「‘彼らはドイツにある覚醒者専門の重犯罪者刑務所の受刑者だ’」
「‘ああ、そうか……だから見たことあるんだ’」
少し距離を近づけたエリオットの説明でトモナリも思い出す。
緑のツナギはドイツの重犯罪者刑務所の囚人に与えられる服だった。
「‘しかも……’」
エリオットはジェームズの胸元を見る。
そこには星が五つのシンボル。
「‘星五つ……レベルファイブ。刑務所の中でも罪が重く、危険だとみなされている犯罪者だ’」
刑務所の囚人の中でも、危険度によってランク分けがされている。
レベルワンは比較的罪が軽かったり、能力的にそれほど強くない覚醒者。
レベルが上がるにつれて危険度は高くなり、レベルファイブが最も危険な覚醒者ということになる。
大量虐殺を犯したりした人や能力的に強くて制圧が困難な人が、レベルファイブに分類される。
少なくともレベルは80以上はあるだろう。
「‘この会場にいるすべての人の命は僕の手の中にある’」
「‘ポルマに行きたいなら勝手に行けばいいじゃないか。なぜこんなことをする?’」
「‘行きたいといっていかせてもらえるものでもないでしょう。なんせ僕たちは脱獄してきたんですからね’」
「‘それでもこんなふうに人質を取ることなんて……’」
「‘うるさいな’」
ジェームズが手を振ると観客席で爆発が起こる。
「‘なっ……やめろ!’」
「‘やめるのはあなたの方だ。誰が好きに話していいと言いった?’」
「‘そんなことで……’」
「‘聞き分けがありませんね。観客を全員殺してほしいというのなら最初からそういってください’」
「‘分かった! 黙る! 黙るからやめてくれ!’」
多少の説得を試みたが大失敗だった。
ジェームズは人の命など何とも思っていない。
軽く観客席を爆破させて、歪んだ笑みを浮かべるのだ。
不快だったというより、爆発させるための理由を他人につけさせているような感じである。
何かすればジェームズはまたためらいなく観客席を爆破する。
トモナリは口を閉じるしかなかった。
見た目では普通のおじさんなのに、細目の奥の感情は読めない。
「‘すっかり静かになったな’」
「‘ああ、お前のおかげでね。問題なかったようだな’」
実況席のガラスを叩き割って髭面の男がステージに降りてくる。
手には変わらずアレクサンダーとマイクを持っている。
懲役4600年。
それが髭面の男ドゥウェル・ロベールに課せられている罰だ。
病気がちでいじめられていた痩身の気弱な少年だった男は、今や鋼の肉体を持つ覚醒者となった。
弱い自分を変えたくて体を鍛え始め、そしてドゥウェルは覚醒した。
拳闘士の職業に覚醒しても鍛えることをやめなかったドゥウェルは悪人ではなかったのだが、ある時に自分をいじめていた相手と再会する。
相手も覚醒者になっていた。
そしてまるで昔と変わらぬように接してきたのである。
だがドゥウェルの方が強く、ゲートの中でドゥウェルは相手を助けることとなった。
ただ相手の態度は変わらなかった。
そんな時に思ったのだ。
なぜ力のない奴が偉そうにしているのか、と。
力のあるドゥウェルの方がどう考えても上の立場であり、力のない奴が偉そうにする理由なんてない。
その頃からドゥウェルの態度は尊大になり始めた。
相手はそんなドゥウェルの態度が気に入らずにケンカになったが、ドゥウェルにボコボコにされた。
相手からつっかかってきたので、この時はドゥウェルはなんの罪にも問われずに済んだ。
ドゥウェルは度々問題を起こし始める。
気に入らない相手は力でねじ伏せるようになるのだ。
しかしそれでも他人と衝突することがなければ優秀な覚醒者だった。
けれどもドゥウェルの祖母が亡くなってから、ドゥウェルの歯車は完全に狂う。
優しくて、最後の良心であった祖母がいなくなり、ドゥウェルを止める存在がいなくなった。
落ち込むドゥウェルに対して、祖母のことを揶揄するような言葉を口にした人がいた。
喧嘩っ早く、それでいながらも活躍しているから目こぼしされているドゥウェルが気に食わなかったのだ。
止めるものがなくなったドゥウェルは、怒りのままに相手のことを殴り殺した。
その事件はギルドの中での出来事で隠蔽されたものの、ドゥウェルのタガは完全に外れてしまったのである。
気に入らない相手を殴り殺し、ドゥウェルは逮捕される。
裁判の最中に力があるものの方が上であるという主張をして逃走、ドゥウェルと追いかける覚醒者の戦いが始まる。
多くの犠牲者を出しながらドゥウェルは制圧され、レベルファイブとして刑務所に収容されるたのだった。
ジェームズに比べて懲役は短いが、爆発で多くの人を簡単に殺すことができるのに比べて素手で暴れていただけだから被害者が比較して少ないすぎない。
「‘おい! 誰か飯を持ってこい! 早く持ってこないと観客を爆破するぞ!’」
ドゥウェルがマイクを使って要求を述べる。
誰が動いたらいいのか分からず、一度爆破されてようやくケータリングとして出ていた食事を会場の職員が持ってきたのだった。
「‘ああ、そうか……だから見たことあるんだ’」
少し距離を近づけたエリオットの説明でトモナリも思い出す。
緑のツナギはドイツの重犯罪者刑務所の囚人に与えられる服だった。
「‘しかも……’」
エリオットはジェームズの胸元を見る。
そこには星が五つのシンボル。
「‘星五つ……レベルファイブ。刑務所の中でも罪が重く、危険だとみなされている犯罪者だ’」
刑務所の囚人の中でも、危険度によってランク分けがされている。
レベルワンは比較的罪が軽かったり、能力的にそれほど強くない覚醒者。
レベルが上がるにつれて危険度は高くなり、レベルファイブが最も危険な覚醒者ということになる。
大量虐殺を犯したりした人や能力的に強くて制圧が困難な人が、レベルファイブに分類される。
少なくともレベルは80以上はあるだろう。
「‘この会場にいるすべての人の命は僕の手の中にある’」
「‘ポルマに行きたいなら勝手に行けばいいじゃないか。なぜこんなことをする?’」
「‘行きたいといっていかせてもらえるものでもないでしょう。なんせ僕たちは脱獄してきたんですからね’」
「‘それでもこんなふうに人質を取ることなんて……’」
「‘うるさいな’」
ジェームズが手を振ると観客席で爆発が起こる。
「‘なっ……やめろ!’」
「‘やめるのはあなたの方だ。誰が好きに話していいと言いった?’」
「‘そんなことで……’」
「‘聞き分けがありませんね。観客を全員殺してほしいというのなら最初からそういってください’」
「‘分かった! 黙る! 黙るからやめてくれ!’」
多少の説得を試みたが大失敗だった。
ジェームズは人の命など何とも思っていない。
軽く観客席を爆破させて、歪んだ笑みを浮かべるのだ。
不快だったというより、爆発させるための理由を他人につけさせているような感じである。
何かすればジェームズはまたためらいなく観客席を爆破する。
トモナリは口を閉じるしかなかった。
見た目では普通のおじさんなのに、細目の奥の感情は読めない。
「‘すっかり静かになったな’」
「‘ああ、お前のおかげでね。問題なかったようだな’」
実況席のガラスを叩き割って髭面の男がステージに降りてくる。
手には変わらずアレクサンダーとマイクを持っている。
懲役4600年。
それが髭面の男ドゥウェル・ロベールに課せられている罰だ。
病気がちでいじめられていた痩身の気弱な少年だった男は、今や鋼の肉体を持つ覚醒者となった。
弱い自分を変えたくて体を鍛え始め、そしてドゥウェルは覚醒した。
拳闘士の職業に覚醒しても鍛えることをやめなかったドゥウェルは悪人ではなかったのだが、ある時に自分をいじめていた相手と再会する。
相手も覚醒者になっていた。
そしてまるで昔と変わらぬように接してきたのである。
だがドゥウェルの方が強く、ゲートの中でドゥウェルは相手を助けることとなった。
ただ相手の態度は変わらなかった。
そんな時に思ったのだ。
なぜ力のない奴が偉そうにしているのか、と。
力のあるドゥウェルの方がどう考えても上の立場であり、力のない奴が偉そうにする理由なんてない。
その頃からドゥウェルの態度は尊大になり始めた。
相手はそんなドゥウェルの態度が気に入らずにケンカになったが、ドゥウェルにボコボコにされた。
相手からつっかかってきたので、この時はドゥウェルはなんの罪にも問われずに済んだ。
ドゥウェルは度々問題を起こし始める。
気に入らない相手は力でねじ伏せるようになるのだ。
しかしそれでも他人と衝突することがなければ優秀な覚醒者だった。
けれどもドゥウェルの祖母が亡くなってから、ドゥウェルの歯車は完全に狂う。
優しくて、最後の良心であった祖母がいなくなり、ドゥウェルを止める存在がいなくなった。
落ち込むドゥウェルに対して、祖母のことを揶揄するような言葉を口にした人がいた。
喧嘩っ早く、それでいながらも活躍しているから目こぼしされているドゥウェルが気に食わなかったのだ。
止めるものがなくなったドゥウェルは、怒りのままに相手のことを殴り殺した。
その事件はギルドの中での出来事で隠蔽されたものの、ドゥウェルのタガは完全に外れてしまったのである。
気に入らない相手を殴り殺し、ドゥウェルは逮捕される。
裁判の最中に力があるものの方が上であるという主張をして逃走、ドゥウェルと追いかける覚醒者の戦いが始まる。
多くの犠牲者を出しながらドゥウェルは制圧され、レベルファイブとして刑務所に収容されるたのだった。
ジェームズに比べて懲役は短いが、爆発で多くの人を簡単に殺すことができるのに比べて素手で暴れていただけだから被害者が比較して少ないすぎない。
「‘おい! 誰か飯を持ってこい! 早く持ってこないと観客を爆破するぞ!’」
ドゥウェルがマイクを使って要求を述べる。
誰が動いたらいいのか分からず、一度爆破されてようやくケータリングとして出ていた食事を会場の職員が持ってきたのだった。

