今日最後の授業が終わり、賑やかだった教室も、気づけば静まり返っていた。
俺は一人、日誌を書いている。授業内容、担当の先生、あとは今日の天気…
晴れなのか曇りなのか、どっちなんだろう。そう思いながら窓の外に目をやると、校庭の隅に先輩らしき人……と涼太が立っていた。
「なんであいつ、あんなところに……」
涼太は楽しそうに可愛らしい女の人と話をしていた。二人きりで。
しかし、もちろん何を話しているのかは聞こえない。
俺が好きなんだろ?
なのに、なんでそんな顔して笑ってるんだよ。なんでその呼び出しに応じてるんだよ。
考えるほど無性にムカついてきて、気がつけば教室を飛び出していた。
引き止めたい、俺にしろと、そう伝えたくて。
「涼太!」
考えもまとまらないまま、名前を呼ぶ。先輩はもうそこにはいなかった。
伝えたいことは山ほどあるはずなのに、何から言えばいいのか分からない。
「れ、蓮……? どうしてここに?」
「俺は今日ずっとお前のこと考えてたのに……なんでお前は女と二人で楽しそうに話して……俺が、好きなんじゃないのかよ……」
違う、違う。こんなことが言いたいんじゃない。
好きって言いたいんだ。
――分かってる。こんなこと、友達に言うセリフじゃない。
でも、伝えなきゃ…
「俺……涼太のことが好きだわ」
息を吐くように告げた。
「お前に告られる少し前から、多分俺も好きになってた。でもこの気持ちが恋だなんて気づいてなかった」
涼太が一瞬、目を見開いた気がした。
「涼太は……俺のことが好きか?」
「…好き。」
その瞬間、ふわりとフローラルな香りが鼻をくすぐった。
「俺、この瞬間を何度も夢に見てた。だから、今ものすごく幸せ……」
耳元で囁く声が、くすぐったくて、心地いい。
「りょ、涼太……?」
「さっきの人は、中学の頃の先輩。だから、どうしても断れなかったんだ。ごめんね?」
「……そっか」
気にしてない、と返すと、腕の力がぎゅっと強くなる。
「蓮、大好きだよ……ほら、蓮も言って? 『大好き』って」
「……だ、だいす……」
その瞬間、唇に温かいものが触れた。
――触れるだけの、軽いキス。
驚きで動けなくなる俺に、涼太は「かわいい」と笑い、また重ねる。
たった5秒くらいが、ものすごく長く感じた。
「蓮、動揺しすぎ」
「覚えとけよ……」
「はいはい」
本当は、この甘い時間が終わらなければいいなんて、絶対に言いたくない。
「……やられっぱなしは性に合わねえ」
「ん? 蓮、それってどういう――」
涼太の言葉を待たず、俺は涼太の唇を奪った。
今度は、強く、深くーー
俺はそっと、涼太の首に手を回す。
息が詰まり、胸がどんどん高鳴っていく。その感覚が全身に広がっていくのが分かった。
涼太は少し驚いたように目を見開いているのが見えた。けれど、すぐに涼太の手が俺の頬に触れ、俺に応えた。
「涼太の想いを全力で受け止められるのは、きっと俺しかいねぇぜ?」
挑発するように笑うと、涼太は少し息を切らしながらそっと俺を見つめて、俺と同じように笑った。
「それ、プロポーズ?」
「…そういうことにしとけば?」
もう一度、涼太の手が俺に触れる。その温もりが、冬の冷たさをすっかり消し去った。
「蓮、好きだよ。」
「俺も……好き。」
息が触れるほど近いこの距離は、寒さなんて消し飛ばしてしまうほどに温かくて、心地よかった。
俺は一人、日誌を書いている。授業内容、担当の先生、あとは今日の天気…
晴れなのか曇りなのか、どっちなんだろう。そう思いながら窓の外に目をやると、校庭の隅に先輩らしき人……と涼太が立っていた。
「なんであいつ、あんなところに……」
涼太は楽しそうに可愛らしい女の人と話をしていた。二人きりで。
しかし、もちろん何を話しているのかは聞こえない。
俺が好きなんだろ?
なのに、なんでそんな顔して笑ってるんだよ。なんでその呼び出しに応じてるんだよ。
考えるほど無性にムカついてきて、気がつけば教室を飛び出していた。
引き止めたい、俺にしろと、そう伝えたくて。
「涼太!」
考えもまとまらないまま、名前を呼ぶ。先輩はもうそこにはいなかった。
伝えたいことは山ほどあるはずなのに、何から言えばいいのか分からない。
「れ、蓮……? どうしてここに?」
「俺は今日ずっとお前のこと考えてたのに……なんでお前は女と二人で楽しそうに話して……俺が、好きなんじゃないのかよ……」
違う、違う。こんなことが言いたいんじゃない。
好きって言いたいんだ。
――分かってる。こんなこと、友達に言うセリフじゃない。
でも、伝えなきゃ…
「俺……涼太のことが好きだわ」
息を吐くように告げた。
「お前に告られる少し前から、多分俺も好きになってた。でもこの気持ちが恋だなんて気づいてなかった」
涼太が一瞬、目を見開いた気がした。
「涼太は……俺のことが好きか?」
「…好き。」
その瞬間、ふわりとフローラルな香りが鼻をくすぐった。
「俺、この瞬間を何度も夢に見てた。だから、今ものすごく幸せ……」
耳元で囁く声が、くすぐったくて、心地いい。
「りょ、涼太……?」
「さっきの人は、中学の頃の先輩。だから、どうしても断れなかったんだ。ごめんね?」
「……そっか」
気にしてない、と返すと、腕の力がぎゅっと強くなる。
「蓮、大好きだよ……ほら、蓮も言って? 『大好き』って」
「……だ、だいす……」
その瞬間、唇に温かいものが触れた。
――触れるだけの、軽いキス。
驚きで動けなくなる俺に、涼太は「かわいい」と笑い、また重ねる。
たった5秒くらいが、ものすごく長く感じた。
「蓮、動揺しすぎ」
「覚えとけよ……」
「はいはい」
本当は、この甘い時間が終わらなければいいなんて、絶対に言いたくない。
「……やられっぱなしは性に合わねえ」
「ん? 蓮、それってどういう――」
涼太の言葉を待たず、俺は涼太の唇を奪った。
今度は、強く、深くーー
俺はそっと、涼太の首に手を回す。
息が詰まり、胸がどんどん高鳴っていく。その感覚が全身に広がっていくのが分かった。
涼太は少し驚いたように目を見開いているのが見えた。けれど、すぐに涼太の手が俺の頬に触れ、俺に応えた。
「涼太の想いを全力で受け止められるのは、きっと俺しかいねぇぜ?」
挑発するように笑うと、涼太は少し息を切らしながらそっと俺を見つめて、俺と同じように笑った。
「それ、プロポーズ?」
「…そういうことにしとけば?」
もう一度、涼太の手が俺に触れる。その温もりが、冬の冷たさをすっかり消し去った。
「蓮、好きだよ。」
「俺も……好き。」
息が触れるほど近いこの距離は、寒さなんて消し飛ばしてしまうほどに温かくて、心地よかった。
