「よろしくお願いしまーす!」
「今回も個性豊かなメンバーが揃ったな」
刀王ウルマのスカウトには成功した。
他にも一年生を課外活動部に誘って、人数が揃った。
注目株は当然刀王であるが、火炎術師や重騎士など今の二年生よりも戦闘向きな職業が多い。
「せーんぱい!」
「ああ……」
ウルマはスカウトした時と変わらぬ態度で、トモナリに近づいてくる。
トモナリとしてはちょっと苦手だなと思っていた。
「なんですか、その態度? サク、ちょっとショックです!」
「わ、悪かったな」
「ガルル!」
ヒカリもウルマのことが苦手で警戒している。
「なんだか……印象違うね」
「私たちん時あんなんだった……?」
ウルマの態度を見て、ハルカとナナが困惑したように顔を見合わせる。
二人がスカウトに行った時には、ウルマに冷たくあしらわれた。
話だけでも食い下がると、トモナリが来てくれるならと答えたのでしょうがなくトモナリに助けを求めたのだ。
声もあんなに高い感じではなく、キャピキャピもしていなかった。
全く違う人のように感じられるぐらいだ。
「ひとまず……自己紹介は終わったな。次はいつもの伝統だ」
いつもの伝統とは一年生が二、三年生と戦っていく例のやつである。
覚醒して調子に乗っている一年生に、上級生の強さをちゃんと認識してもらう目的がある。
強くなるということを明確にして、課外活動部で活動することの意味を分かってもらう。
ただアカデミーにいて、授業を受けているだけでは強くなる速度にも限度があるのだ。
「へぇ……」
まだまだ戦い方も未熟な一年生は二年生にも敵わない。
三年生にも当然勝てるはずがなく、実力の差を思い知っていく。
一年生が三年生はともかく、二年生を倒すなんて実際には異常なのである。
トモナリはそんな異常な人だった。
一年生が次々に敗北する中で奮闘しているのはウルマだった。
ウルマは自前で刀を持っていた。
よく手入れされた刀を構えるウルマは、一転してキャピキャピした態度が消えて真剣なものになった。
「覚醒は入学時のはずだけど……その前から何かやってたな」
戦っているのはナナだけど、意外と苦戦している。
ウルマの動きを見るに、アカデミーに入学してからだけのものではなさそうだった。
入学前から何か習っている。
しかも割と強い。
トモナリやミズキも入学前から体の動かし方を習っていたし、覚醒者になろうと決めている人にはそうした教育を受けているような熱心なタイプもいる。
見た目や態度とのギャップはあるが、ただ職業に頼っているだけの人ではなかったようで少し安心した。
「ふっ……はあっ!」
ナナも二年生として負けられないと奮闘した。
ウルマの刀を押し返して、首に剣を突きつける。
「……負けました」
少し悔しさをにじませながらもウルマは負けを認めた。
「なんとか勝ったね」
「正直危なかったよ」
ハルカの言葉にナナは苦笑いを浮かべる。
職業的に注目というだけでなく、技術的にもウルマは一年生の中で頭ひとつ抜きん出ているようだった。
「よろしくお願いします、先輩」
「ああ、よろしくな」
ウルマの方からご指名があった。
トモナリはルビウスを手に、ウルマと対峙する。
一度ニッコリ笑うとすぐにまた真面目な顔つきに戻る。
対峙して分かるピリッとした空気を感じて、やはりある程度は経験がありそうだと改めて思った。
「いきますよ!」
「いつでも来い」
トモナリは剣を構えず、悠然とウルマの動きを待つ。
「ふーん……」
ウルマが少しムッとしたような顔をしたのをトモナリは見逃さなかった。
軽い態度とは裏腹に意外とプライドは高そう。
「はっ!」
ウルマは正面からトモナリに斬りかかった。
真っ直ぐに刀を上げ、一歩踏み込みながら振り下ろす動作は基本に忠実で体の芯にもぶれがない。
「ぬひっ!」
「なっ!」
ウルマの刀が弾き返される。
ただトモナリは一歩も動いていない。
「僕もいるのだ!」
刀を弾き返したのはヒカリだった。
魔力を尻尾に込めて下から叩き上げるようにして刀にぶつけた。
「ポッ!」
手加減してくれよ? とトモナリは思っていた。
ヒカリは口を小さく開けて火の玉を撃ち出す。
ブレスやビームなどに比べるとだいぶ威力を抑えてある。
ウルマのことはあまり気に入らないようであるが、さすがのヒカリも全力で叩き潰すようなことはしない。
だいぶ子供っぽいと思っていたけれど、ヒカリの精神も先輩らしく成長しているのだなとトモナリは内心少し嬉しかった。
「くっ!」
ウルマはギリギリ火球をかわす。
反射神経も悪くない。
「トモナリと戦いたければ……僕を倒していくのだ!」
「て、手強いですね!」
火球以外もちゃんと手加減しつつ戦っている。
ウルマも縦横無尽に飛び回るヒカリの攻撃に上手く対応している。
「あっ!」
ヒカリを切りつけようとしたウルマの手から、刀がすっぽ抜ける。
連戦もしているし限界だったのかなとトモナリは飛んできた刀を軽くかわす。
「降参……なのだ?」
ヒカリがドヤ顔でウルマのことを見下ろす。
「…………御剣術」
汗だくのウルマはボソリと何かを呟いて指を動かした。
「……なるほどな。わざとだったのか」
後ろから魔力を感じたトモナリはルビウスを背中に回していた。
ルビウスに何かが衝突して、甲高い音が鳴り響く。
ウルマが手放した刀が一人でに浮き上がり、トモナリを後ろから突き刺そうとしていたのだ。
「…………バレちゃいました?」
「悪くない作戦だった」
ウルマのファーストスキルは御剣術。
手に持っていなくとも武器を操ることのできる特殊なスキルだ。
スカウトのためにウルマの情報を見ていなかったなら危ないところだったかもしれない。
「降参です。先輩強いですね。ヒカリ先輩も」
「ふふん、当然なのだ!」
ヒカリは胸を張る。
頼もしい一年生が入ってきてくれた。
最初から御剣術を使っていれば二年生にも一勝ぐらいできただろう。
きっとトモナリと戦うために取っておいたのだ。
ウルマはなかなか油断ならない相手である。
「それじゃあ……歓迎のパーティーとでもいこうか」
食堂にあらかじめお願いしてあった料理がある。
疲れてお腹の空いた一年生も含めて豪華な食事を食べて、改めて入部を祝ったのだった。
「今回も個性豊かなメンバーが揃ったな」
刀王ウルマのスカウトには成功した。
他にも一年生を課外活動部に誘って、人数が揃った。
注目株は当然刀王であるが、火炎術師や重騎士など今の二年生よりも戦闘向きな職業が多い。
「せーんぱい!」
「ああ……」
ウルマはスカウトした時と変わらぬ態度で、トモナリに近づいてくる。
トモナリとしてはちょっと苦手だなと思っていた。
「なんですか、その態度? サク、ちょっとショックです!」
「わ、悪かったな」
「ガルル!」
ヒカリもウルマのことが苦手で警戒している。
「なんだか……印象違うね」
「私たちん時あんなんだった……?」
ウルマの態度を見て、ハルカとナナが困惑したように顔を見合わせる。
二人がスカウトに行った時には、ウルマに冷たくあしらわれた。
話だけでも食い下がると、トモナリが来てくれるならと答えたのでしょうがなくトモナリに助けを求めたのだ。
声もあんなに高い感じではなく、キャピキャピもしていなかった。
全く違う人のように感じられるぐらいだ。
「ひとまず……自己紹介は終わったな。次はいつもの伝統だ」
いつもの伝統とは一年生が二、三年生と戦っていく例のやつである。
覚醒して調子に乗っている一年生に、上級生の強さをちゃんと認識してもらう目的がある。
強くなるということを明確にして、課外活動部で活動することの意味を分かってもらう。
ただアカデミーにいて、授業を受けているだけでは強くなる速度にも限度があるのだ。
「へぇ……」
まだまだ戦い方も未熟な一年生は二年生にも敵わない。
三年生にも当然勝てるはずがなく、実力の差を思い知っていく。
一年生が三年生はともかく、二年生を倒すなんて実際には異常なのである。
トモナリはそんな異常な人だった。
一年生が次々に敗北する中で奮闘しているのはウルマだった。
ウルマは自前で刀を持っていた。
よく手入れされた刀を構えるウルマは、一転してキャピキャピした態度が消えて真剣なものになった。
「覚醒は入学時のはずだけど……その前から何かやってたな」
戦っているのはナナだけど、意外と苦戦している。
ウルマの動きを見るに、アカデミーに入学してからだけのものではなさそうだった。
入学前から何か習っている。
しかも割と強い。
トモナリやミズキも入学前から体の動かし方を習っていたし、覚醒者になろうと決めている人にはそうした教育を受けているような熱心なタイプもいる。
見た目や態度とのギャップはあるが、ただ職業に頼っているだけの人ではなかったようで少し安心した。
「ふっ……はあっ!」
ナナも二年生として負けられないと奮闘した。
ウルマの刀を押し返して、首に剣を突きつける。
「……負けました」
少し悔しさをにじませながらもウルマは負けを認めた。
「なんとか勝ったね」
「正直危なかったよ」
ハルカの言葉にナナは苦笑いを浮かべる。
職業的に注目というだけでなく、技術的にもウルマは一年生の中で頭ひとつ抜きん出ているようだった。
「よろしくお願いします、先輩」
「ああ、よろしくな」
ウルマの方からご指名があった。
トモナリはルビウスを手に、ウルマと対峙する。
一度ニッコリ笑うとすぐにまた真面目な顔つきに戻る。
対峙して分かるピリッとした空気を感じて、やはりある程度は経験がありそうだと改めて思った。
「いきますよ!」
「いつでも来い」
トモナリは剣を構えず、悠然とウルマの動きを待つ。
「ふーん……」
ウルマが少しムッとしたような顔をしたのをトモナリは見逃さなかった。
軽い態度とは裏腹に意外とプライドは高そう。
「はっ!」
ウルマは正面からトモナリに斬りかかった。
真っ直ぐに刀を上げ、一歩踏み込みながら振り下ろす動作は基本に忠実で体の芯にもぶれがない。
「ぬひっ!」
「なっ!」
ウルマの刀が弾き返される。
ただトモナリは一歩も動いていない。
「僕もいるのだ!」
刀を弾き返したのはヒカリだった。
魔力を尻尾に込めて下から叩き上げるようにして刀にぶつけた。
「ポッ!」
手加減してくれよ? とトモナリは思っていた。
ヒカリは口を小さく開けて火の玉を撃ち出す。
ブレスやビームなどに比べるとだいぶ威力を抑えてある。
ウルマのことはあまり気に入らないようであるが、さすがのヒカリも全力で叩き潰すようなことはしない。
だいぶ子供っぽいと思っていたけれど、ヒカリの精神も先輩らしく成長しているのだなとトモナリは内心少し嬉しかった。
「くっ!」
ウルマはギリギリ火球をかわす。
反射神経も悪くない。
「トモナリと戦いたければ……僕を倒していくのだ!」
「て、手強いですね!」
火球以外もちゃんと手加減しつつ戦っている。
ウルマも縦横無尽に飛び回るヒカリの攻撃に上手く対応している。
「あっ!」
ヒカリを切りつけようとしたウルマの手から、刀がすっぽ抜ける。
連戦もしているし限界だったのかなとトモナリは飛んできた刀を軽くかわす。
「降参……なのだ?」
ヒカリがドヤ顔でウルマのことを見下ろす。
「…………御剣術」
汗だくのウルマはボソリと何かを呟いて指を動かした。
「……なるほどな。わざとだったのか」
後ろから魔力を感じたトモナリはルビウスを背中に回していた。
ルビウスに何かが衝突して、甲高い音が鳴り響く。
ウルマが手放した刀が一人でに浮き上がり、トモナリを後ろから突き刺そうとしていたのだ。
「…………バレちゃいました?」
「悪くない作戦だった」
ウルマのファーストスキルは御剣術。
手に持っていなくとも武器を操ることのできる特殊なスキルだ。
スカウトのためにウルマの情報を見ていなかったなら危ないところだったかもしれない。
「降参です。先輩強いですね。ヒカリ先輩も」
「ふふん、当然なのだ!」
ヒカリは胸を張る。
頼もしい一年生が入ってきてくれた。
最初から御剣術を使っていれば二年生にも一勝ぐらいできただろう。
きっとトモナリと戦うために取っておいたのだ。
ウルマはなかなか油断ならない相手である。
「それじゃあ……歓迎のパーティーとでもいこうか」
食堂にあらかじめお願いしてあった料理がある。
疲れてお腹の空いた一年生も含めて豪華な食事を食べて、改めて入部を祝ったのだった。

