「十五分、休憩」
雅清は前でへばっている面々に向かって端的に告げる。
するとその声に「待ってました!」とばかりに、隊士達が皆揃ってバッと雅清から離れた。それも少しの距離と言うのではなく、念には念をと言う様な遠くの木陰。そんな所に全員身を寄せ、薫を中心にして何やら熱心に語り合っている。
……急に非番の日に出かけないかと言い出したから何事かと思えば。成程、アイツ等の入れ知恵だったのか。
「偶には良い入れ知恵をしてくれるもんだな」
雅清はフッと独りごちて、遠くでわいわいと騒ぐ自隊の面々を見つめた。
すると「あら」と、朗らかな怪訝が後ろから飛ぶ。
「また皆様、雅清様から離れてお話されておりますのね」
振り向くまでもなく、優衣子が雅清の横に立って「先日まで、全くそんな事ございませんでしたのにね」と、不思議そうに呟いた。
雅清は「どうしたのでしょうね」と、小さく口元を綻ばせて答える。
「何か、俺には気付かれてはいけない企みでもあるのかもしれません」
「まぁ、企み事ですか。一体、何を図っておられるのでしょう?」
優衣子はうーんと可愛らしく手を顎に当てて言った。
雅清はその姿を一瞥もせずに「何でしょうね」と流して答えてから、何かを言われ愕然とする薫の姿を見つめる。
何を言われたのかは分からないが、お前はそのままで良いからな。
フッと相好を崩して遠くから見守っていると、突然「げっ」と顔が嫌に歪んだ。
怜人の野郎、何しれっと参加してやがる……しかもあの野郎、俺が見ているって気がついて参加してやがるな?
雅清は「これ以上変な事を吹き込まれたら敵わん」と内心で苦々しく呻いてから、怜人を成敗しに動き出そうとした。
しかしその時に、「雅清様」と横から朗らかな声が自分の動きを封じ込める。
また嫌な時に。と、雅清は彼女に聞こえない様に小さく舌を打ってから「はい?」と、彼女と対峙した。
「次の非番の日、何か御用時がありまして? もしよろしければ、観劇にでも出かけませんこと? いえね、私達、ここではよく会いますけれども。外で改まって会う機会が今までなかったと思いまして」
きゅるんと大きな瞳を更に煌めかせた可愛らしい上目遣いで、優衣子は可愛らしく問いかける。
それだけで、もう幾人の男達を虜に出来そうであったが。この男は、違っていた。
雅清はニコリと口角だけを上げて「申し訳ありませんが」と答える。
「先約がございます。先約がなかったとしても、こんな男が帝都で貴女様の隣を歩く訳にはいきませんよ」
貴女とは出かけられない。と、雅清は暗に力強く突きつけた。
だが、優衣子は「先約」と言う一言で頭を占拠されたのか、「そうでしたのね」と素直に肩を落としてから「またお誘い致しますわ」と、笑顔で投げかける。
本当にまるで手応えがないな、こっちも……《《あっち》》も。
雅清は薫を目の端でチラと窺ってから、優衣子に向かって「身体が空いておりましたら」と目を細めて答えたのだった。
雅清は前でへばっている面々に向かって端的に告げる。
するとその声に「待ってました!」とばかりに、隊士達が皆揃ってバッと雅清から離れた。それも少しの距離と言うのではなく、念には念をと言う様な遠くの木陰。そんな所に全員身を寄せ、薫を中心にして何やら熱心に語り合っている。
……急に非番の日に出かけないかと言い出したから何事かと思えば。成程、アイツ等の入れ知恵だったのか。
「偶には良い入れ知恵をしてくれるもんだな」
雅清はフッと独りごちて、遠くでわいわいと騒ぐ自隊の面々を見つめた。
すると「あら」と、朗らかな怪訝が後ろから飛ぶ。
「また皆様、雅清様から離れてお話されておりますのね」
振り向くまでもなく、優衣子が雅清の横に立って「先日まで、全くそんな事ございませんでしたのにね」と、不思議そうに呟いた。
雅清は「どうしたのでしょうね」と、小さく口元を綻ばせて答える。
「何か、俺には気付かれてはいけない企みでもあるのかもしれません」
「まぁ、企み事ですか。一体、何を図っておられるのでしょう?」
優衣子はうーんと可愛らしく手を顎に当てて言った。
雅清はその姿を一瞥もせずに「何でしょうね」と流して答えてから、何かを言われ愕然とする薫の姿を見つめる。
何を言われたのかは分からないが、お前はそのままで良いからな。
フッと相好を崩して遠くから見守っていると、突然「げっ」と顔が嫌に歪んだ。
怜人の野郎、何しれっと参加してやがる……しかもあの野郎、俺が見ているって気がついて参加してやがるな?
雅清は「これ以上変な事を吹き込まれたら敵わん」と内心で苦々しく呻いてから、怜人を成敗しに動き出そうとした。
しかしその時に、「雅清様」と横から朗らかな声が自分の動きを封じ込める。
また嫌な時に。と、雅清は彼女に聞こえない様に小さく舌を打ってから「はい?」と、彼女と対峙した。
「次の非番の日、何か御用時がありまして? もしよろしければ、観劇にでも出かけませんこと? いえね、私達、ここではよく会いますけれども。外で改まって会う機会が今までなかったと思いまして」
きゅるんと大きな瞳を更に煌めかせた可愛らしい上目遣いで、優衣子は可愛らしく問いかける。
それだけで、もう幾人の男達を虜に出来そうであったが。この男は、違っていた。
雅清はニコリと口角だけを上げて「申し訳ありませんが」と答える。
「先約がございます。先約がなかったとしても、こんな男が帝都で貴女様の隣を歩く訳にはいきませんよ」
貴女とは出かけられない。と、雅清は暗に力強く突きつけた。
だが、優衣子は「先約」と言う一言で頭を占拠されたのか、「そうでしたのね」と素直に肩を落としてから「またお誘い致しますわ」と、笑顔で投げかける。
本当にまるで手応えがないな、こっちも……《《あっち》》も。
雅清は薫を目の端でチラと窺ってから、優衣子に向かって「身体が空いておりましたら」と目を細めて答えたのだった。



