俺は必死に目を凝らしてみたけど、やっぱり真っ暗で何も見えなかった。
クソ、まさかトラブルに巻き込まれるなんて……。
不安を紛らわせるために何かしゃべろうとするけど、うまく話すこともできない。
「何も見えない……出口どこだよ?」
「朝氷、目が慣れてくれば見えるって。オレ、横にいるし」
「っるさい。俺は何も見えないんだよ! ……何、急に寒い?」
「おい、朝氷ってば! 落ち着けって。照明の故障か何かだろ?」
俺は鳥目だから暗闇だとほとんど見えない。
時間が経てば目が慣れてきて見えてくるから映画館とかは問題ないけど、急に暗くなると普通の人より慣れるまでの時間が長いので対応が遅れてしまう。
俺がもたついていると、今度は足元に何か気配を感じる。
「……ぃちゃん、あそぼう?」
「……は? 何、上森、何か言った?」
「え、何も言ってない。朝氷、大丈夫か? 出口はこっちの方だと思うけど……」
「ねぇ……あそぼ?」
さっきからずっと女の子の声がする。
ゆっくりと足もとに目を向けると、くまのぬいぐるみを持った女の子が見えた……気がした。
「え? 女の子?」
「は? 朝氷、どこ見て……」
「いや、ココに女の子がいるだろ?」
「誰もいないし、そもそも声なんて聞こえないけど」
「だから、ココに女の子が……」
俺が指差すと、女の子はじっとこちらを見あげてクスクスと笑い始めた。
俺の足元の空気が、どんどん冷え込んでいく気がして――
まさか、この子本物の……幽霊?
最悪だ。偽物は大丈夫だけど、本物は無理だ。正直ホラー系は得意じゃない。
「う、嘘だろ……待って、俺、そういうの……」
「朝氷、お前さっきから何言ってんだよ! もしかして暗いの苦手だった? ……あぁもう、怒るなよ?」
どうしていいか分からなくて混乱していると、俺の身体が急に引き寄せられる。
上森なのか?
訳が分からないまま固まっていると、やたらと背中を撫でられているのが分かる。
「そんなに怖がると思ってなくてさー……ごめんな?」
「だ、誰が怖がって……」
「だってさ、朝氷、震えてるし。暗闇だと見えないんだろ?」
「震えてない! 見えないのは、そうだけど……上森、何して……」
「んー……よしよし?」
俺も無意識で上森の胸元のシャツを両手で握りしめていたことに今、気づいた。
しかも、この状況。どうみても上森に抱きしめられてるよな?
上森からは爽やかなシトラス系の香りがしてきて、俺は香りで少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
この状況をどうしようかと考えていると、上森の顔が俺の髪に触れそうになる。
俺は慌てて上森から一歩離れて、顔を上げた。
「よしよし、って……俺は子どもか!」
「だから、怒るなよって言っただろ。抱きしめたけど」
「なんで、抱きしめてんだよ!」
抱きしめるというワードに妙に心がざわついて、上森を思い切り突き飛ばす。
上森はよろけるが、今度は俺の手をつかんで踏みとどまった。
「あっぶな! いきなり押すなよ、酷いなぁー」
「手を離せ! もう、見えてきたから! さっさとこんなところから出るぞ」
「はいはい。そういや、さっき言ってた女の子は……」
「……もう、いない。はぁ……何だったんだよ、ホント」
話しているうちに照明が回復して元通りになる。
先程の出来事が何だったのかは結局分からないままだ。
俺はさっさとお化け屋敷から出ようと歩き出す。
「あーさーひー! だから、怒るなって! 不可抗力ってヤツだろ?」
「お前、入り口で言ってた可愛い子が抱きついてくるヤツってのをやりたかっただけなんだろ? 俺で試すとか、趣味悪!」
「いやまぁ、そうは言ったけどさー。朝氷がガチでヤバそうだったから」
「別に。暗闇に驚いただけだよ。カッコ悪いところ見せて悪かったな」
自分のふがいなさと上森の言動にもイラつく。いつもイライラはしているけど、いつも以上に心がざわざわする。
上森を置いて早足でお化け屋敷を抜け出そうとすると、また手をつかまれた。
クソ、まさかトラブルに巻き込まれるなんて……。
不安を紛らわせるために何かしゃべろうとするけど、うまく話すこともできない。
「何も見えない……出口どこだよ?」
「朝氷、目が慣れてくれば見えるって。オレ、横にいるし」
「っるさい。俺は何も見えないんだよ! ……何、急に寒い?」
「おい、朝氷ってば! 落ち着けって。照明の故障か何かだろ?」
俺は鳥目だから暗闇だとほとんど見えない。
時間が経てば目が慣れてきて見えてくるから映画館とかは問題ないけど、急に暗くなると普通の人より慣れるまでの時間が長いので対応が遅れてしまう。
俺がもたついていると、今度は足元に何か気配を感じる。
「……ぃちゃん、あそぼう?」
「……は? 何、上森、何か言った?」
「え、何も言ってない。朝氷、大丈夫か? 出口はこっちの方だと思うけど……」
「ねぇ……あそぼ?」
さっきからずっと女の子の声がする。
ゆっくりと足もとに目を向けると、くまのぬいぐるみを持った女の子が見えた……気がした。
「え? 女の子?」
「は? 朝氷、どこ見て……」
「いや、ココに女の子がいるだろ?」
「誰もいないし、そもそも声なんて聞こえないけど」
「だから、ココに女の子が……」
俺が指差すと、女の子はじっとこちらを見あげてクスクスと笑い始めた。
俺の足元の空気が、どんどん冷え込んでいく気がして――
まさか、この子本物の……幽霊?
最悪だ。偽物は大丈夫だけど、本物は無理だ。正直ホラー系は得意じゃない。
「う、嘘だろ……待って、俺、そういうの……」
「朝氷、お前さっきから何言ってんだよ! もしかして暗いの苦手だった? ……あぁもう、怒るなよ?」
どうしていいか分からなくて混乱していると、俺の身体が急に引き寄せられる。
上森なのか?
訳が分からないまま固まっていると、やたらと背中を撫でられているのが分かる。
「そんなに怖がると思ってなくてさー……ごめんな?」
「だ、誰が怖がって……」
「だってさ、朝氷、震えてるし。暗闇だと見えないんだろ?」
「震えてない! 見えないのは、そうだけど……上森、何して……」
「んー……よしよし?」
俺も無意識で上森の胸元のシャツを両手で握りしめていたことに今、気づいた。
しかも、この状況。どうみても上森に抱きしめられてるよな?
上森からは爽やかなシトラス系の香りがしてきて、俺は香りで少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
この状況をどうしようかと考えていると、上森の顔が俺の髪に触れそうになる。
俺は慌てて上森から一歩離れて、顔を上げた。
「よしよし、って……俺は子どもか!」
「だから、怒るなよって言っただろ。抱きしめたけど」
「なんで、抱きしめてんだよ!」
抱きしめるというワードに妙に心がざわついて、上森を思い切り突き飛ばす。
上森はよろけるが、今度は俺の手をつかんで踏みとどまった。
「あっぶな! いきなり押すなよ、酷いなぁー」
「手を離せ! もう、見えてきたから! さっさとこんなところから出るぞ」
「はいはい。そういや、さっき言ってた女の子は……」
「……もう、いない。はぁ……何だったんだよ、ホント」
話しているうちに照明が回復して元通りになる。
先程の出来事が何だったのかは結局分からないままだ。
俺はさっさとお化け屋敷から出ようと歩き出す。
「あーさーひー! だから、怒るなって! 不可抗力ってヤツだろ?」
「お前、入り口で言ってた可愛い子が抱きついてくるヤツってのをやりたかっただけなんだろ? 俺で試すとか、趣味悪!」
「いやまぁ、そうは言ったけどさー。朝氷がガチでヤバそうだったから」
「別に。暗闇に驚いただけだよ。カッコ悪いところ見せて悪かったな」
自分のふがいなさと上森の言動にもイラつく。いつもイライラはしているけど、いつも以上に心がざわざわする。
上森を置いて早足でお化け屋敷を抜け出そうとすると、また手をつかまれた。

