「‘はっはっはっ! やっぱり外のメシは美味いな!’」
食事をガツガツと食べながらドゥウェルは笑う。
観客席のみんなが恐怖で死にそうな顔をしていることなんか、微塵も気にしていない。
ジェームズも同じく食事をとっている。
しかし二人が油断しているからと逃げ出そうとする人はいない。
「‘ゲェプ……’」
大きなボトルの炭酸飲料を一気に飲み干して、ドゥウェルは豪快にゲップを吐き出す。
「‘さて、どう思う?’」
「‘何が?’」
「‘俺たちの要求は伝えた。だが向こうからの反応はない’」
ドゥウェルは派手な色のカップケーキを食べながら大きなため息をつく。
ポルマへの逃走ルートを用意しろというのが二人の要求であり、アレクサンダーの部下を生かしておいて要求を伝えさせた。
会場は外に中継されているし、本気度は伝わっているはずである。
しかしまだ反応は何もない。
ジェームズはともかく、ドゥウェルの気は非常に短いのだ。
「‘カメラの前で一人か二人殺してやれば動き出すかな?’」
「‘セイクリッズの連中でも集めてるんでしょ’」
血の気が多くて嫌になるとジェームズはため息をついた。
カップケーキに手を伸ばしかけたが、色味が派手すぎてやめた。
「‘あまり力を使いすぎるとセイクリッズの連中が来た時に負けてしまう’」
「‘ああ? 俺があいつらに勝てねぇってのか?’」
「‘一人ならともかく、奴らは複数で攻撃してくる。そう簡単な相手ではないだろう’」
脳みそまで筋肉になると大変であると思いながら、ジェームズは果物を口に運ぶ。
「‘……セイクリッズってなんだ?’」
ステージの上から動くこともできず、トモナリたちはただひたすらに立っているしかできなかった。
だが最初以降はまるで気にされることもない。
大きく動いたり、変に声をかけなけれにば何も興味ないようだ。
ジェームズとドゥウェルの会話の中でセイクリッズという単語がたびたび出てくる。
なんだか二人の敵のような感じで言われているけれど、トモナリはなんのことだか分かっていなかった。
なのでエリオットに聞いてみた。
「‘セイクリッズはヨーロッパを中心に活動している覚醒者ギルドだよ。活動の中心は犯罪者の逮捕だ’」
セイクリッズと呼ばれるギルドは覚醒者による犯罪を取り締まる役割を担っていた。
元はイギリスの覚醒者ギルドであったが、犯罪を追いかけて捕まえるという功績が認められて、ヨーロッパ全域で活動することを許されている。
逮捕権を有していて、ヨーロッパにおける犯罪抑制やヒーローとしての象徴的存在ともなっている。
ジェームズとドゥウェルも、セイクリッズによって逮捕されたという過去があった。
「‘じゃあ……待ってれば助けに来てくれるのかな?’」
「‘可能性はあるけど……ちょっと分からないな’」
「‘どうして?’」
「‘彼らは脱獄してきたって言ったろ?’」
「‘ああ、そうだな’」
「‘きっと他にも脱獄した人はいる。セイクリッズはあまり人が多い集団じゃないから……’」
「‘こっちまで手が回らないかもしれないか’」
希望があると思ったのに、なかなか簡単にはいかない。
ジェームズとドゥウェルだけがこっそりと脱獄してきたならともかく、基本的にそんなことは不可能なはずである。
脱獄してきたというのなら、派手に破壊して飛び出してきた可能性が高い。
となるとセイクリッズも他の脱獄者を追いかけているだろう。
助けが来るにしてもどれぐらいかかるのかは分からないという状況なのである。
「‘一人……’」
「‘えっ?’」
「‘一人だけなら無効化できる’」
だがこのまま手をこまねいていては被害者が増える一方である。
何か策を考えなきゃいけない。
そう思ったトモナリは一つだけ方法を思いついた。
ただそれで拘束できるのは一人だけである。
「‘あの爆発の覚醒者を止めたいな……’」
多分だがジェームズは観客席には魔法の爆弾を仕掛けていると、トモナリは予想していた。
離れた観客席をすぐに爆発させることなんて、かなり難しい。
それなのにジェームズは見えていない出入り口まで簡単に爆破してみせた。
つまりここから魔力を飛ばして爆破しているのではなく、すでに爆発させるためのものを仕込んでいる可能性があるのだ。
仮にジェームズを無効化できれば、観客たちは逃げることができることができるだろう。
ただ問題が一つある。
「‘せめて……二人にならないかい?’」
無効化できるのは一人なのである。
ジェームズが魔力を爆発させるヤバいやつなのは分かっているが、ドゥウェルも簡単な相手ではない。
もうそこらに投げ捨てられたアレクサンダーはぴくりとも動いていなかった。
死んでいるのか生きているのかも分からない。
ただアレクサンダーも一般人ではなく、覚醒者である。
それもトップに相応しくちゃんとした実力の持ち主なのだ。
対してドゥウェルがアレクサンダーを倒したのだろうが、ドゥウェルに怪我のようなものは一切見られない。
アレクサンダーは一方的にドゥウェルにやられてしまったのだ。
仮にアレクサンダーが相手でもトモナリやエリオットは勝てないだろう。
そんなアレクサンダーを無傷で倒すドゥウェルになんて勝てるはずがない。
ドゥウェルをどうにかしてジェームズを無効化しても、ドゥウェルに助け出されてしまうことだろう。
食事をガツガツと食べながらドゥウェルは笑う。
観客席のみんなが恐怖で死にそうな顔をしていることなんか、微塵も気にしていない。
ジェームズも同じく食事をとっている。
しかし二人が油断しているからと逃げ出そうとする人はいない。
「‘ゲェプ……’」
大きなボトルの炭酸飲料を一気に飲み干して、ドゥウェルは豪快にゲップを吐き出す。
「‘さて、どう思う?’」
「‘何が?’」
「‘俺たちの要求は伝えた。だが向こうからの反応はない’」
ドゥウェルは派手な色のカップケーキを食べながら大きなため息をつく。
ポルマへの逃走ルートを用意しろというのが二人の要求であり、アレクサンダーの部下を生かしておいて要求を伝えさせた。
会場は外に中継されているし、本気度は伝わっているはずである。
しかしまだ反応は何もない。
ジェームズはともかく、ドゥウェルの気は非常に短いのだ。
「‘カメラの前で一人か二人殺してやれば動き出すかな?’」
「‘セイクリッズの連中でも集めてるんでしょ’」
血の気が多くて嫌になるとジェームズはため息をついた。
カップケーキに手を伸ばしかけたが、色味が派手すぎてやめた。
「‘あまり力を使いすぎるとセイクリッズの連中が来た時に負けてしまう’」
「‘ああ? 俺があいつらに勝てねぇってのか?’」
「‘一人ならともかく、奴らは複数で攻撃してくる。そう簡単な相手ではないだろう’」
脳みそまで筋肉になると大変であると思いながら、ジェームズは果物を口に運ぶ。
「‘……セイクリッズってなんだ?’」
ステージの上から動くこともできず、トモナリたちはただひたすらに立っているしかできなかった。
だが最初以降はまるで気にされることもない。
大きく動いたり、変に声をかけなけれにば何も興味ないようだ。
ジェームズとドゥウェルの会話の中でセイクリッズという単語がたびたび出てくる。
なんだか二人の敵のような感じで言われているけれど、トモナリはなんのことだか分かっていなかった。
なのでエリオットに聞いてみた。
「‘セイクリッズはヨーロッパを中心に活動している覚醒者ギルドだよ。活動の中心は犯罪者の逮捕だ’」
セイクリッズと呼ばれるギルドは覚醒者による犯罪を取り締まる役割を担っていた。
元はイギリスの覚醒者ギルドであったが、犯罪を追いかけて捕まえるという功績が認められて、ヨーロッパ全域で活動することを許されている。
逮捕権を有していて、ヨーロッパにおける犯罪抑制やヒーローとしての象徴的存在ともなっている。
ジェームズとドゥウェルも、セイクリッズによって逮捕されたという過去があった。
「‘じゃあ……待ってれば助けに来てくれるのかな?’」
「‘可能性はあるけど……ちょっと分からないな’」
「‘どうして?’」
「‘彼らは脱獄してきたって言ったろ?’」
「‘ああ、そうだな’」
「‘きっと他にも脱獄した人はいる。セイクリッズはあまり人が多い集団じゃないから……’」
「‘こっちまで手が回らないかもしれないか’」
希望があると思ったのに、なかなか簡単にはいかない。
ジェームズとドゥウェルだけがこっそりと脱獄してきたならともかく、基本的にそんなことは不可能なはずである。
脱獄してきたというのなら、派手に破壊して飛び出してきた可能性が高い。
となるとセイクリッズも他の脱獄者を追いかけているだろう。
助けが来るにしてもどれぐらいかかるのかは分からないという状況なのである。
「‘一人……’」
「‘えっ?’」
「‘一人だけなら無効化できる’」
だがこのまま手をこまねいていては被害者が増える一方である。
何か策を考えなきゃいけない。
そう思ったトモナリは一つだけ方法を思いついた。
ただそれで拘束できるのは一人だけである。
「‘あの爆発の覚醒者を止めたいな……’」
多分だがジェームズは観客席には魔法の爆弾を仕掛けていると、トモナリは予想していた。
離れた観客席をすぐに爆発させることなんて、かなり難しい。
それなのにジェームズは見えていない出入り口まで簡単に爆破してみせた。
つまりここから魔力を飛ばして爆破しているのではなく、すでに爆発させるためのものを仕込んでいる可能性があるのだ。
仮にジェームズを無効化できれば、観客たちは逃げることができることができるだろう。
ただ問題が一つある。
「‘せめて……二人にならないかい?’」
無効化できるのは一人なのである。
ジェームズが魔力を爆発させるヤバいやつなのは分かっているが、ドゥウェルも簡単な相手ではない。
もうそこらに投げ捨てられたアレクサンダーはぴくりとも動いていなかった。
死んでいるのか生きているのかも分からない。
ただアレクサンダーも一般人ではなく、覚醒者である。
それもトップに相応しくちゃんとした実力の持ち主なのだ。
対してドゥウェルがアレクサンダーを倒したのだろうが、ドゥウェルに怪我のようなものは一切見られない。
アレクサンダーは一方的にドゥウェルにやられてしまったのだ。
仮にアレクサンダーが相手でもトモナリやエリオットは勝てないだろう。
そんなアレクサンダーを無傷で倒すドゥウェルになんて勝てるはずがない。
ドゥウェルをどうにかしてジェームズを無効化しても、ドゥウェルに助け出されてしまうことだろう。

