「トモナリ!」
「みんな……?」
激しく戦う音が聞こえる中、トモナリはエリオットに支えられながらスタジアムの廊下をできる限り速く移動していた。
みんなは無事かなと思っていたら、ユウトたちが廊下の向こうから走ってきた。
まだ危険なスタジアムの中である。
なんでここにいるのかとトモナリは驚いてしまう。
「大丈夫?」
「大丈夫……じゃないけど、みんなはなんでここに? なんで逃げてないんだ?」
「お前のこと置いて逃げられるかよ!」
控え室にいた学生覚醒者たちは逃げることが可能だった。
流石のジェームズも目の届かない控え室までは監視しておらず、他の国の子たちはすでにスタジアムを離れていたのである。
しかし日本勢は逃げなかった。
なぜならトモナリがそこにいたからだ。
「馬鹿なことを……俺なんていいから逃げればいいのに……」
「馬鹿なことしてんのあんたでしょ!」
「ええ?」
ミズキに怒られてトモナリは困惑する。
「なんであんなこと戦ってんのよ!」
テレビやネットでの中継は遮断されたが、会場にあったカメラが映していたものは控え室のモニターで見ることができていた。
当然のことながらトモナリがドゥウェルと戦ったのもみんな見ていたのだ。
確かに逃げられる状況で逃げなかったことは馬鹿かもしれない。
しかし確実に勝てないような化け物みたいな相手に挑んでいくのは、もっと馬鹿のすることだ。
「あれは仕方なく……」
「嘘つき。どうせ確率は低いけどなんとかなるとか思ってたんでしょ?」
「うっ……」
すごい早口で図星を突かれた。
「やめてあげなよ。トモナリ君もボロボロだしさ」
コウが困ったような顔をしてミズキを止める。
ミズキの気持ちも分かるけれど、ステージの方では戦いが続いているしまだ安全とは言い切れない。
トモナリも大きなダメージを負っているし、安静にして治療が必要だ。
「むぅ……」
「とりあえずここから逃げよう。カナダの子たちも近く待ってるんだよ」
「‘カナダの奴らもお前のこと待ってるってさ’」
「‘そうか……それなら嬉しいね’」
「おおっと……」
大きな爆発音が聞こえて、足元が揺れた。
ジェームズの仕業だろうとトモナリは少し眉をひそめる。
ドゥウェルは手負いだが、ジェームズは万全の状態である。
覚醒者としてもかなり強く、倒せるのか不安になる。
それでもトモナリにできることなどない。
ドゥウェルの方は腕を一本持っていった。
手負いの獣という危険性はあるけれども、戦力的に大きくダメージを受けたことには間違いない。
「無事でよかった」
「ああ、俺もそう思うよ」
「ヒカリちゃんは私が持つね」
「くっ……仕方ないのだ……」
ヒカリのことはサーシャが抱きかかえる。
本当は疲れてるしトモナリのそばで、トモナリ成分を補充していたいと思うのだけど、トモナリも疲れていることが分かっているのでわがままは言わない。
トモナリはユウトとマコトが肩を抱えて支えてくれる。
「にしても……よくあんなのから生き延びたな」
「俺も何回がダメかと思ったよ。運が良かったし……ヒカリのおかげでもあるよ」
「あれね、僕もびっくりしたよ。いきなりヒカリ君、おっきくなったから」
ヒカリがちょっとビッグになった姿をみんなも見ていた。
あっという間の出来事だったが、改めて考えるとすごいことだったとマコトは思う。
「俺も初めてだったから驚いたよ」
「あれだな。トモナリのピンチに覚醒したってやつだな」
「まあ、そんな感じだろうな」
それだけヒカリの自分のことを大切に思ってくれている。
ピンチに陥ってしまったことは反省すべきだが、トモナリは思いの強さを感じたようで嬉しさもあった。
「‘あちらは……決勝を戦っていた日本とカナダの覚醒者が外に出てきました! これで中にいる人の避難は終わったと見られています!’」
「……なんだ?」
外に出てみると規制線が張られ、カメラを構えたメディアなんかも押しかけていた。
「みんなこっちだ!」
「学長!」
「全く……無茶なことをしおって……」
「すいません……」
「説教は後だ。アイゼンは病院に。みんなはバスに乗ってホテルに移動だ」
慌ただしく言われた通りに動く。
トモナリとヒカリは救急車に乗せられて病院に運ばれたのだった。
ーーーーー
「ニュースは混沌としてるな」
トモナリの左腕や肋骨にはヒビが入っていた。
戦いのアドレナリンが出ているせいで気づかなかったけれど、思っていたよりも中身もボロボロだった。
ただそれだけで済んだとも言えるのかもしれない。
アウェイクンバトルの会場があるということで近くには最新設備、ヒーラーまで揃えた病院があって、トモナリの怪我もヒーラーによってあっという間に治してもらえた。
それでも一応入院させられたトモナリは部屋にあったテレビを見ていた。
テレビにおける報道は混迷を極めている。
アウェイクンバトルのスタジアムのことだけでなく、各地で犯罪者が暴れている。
刑務所はやはりレベルファイブのドゥウェルたちがこっそり逃げ出したのではなく、破壊して脱獄していた。
そのためにレベルファイブ以下の犯罪者たちも一斉に逃げているのだ。
犯罪者の被害や追跡状況などニュースでは様々な情報が流れていた。
「みんな……?」
激しく戦う音が聞こえる中、トモナリはエリオットに支えられながらスタジアムの廊下をできる限り速く移動していた。
みんなは無事かなと思っていたら、ユウトたちが廊下の向こうから走ってきた。
まだ危険なスタジアムの中である。
なんでここにいるのかとトモナリは驚いてしまう。
「大丈夫?」
「大丈夫……じゃないけど、みんなはなんでここに? なんで逃げてないんだ?」
「お前のこと置いて逃げられるかよ!」
控え室にいた学生覚醒者たちは逃げることが可能だった。
流石のジェームズも目の届かない控え室までは監視しておらず、他の国の子たちはすでにスタジアムを離れていたのである。
しかし日本勢は逃げなかった。
なぜならトモナリがそこにいたからだ。
「馬鹿なことを……俺なんていいから逃げればいいのに……」
「馬鹿なことしてんのあんたでしょ!」
「ええ?」
ミズキに怒られてトモナリは困惑する。
「なんであんなこと戦ってんのよ!」
テレビやネットでの中継は遮断されたが、会場にあったカメラが映していたものは控え室のモニターで見ることができていた。
当然のことながらトモナリがドゥウェルと戦ったのもみんな見ていたのだ。
確かに逃げられる状況で逃げなかったことは馬鹿かもしれない。
しかし確実に勝てないような化け物みたいな相手に挑んでいくのは、もっと馬鹿のすることだ。
「あれは仕方なく……」
「嘘つき。どうせ確率は低いけどなんとかなるとか思ってたんでしょ?」
「うっ……」
すごい早口で図星を突かれた。
「やめてあげなよ。トモナリ君もボロボロだしさ」
コウが困ったような顔をしてミズキを止める。
ミズキの気持ちも分かるけれど、ステージの方では戦いが続いているしまだ安全とは言い切れない。
トモナリも大きなダメージを負っているし、安静にして治療が必要だ。
「むぅ……」
「とりあえずここから逃げよう。カナダの子たちも近く待ってるんだよ」
「‘カナダの奴らもお前のこと待ってるってさ’」
「‘そうか……それなら嬉しいね’」
「おおっと……」
大きな爆発音が聞こえて、足元が揺れた。
ジェームズの仕業だろうとトモナリは少し眉をひそめる。
ドゥウェルは手負いだが、ジェームズは万全の状態である。
覚醒者としてもかなり強く、倒せるのか不安になる。
それでもトモナリにできることなどない。
ドゥウェルの方は腕を一本持っていった。
手負いの獣という危険性はあるけれども、戦力的に大きくダメージを受けたことには間違いない。
「無事でよかった」
「ああ、俺もそう思うよ」
「ヒカリちゃんは私が持つね」
「くっ……仕方ないのだ……」
ヒカリのことはサーシャが抱きかかえる。
本当は疲れてるしトモナリのそばで、トモナリ成分を補充していたいと思うのだけど、トモナリも疲れていることが分かっているのでわがままは言わない。
トモナリはユウトとマコトが肩を抱えて支えてくれる。
「にしても……よくあんなのから生き延びたな」
「俺も何回がダメかと思ったよ。運が良かったし……ヒカリのおかげでもあるよ」
「あれね、僕もびっくりしたよ。いきなりヒカリ君、おっきくなったから」
ヒカリがちょっとビッグになった姿をみんなも見ていた。
あっという間の出来事だったが、改めて考えるとすごいことだったとマコトは思う。
「俺も初めてだったから驚いたよ」
「あれだな。トモナリのピンチに覚醒したってやつだな」
「まあ、そんな感じだろうな」
それだけヒカリの自分のことを大切に思ってくれている。
ピンチに陥ってしまったことは反省すべきだが、トモナリは思いの強さを感じたようで嬉しさもあった。
「‘あちらは……決勝を戦っていた日本とカナダの覚醒者が外に出てきました! これで中にいる人の避難は終わったと見られています!’」
「……なんだ?」
外に出てみると規制線が張られ、カメラを構えたメディアなんかも押しかけていた。
「みんなこっちだ!」
「学長!」
「全く……無茶なことをしおって……」
「すいません……」
「説教は後だ。アイゼンは病院に。みんなはバスに乗ってホテルに移動だ」
慌ただしく言われた通りに動く。
トモナリとヒカリは救急車に乗せられて病院に運ばれたのだった。
ーーーーー
「ニュースは混沌としてるな」
トモナリの左腕や肋骨にはヒビが入っていた。
戦いのアドレナリンが出ているせいで気づかなかったけれど、思っていたよりも中身もボロボロだった。
ただそれだけで済んだとも言えるのかもしれない。
アウェイクンバトルの会場があるということで近くには最新設備、ヒーラーまで揃えた病院があって、トモナリの怪我もヒーラーによってあっという間に治してもらえた。
それでも一応入院させられたトモナリは部屋にあったテレビを見ていた。
テレビにおける報道は混迷を極めている。
アウェイクンバトルのスタジアムのことだけでなく、各地で犯罪者が暴れている。
刑務所はやはりレベルファイブのドゥウェルたちがこっそり逃げ出したのではなく、破壊して脱獄していた。
そのためにレベルファイブ以下の犯罪者たちも一斉に逃げているのだ。
犯罪者の被害や追跡状況などニュースでは様々な情報が流れていた。

