「くっ……」
「‘若い才能を潰してしまうのは感心しないわね’」
もはや生身で耐えるしかない。
魔石から得られた少ない魔力を体にみなぎらせる。
耐えられるような自信もないが、ただ攻撃を受けて死ぬつもりもなかった。
それでもドゥウェルが迫り、死を覚悟をした。
しかし、ドゥウェルの一撃はトモナリ当たらなかった。
「‘よくここまで持ち堪えたわね’」
ドゥウェルがトモナリから外したのではない。
横から槍が伸びてきてドゥウェルの攻撃の軌道を逸らしたのである。
「‘セイクリッズ……!’」
「‘遅れてごめんなさい。色々と忙しくて’」
槍を辿っていくと軽くウェーブのかかった金髪に透き通るような青い瞳、真っ白な鎧、同じく真っ白な盾と槍を持った女性がいた。
「‘随分と余裕の登場だな!’」
ドゥウェルはバカにしたような笑みを女性に向ける。
「‘そうですね……色々なことが起きていたとはいえ、ここに来ることが遅れたことは否めません。ですが……’」
女性はドゥウェルの姿を見る。
「‘あなたの方は随分と余裕がなさそうですね’」
体が自慢のドゥウェルが片腕を失っている。
痛々しい光景であると言わざるを得ない。
「‘お前らごときの相手は片腕で十分ということだ’」
ドゥウェルは額に青筋を立てる。
「‘あら、そうですか。手加減いただけるなんて光栄ですね’」
女性がニコリと笑って、ドゥウェルは怒りに顔をひくつかせる。
「‘No.3……彼女が来ましたか’」
ジェームズはずっと様子を見ていた。
ドゥウェルの腕が噛みちぎられても、ただただ様子を眺めていただけだった。
「‘彼女だけじゃないよ。僕もいる’」
「‘……No.7か’」
片膝を抱えて座るジェームズの後ろにも一人の男性が立っていた。
黒い髪に琥珀色の瞳をした男性はニコリとジェームズに笑顔を向ける。
「‘諦めて捕まりませんか?’」
「‘毎日2時間外での運動と晩御飯にステーキとワインを出してくれるなら捕まってもいい’」
「‘なんの冗談を’」
「‘なら捕まるつもりはないな’」
ジェームズは余裕の表情でため息をつく。
「‘元No.7は元気か?’」
「‘あなたに吹き飛ばされた足以外は元気にしていますよ’」
「‘そうか。ならよかった’」
「‘何もよくありませんよ。代わりに僕がNo.7をやらされているんですからね’」
「‘いいではありませんか。ただあなたと会話を長く楽しむつもりはありません。…………なに?’」
パッと手を伸ばしたジェームズは顔をしかめた。
「‘観客席を爆破するつもりなのでしょう? あなたの手口は分かっていますよ。もうすでに観客席とここの魔力は遮断してあります’」
ジェームズが離れたところを爆破するというのはもう知られている手段だ。
何回も派手に爆破が起きていて、他にも爆発の可能性があることを男もわかっていた。
ジェームズを捕える上で、観客の命を握られたままでは非常に不利である。
そこで男は魔力を遮断するという手段を用いた。
本来、観客席にはステージの戦いの被害が及ばないようにバリアが張ってある。
それを利用して、バリアとしての防御力を失わせる代わりにステージと観客席の魔力を遮断してしまったのだ。
「‘もう一度聞きます。大人しく捕まってくれますか?’」
「‘ステーキとワインだ’」
「‘残念ながら僕はビール派です’」
「‘……あんたとは意見が合わないようだ’」
ジェームズと男は睨み合う。
「……なんだ?」
急に現れた男女がドゥウェルとジェームズの相手をし始めた。
「うっ……」
「‘アイゼン君、大丈夫かい?’」
気が抜けてふらついたトモナリのことをエリオットが支える。
「‘助かったよ。彼女たちは……’」
「‘セイクリッズだ。彼女はNo.3、オードリー・メルヒンガー。そして彼はNo.7、ケニック・スティーガーだよ’」
「‘彼らが……セイクリッズ’」
オードリーの方はいかにも正義の使者といった雰囲気がある。
真っ白な騎士のようなオードリーはドゥウェルの一撃を縦で受け止めている。
ケニックの方でも爆発が起きていて、ジェームズとの戦いが始まっていた。
観客席ではその間に観客も避難していて、事態が急速に動いている。
「‘助かった……のか’」
「‘ああ、君たちが時間を稼いでくれたおかげだよ’」
「‘俺じゃないさ。ヒカリのおかげだな’」
「へへ……僕がやったのだぁ」
トモナリに褒められてヒカリはヘラっと笑う。
「‘君たち! こっちに’」
激しい戦いを前にして、呆然としていると男性が一人、入場口からトモナリたちに声をかけた。
「‘僕が支えるよ。何もできなかったんだ、これぐらいさせてくれ’」
エリオットはトモナリと違って一歩も動けなかった。
怖かった。
抵抗して無惨に殺されるかと思うと体が動かなかったのである。
トモナリの勇気には敵わないと認めざるを得なかった。
「‘あの状況じゃ仕方ないさ。無謀と勇気は違うからな。俺のは……正直無謀な賭けだった’」
エリオットに肩を支えられてトモナリはステージから逃げ出した。
なんの確証もないが、やるしかなかった。
あれは勇気ではなく、無謀な行いだったと言わざるを得ない。
「‘無謀……僕から見た十分に勇気さ。それに……あいつはそのせいでドラゴンに怒りに触れて、腕を失った’」
「‘ドラゴンの怒り……確かにそうだな’」
ヒカリが大きくなったのは意外だった。
しかしそのおかげでトモナリは助かった。
「まあ、なんとかなったな……」
「‘若い才能を潰してしまうのは感心しないわね’」
もはや生身で耐えるしかない。
魔石から得られた少ない魔力を体にみなぎらせる。
耐えられるような自信もないが、ただ攻撃を受けて死ぬつもりもなかった。
それでもドゥウェルが迫り、死を覚悟をした。
しかし、ドゥウェルの一撃はトモナリ当たらなかった。
「‘よくここまで持ち堪えたわね’」
ドゥウェルがトモナリから外したのではない。
横から槍が伸びてきてドゥウェルの攻撃の軌道を逸らしたのである。
「‘セイクリッズ……!’」
「‘遅れてごめんなさい。色々と忙しくて’」
槍を辿っていくと軽くウェーブのかかった金髪に透き通るような青い瞳、真っ白な鎧、同じく真っ白な盾と槍を持った女性がいた。
「‘随分と余裕の登場だな!’」
ドゥウェルはバカにしたような笑みを女性に向ける。
「‘そうですね……色々なことが起きていたとはいえ、ここに来ることが遅れたことは否めません。ですが……’」
女性はドゥウェルの姿を見る。
「‘あなたの方は随分と余裕がなさそうですね’」
体が自慢のドゥウェルが片腕を失っている。
痛々しい光景であると言わざるを得ない。
「‘お前らごときの相手は片腕で十分ということだ’」
ドゥウェルは額に青筋を立てる。
「‘あら、そうですか。手加減いただけるなんて光栄ですね’」
女性がニコリと笑って、ドゥウェルは怒りに顔をひくつかせる。
「‘No.3……彼女が来ましたか’」
ジェームズはずっと様子を見ていた。
ドゥウェルの腕が噛みちぎられても、ただただ様子を眺めていただけだった。
「‘彼女だけじゃないよ。僕もいる’」
「‘……No.7か’」
片膝を抱えて座るジェームズの後ろにも一人の男性が立っていた。
黒い髪に琥珀色の瞳をした男性はニコリとジェームズに笑顔を向ける。
「‘諦めて捕まりませんか?’」
「‘毎日2時間外での運動と晩御飯にステーキとワインを出してくれるなら捕まってもいい’」
「‘なんの冗談を’」
「‘なら捕まるつもりはないな’」
ジェームズは余裕の表情でため息をつく。
「‘元No.7は元気か?’」
「‘あなたに吹き飛ばされた足以外は元気にしていますよ’」
「‘そうか。ならよかった’」
「‘何もよくありませんよ。代わりに僕がNo.7をやらされているんですからね’」
「‘いいではありませんか。ただあなたと会話を長く楽しむつもりはありません。…………なに?’」
パッと手を伸ばしたジェームズは顔をしかめた。
「‘観客席を爆破するつもりなのでしょう? あなたの手口は分かっていますよ。もうすでに観客席とここの魔力は遮断してあります’」
ジェームズが離れたところを爆破するというのはもう知られている手段だ。
何回も派手に爆破が起きていて、他にも爆発の可能性があることを男もわかっていた。
ジェームズを捕える上で、観客の命を握られたままでは非常に不利である。
そこで男は魔力を遮断するという手段を用いた。
本来、観客席にはステージの戦いの被害が及ばないようにバリアが張ってある。
それを利用して、バリアとしての防御力を失わせる代わりにステージと観客席の魔力を遮断してしまったのだ。
「‘もう一度聞きます。大人しく捕まってくれますか?’」
「‘ステーキとワインだ’」
「‘残念ながら僕はビール派です’」
「‘……あんたとは意見が合わないようだ’」
ジェームズと男は睨み合う。
「……なんだ?」
急に現れた男女がドゥウェルとジェームズの相手をし始めた。
「うっ……」
「‘アイゼン君、大丈夫かい?’」
気が抜けてふらついたトモナリのことをエリオットが支える。
「‘助かったよ。彼女たちは……’」
「‘セイクリッズだ。彼女はNo.3、オードリー・メルヒンガー。そして彼はNo.7、ケニック・スティーガーだよ’」
「‘彼らが……セイクリッズ’」
オードリーの方はいかにも正義の使者といった雰囲気がある。
真っ白な騎士のようなオードリーはドゥウェルの一撃を縦で受け止めている。
ケニックの方でも爆発が起きていて、ジェームズとの戦いが始まっていた。
観客席ではその間に観客も避難していて、事態が急速に動いている。
「‘助かった……のか’」
「‘ああ、君たちが時間を稼いでくれたおかげだよ’」
「‘俺じゃないさ。ヒカリのおかげだな’」
「へへ……僕がやったのだぁ」
トモナリに褒められてヒカリはヘラっと笑う。
「‘君たち! こっちに’」
激しい戦いを前にして、呆然としていると男性が一人、入場口からトモナリたちに声をかけた。
「‘僕が支えるよ。何もできなかったんだ、これぐらいさせてくれ’」
エリオットはトモナリと違って一歩も動けなかった。
怖かった。
抵抗して無惨に殺されるかと思うと体が動かなかったのである。
トモナリの勇気には敵わないと認めざるを得なかった。
「‘あの状況じゃ仕方ないさ。無謀と勇気は違うからな。俺のは……正直無謀な賭けだった’」
エリオットに肩を支えられてトモナリはステージから逃げ出した。
なんの確証もないが、やるしかなかった。
あれは勇気ではなく、無謀な行いだったと言わざるを得ない。
「‘無謀……僕から見た十分に勇気さ。それに……あいつはそのせいでドラゴンに怒りに触れて、腕を失った’」
「‘ドラゴンの怒り……確かにそうだな’」
ヒカリが大きくなったのは意外だった。
しかしそのおかげでトモナリは助かった。
「まあ、なんとかなったな……」

