「ほんと……人使い荒いよねぇ」
バスに揺られ、日本から持ってきていたお菓子を食べながらミズキは小さくため息をついた。
「まあしょうがないけどさ」
人手が足りない。
これはもうどうしようもないことである。
あちこちで脱獄した覚醒者やそれに触発された犯罪が多発していて、どこも手が足りていないのだ。
だが人間が問題を起こしている間もゲートは待ってくれたりなんかしない。
新たなゲートは出現するし、放置されればブレイクを起こす可能性がある。
だが暴れている犯罪者にも覚醒者が多く、ゲート攻略に覚醒者を回している余裕もあまりなかった。
他の国にも援助は要請しているものの、隣接国にもすでに影響は波及していて動きは鈍い。
そこで目をつけられた覚醒者がいる。
トモナリたちを始めとした交流戦参加者たちだ。
ある程度の実力がありながらも、現在出国できずに暇である覚醒者なのである。
イベントに呼ばれた賓客なのでどうなのかという意見もあったが、背に腹はかえられなくて協力を要請することとなった。
流石に犯罪者の相手はさせられない。
そこで協力してくれる国にはゲートの攻略を任せることにしたのだ。
日本も当然協力を要請された。
部長たるトモナリがその場にいなかったので一度話を持ち帰り、みんなで話し合って最終的には協力することにした。
こんな時こそ助け合いは必要。
早く帰るため、一般の人たちの安全のためにも協力し合うのは大切である。
ただそれでも巻き込まれた感覚は抜け切らない。
「どうせ暇してるんだからいいだろ」
「暇持て余してゲート攻略とか骨の髄まで覚醒者かよ」
「骨の髄まで覚醒者だよ」
トモナリの返事にユウトは呆れ返った顔をする。
暇ならゲート攻略している方がいいなんて、さすがそこまでユウトには言えない。
「上には上がいる……学んだからな。次はないけど……次があるならその時は今度は俺が勝つぐらいのつもりだ」
それなりに強くなってきたつもりだが、レベル差のある相手にはまだ敵わない。
ドゥウェルとの戦いでまだまだ強い相手がいるのだと改めて思い知った。
セイクリッズによってドゥウェルは倒された。
もう二度と戦うことはないが、次戦うことがあればもう情けない戦いはしない。
「……あんまり走りすぎんなよ? 俺が追いつけなくなるだろ」
ユウトは小さくため息をつく。
トモナリは常に前を見ている。
隣に立っていたはずなのに、いつの間にかトモナリは先を行き、その背中を見ている気分になっていた。
「必死に食らいついてこいよ」
「チェッ、楽させてくんないな」
それでもユウトはトモナリの背を追いかけることを諦めるつもりはなかった。
たとえ一人でもトモナリは戦い続けるだろう。
でも自分をここまで引き上げて強くしてくれて、時には後ろを振り返って待っていてくれる親友を一人にするつもりはなかった。
辛い道のりでもできるだけ追いかけてやろうとユウトは思っている。
それはみんなも同じだった。
トモナリが先にいるから走り続けられるというところはある。
小さいが確実な影響をみんな受けているのだ。
「あと少しで町につく。そこを拠点としてゲートの攻略を行なっていく」
バス前方に座っていたマサヨシが立ち上がって後ろを振り返る。
見えてきたやや牧歌的な田舎町が、今回ゲートから一番近い場所だった。
脱獄騒ぎの煽りもあまり受けずに治安的にも安定している。
町の近くには大きな牧場や農場が点在していて、いかにも海外の田舎町という雰囲気があった。
ホテルに荷物を置いて、早速ゲートに向かう。
「今日は攻略せずにゲートの調査を行うぞ」
これまで攻略してきたゲートは、事前に調査されていたものがほとんどであった。
しかし今回挑むゲートはゲートの出現が確認されてから、まだ調査の手も入っていない。
緊急性が高ければ未調査ゲートをそのまま攻略することもある。
普通はリスクを避けるために事前に軽く調査しておくこと必要なので、今回もまず調査から始めるのだ。
トモナリが聞いたことある例だと、入った瞬間に水の中に投げ出されるゲートなんてものもあった。
ゲート周りはモンスターが出てくる可能性がほとんどないとはいっても、モンスター以外の危険性がゼロであるとは言えない。
調査でゲートの中の環境やモンスターが分かれば攻略のリスクを下げることができる。
幸いにして、今回のゲートはまだ見つかってから時間もそう経っていない。
すぐさまブレイクを起こすゲートではないのでしっかりと攻略していく。
「‘ブラウンと申します。よろしくお願いします’」
目的のゲートは広い農場の一角に出現していた。
到着するとすでにゲート前には人がいた。
覚醒者協会の職員が二人いて、攻略のサポートや状況の確認などのために来てくれていた。
「‘ではこれからゲートの調査を開始しますのでお手伝いお願いします’」
ブラウンたちは、インベントリから大きなハードケースを取り出した。
開けるとその中にはドローンなどの調査用機材が入っていた。
安全に調べるために人ではなくドローンを送り込んで調査するのだ。
バスに揺られ、日本から持ってきていたお菓子を食べながらミズキは小さくため息をついた。
「まあしょうがないけどさ」
人手が足りない。
これはもうどうしようもないことである。
あちこちで脱獄した覚醒者やそれに触発された犯罪が多発していて、どこも手が足りていないのだ。
だが人間が問題を起こしている間もゲートは待ってくれたりなんかしない。
新たなゲートは出現するし、放置されればブレイクを起こす可能性がある。
だが暴れている犯罪者にも覚醒者が多く、ゲート攻略に覚醒者を回している余裕もあまりなかった。
他の国にも援助は要請しているものの、隣接国にもすでに影響は波及していて動きは鈍い。
そこで目をつけられた覚醒者がいる。
トモナリたちを始めとした交流戦参加者たちだ。
ある程度の実力がありながらも、現在出国できずに暇である覚醒者なのである。
イベントに呼ばれた賓客なのでどうなのかという意見もあったが、背に腹はかえられなくて協力を要請することとなった。
流石に犯罪者の相手はさせられない。
そこで協力してくれる国にはゲートの攻略を任せることにしたのだ。
日本も当然協力を要請された。
部長たるトモナリがその場にいなかったので一度話を持ち帰り、みんなで話し合って最終的には協力することにした。
こんな時こそ助け合いは必要。
早く帰るため、一般の人たちの安全のためにも協力し合うのは大切である。
ただそれでも巻き込まれた感覚は抜け切らない。
「どうせ暇してるんだからいいだろ」
「暇持て余してゲート攻略とか骨の髄まで覚醒者かよ」
「骨の髄まで覚醒者だよ」
トモナリの返事にユウトは呆れ返った顔をする。
暇ならゲート攻略している方がいいなんて、さすがそこまでユウトには言えない。
「上には上がいる……学んだからな。次はないけど……次があるならその時は今度は俺が勝つぐらいのつもりだ」
それなりに強くなってきたつもりだが、レベル差のある相手にはまだ敵わない。
ドゥウェルとの戦いでまだまだ強い相手がいるのだと改めて思い知った。
セイクリッズによってドゥウェルは倒された。
もう二度と戦うことはないが、次戦うことがあればもう情けない戦いはしない。
「……あんまり走りすぎんなよ? 俺が追いつけなくなるだろ」
ユウトは小さくため息をつく。
トモナリは常に前を見ている。
隣に立っていたはずなのに、いつの間にかトモナリは先を行き、その背中を見ている気分になっていた。
「必死に食らいついてこいよ」
「チェッ、楽させてくんないな」
それでもユウトはトモナリの背を追いかけることを諦めるつもりはなかった。
たとえ一人でもトモナリは戦い続けるだろう。
でも自分をここまで引き上げて強くしてくれて、時には後ろを振り返って待っていてくれる親友を一人にするつもりはなかった。
辛い道のりでもできるだけ追いかけてやろうとユウトは思っている。
それはみんなも同じだった。
トモナリが先にいるから走り続けられるというところはある。
小さいが確実な影響をみんな受けているのだ。
「あと少しで町につく。そこを拠点としてゲートの攻略を行なっていく」
バス前方に座っていたマサヨシが立ち上がって後ろを振り返る。
見えてきたやや牧歌的な田舎町が、今回ゲートから一番近い場所だった。
脱獄騒ぎの煽りもあまり受けずに治安的にも安定している。
町の近くには大きな牧場や農場が点在していて、いかにも海外の田舎町という雰囲気があった。
ホテルに荷物を置いて、早速ゲートに向かう。
「今日は攻略せずにゲートの調査を行うぞ」
これまで攻略してきたゲートは、事前に調査されていたものがほとんどであった。
しかし今回挑むゲートはゲートの出現が確認されてから、まだ調査の手も入っていない。
緊急性が高ければ未調査ゲートをそのまま攻略することもある。
普通はリスクを避けるために事前に軽く調査しておくこと必要なので、今回もまず調査から始めるのだ。
トモナリが聞いたことある例だと、入った瞬間に水の中に投げ出されるゲートなんてものもあった。
ゲート周りはモンスターが出てくる可能性がほとんどないとはいっても、モンスター以外の危険性がゼロであるとは言えない。
調査でゲートの中の環境やモンスターが分かれば攻略のリスクを下げることができる。
幸いにして、今回のゲートはまだ見つかってから時間もそう経っていない。
すぐさまブレイクを起こすゲートではないのでしっかりと攻略していく。
「‘ブラウンと申します。よろしくお願いします’」
目的のゲートは広い農場の一角に出現していた。
到着するとすでにゲート前には人がいた。
覚醒者協会の職員が二人いて、攻略のサポートや状況の確認などのために来てくれていた。
「‘ではこれからゲートの調査を開始しますのでお手伝いお願いします’」
ブラウンたちは、インベントリから大きなハードケースを取り出した。
開けるとその中にはドローンなどの調査用機材が入っていた。
安全に調べるために人ではなくドローンを送り込んで調査するのだ。

