまった。
気づけば、いつの間にか口にしていた。ただなんとなく、自然に。
二人きりじゃなければ、普通の幼馴染みのように接してくれる。だから、つい忘れてしまう。
こいつは二人きりになった途端、変わってしまうことを。
「…じょ、冗談だから気にすんな。」
つい誤魔化すように笑う。けれど、言いながらどこか苦しくなった。
「あー、行きたいんだけど、今日は予定があるんだ。ごめんね。」
やっぱり断られた。分かっていたはずなのに、少し苦しい。でも、どこかでほっとしている自分もいる。
「お前さ…なんで…」
ーーなんで、二人のときだけ俺を避けようとするんだよ。
続きを口にすることはできなかった。自分でも理由は分からない。でも、今この言葉を口にしたら幼馴染でいられなくなるような気がして、必死に喉の奥で押しとどめる。
涼太は、何も聞いていないと言いたげな様子で、ただフォークを弄んでいた。
