教室は今日も暑くて嫌になる。クーラーも多少は効いてるとはいえ、日差しは完全に夏そのもの。
じっとしていても汗が垂れてくる本格的な暑さで、しかも今年は猛暑だ。
先生が話している内容なんて、少しも頭に入ってこない。
退屈な授業がやっと終わった。
さっさと帰ってゲームでもしようと立ち上がると、面倒なアイツが満面の笑みで俺の方へ近づいてきた。
身長が俺より高いのも気に食わないが、出席番号が近いというだけで席も近くにされることもたびたびあった。
そのせいで大体前後で一緒になる確率が高い。
高校に入ってから今までのクラス替えでも、何故か三年間一緒のクラスになるし。
本当にどういう腐れ縁なんだろう? 誰かが仕掛けてるとしか思えない。
「あーさーひー。もう、帰るだろ?」
「見りゃ分かるだろ。帰る」
「なーなー。お前ん家寄っていい? どうせ先週発売されたアレ、やるだろ?」
「お前、バイトじゃねぇの?」
「んー? 今日は休みー」
通学バッグを片手に、ニヤニヤと寄ってきたコイツは上森 兎倭。
髪は校則に引っかかってる気がするほぼ金髪だし、片耳に存在感のあるシルバーリングのピアス。
着崩した制服もそうだけど、しゃべり方もチャラいヤツだ。
本人がアピールするのをそのままいえば、可愛いゆるふわの髪をゴムで縛っている。
誰にでも愛想良くヘラヘラ喋るし、クラスの皆が俺のダチタイプのヤツだ。
「なぁ、いいだろ? 朝氷君、朝氷様。あと、何だっけ?」
「意味分かんねぇし。さっさと帰ろうぜ」
コイツと対照的な俺。一木 朝氷は、基本面倒だから話しかけられなければ返事もしない。
コイツみたいにウザいくらいに絡まれたらしゃべるけど、自分から誰かに話しかけることはない。
どちらかと言えば目立たず好きなことして過ごすのが一番だと思ってるし、黒髪で無愛想だーとか良く言われる。
ちなみに黒ではなくて、俺の髪は焦げ茶だ。少しくらいは俺だって染めてる。
「置いてくなって。どうせ帰り道も大体一緒なんだしさ」
上森が俺の後について来ようとすると、横からクラスメイトが声をかける。
「あ、上森ー。カラオケ行くんだけど暇ならどう? お前いると盛り上がるし」
「ごめん。今日はパス。また今度誘ってー」
「あぁ、また一木の尻を追いかけてんの? アイツも逃げるの早いもんな」
「そゆこと。すーぐどっか行っちゃうからさ」
俺は無視してさっさと教室を出たのにも関わらず、パタパタと足音が追いかけてくる。
「だーかーらー。無視すんなって」
「無視はしてないだろ。別に」
いつもの適当なやり取りをしながら、結局俺の後についてくる上森を引き連れて帰路につく。
+++
「また負けたー!」
「お前、下手くそすぎ」
「はぁー? いや、お前がガチ勢なんだよ!」
「だったらやらなきゃいいのに」
二人でいつものレースゲームをしていたが、毎回上森は下手くそすぎてダントツでビリだ。
多分レースゲームが向いていないんだと思う。
コントローラーを放り投げた上森が、そうだ! と言ってバッグを漁り始めた。
「何?」
「これさー、もらったんだよ。だから、一緒に行こうぜ」
「これって……遊園地のタダ券? なんで野郎同士で。俺はパス」
「そう言わずにさ。気を遣わないで行けるの、朝氷くらいなんだって」
コイツはいつもそんなことばかり言う。
上森の周りにはダチや女子も腐るほどいるはずなのに……なんでいつも俺に声をかけてくるのか、未だによく分からない。
「じゃあ、次の新コース走って俺より良い順位だったら考えてやる」
「お、マジー? 見てろよ、オレの本気!」
食いついた上森は異様なやる気を見せる。
どうせ、結果なんて見えてると思っていたのに……結果、上森はアイテム運も味方してこの時だけ一位になった。
じっとしていても汗が垂れてくる本格的な暑さで、しかも今年は猛暑だ。
先生が話している内容なんて、少しも頭に入ってこない。
退屈な授業がやっと終わった。
さっさと帰ってゲームでもしようと立ち上がると、面倒なアイツが満面の笑みで俺の方へ近づいてきた。
身長が俺より高いのも気に食わないが、出席番号が近いというだけで席も近くにされることもたびたびあった。
そのせいで大体前後で一緒になる確率が高い。
高校に入ってから今までのクラス替えでも、何故か三年間一緒のクラスになるし。
本当にどういう腐れ縁なんだろう? 誰かが仕掛けてるとしか思えない。
「あーさーひー。もう、帰るだろ?」
「見りゃ分かるだろ。帰る」
「なーなー。お前ん家寄っていい? どうせ先週発売されたアレ、やるだろ?」
「お前、バイトじゃねぇの?」
「んー? 今日は休みー」
通学バッグを片手に、ニヤニヤと寄ってきたコイツは上森 兎倭。
髪は校則に引っかかってる気がするほぼ金髪だし、片耳に存在感のあるシルバーリングのピアス。
着崩した制服もそうだけど、しゃべり方もチャラいヤツだ。
本人がアピールするのをそのままいえば、可愛いゆるふわの髪をゴムで縛っている。
誰にでも愛想良くヘラヘラ喋るし、クラスの皆が俺のダチタイプのヤツだ。
「なぁ、いいだろ? 朝氷君、朝氷様。あと、何だっけ?」
「意味分かんねぇし。さっさと帰ろうぜ」
コイツと対照的な俺。一木 朝氷は、基本面倒だから話しかけられなければ返事もしない。
コイツみたいにウザいくらいに絡まれたらしゃべるけど、自分から誰かに話しかけることはない。
どちらかと言えば目立たず好きなことして過ごすのが一番だと思ってるし、黒髪で無愛想だーとか良く言われる。
ちなみに黒ではなくて、俺の髪は焦げ茶だ。少しくらいは俺だって染めてる。
「置いてくなって。どうせ帰り道も大体一緒なんだしさ」
上森が俺の後について来ようとすると、横からクラスメイトが声をかける。
「あ、上森ー。カラオケ行くんだけど暇ならどう? お前いると盛り上がるし」
「ごめん。今日はパス。また今度誘ってー」
「あぁ、また一木の尻を追いかけてんの? アイツも逃げるの早いもんな」
「そゆこと。すーぐどっか行っちゃうからさ」
俺は無視してさっさと教室を出たのにも関わらず、パタパタと足音が追いかけてくる。
「だーかーらー。無視すんなって」
「無視はしてないだろ。別に」
いつもの適当なやり取りをしながら、結局俺の後についてくる上森を引き連れて帰路につく。
+++
「また負けたー!」
「お前、下手くそすぎ」
「はぁー? いや、お前がガチ勢なんだよ!」
「だったらやらなきゃいいのに」
二人でいつものレースゲームをしていたが、毎回上森は下手くそすぎてダントツでビリだ。
多分レースゲームが向いていないんだと思う。
コントローラーを放り投げた上森が、そうだ! と言ってバッグを漁り始めた。
「何?」
「これさー、もらったんだよ。だから、一緒に行こうぜ」
「これって……遊園地のタダ券? なんで野郎同士で。俺はパス」
「そう言わずにさ。気を遣わないで行けるの、朝氷くらいなんだって」
コイツはいつもそんなことばかり言う。
上森の周りにはダチや女子も腐るほどいるはずなのに……なんでいつも俺に声をかけてくるのか、未だによく分からない。
「じゃあ、次の新コース走って俺より良い順位だったら考えてやる」
「お、マジー? 見てろよ、オレの本気!」
食いついた上森は異様なやる気を見せる。
どうせ、結果なんて見えてると思っていたのに……結果、上森はアイテム運も味方してこの時だけ一位になった。

