「まだまだぁ!」
ミヤマエは体を大きくねじって力を溜め、大きく剣を振る。
剣から放たれた炎と冷気が渦を巻いて一つの小さな旋風となる。
「‘……負けない! 昇風撃!’」
ドイツの女の子もスキルを使ってミヤマエに対抗しようとする。
剣から吹き上がる風が生み出されて、ミヤマエの炎と氷の旋風とぶつかる。
渦巻く旋風が押されて一瞬歪む。
「いけぇー!」
「‘……なっ’」
再び旋風が吹き上げる風を押し返し、ドイツの女の子に迫った。
「‘きゃああっ!’」
ドイツの女の子が旋風に巻き込まれて吹き飛ぶ。
魔道具が限界を迎えて、ガラスが割れるような音が響いて保護している魔法が破壊されてしまった。
「っしゃあ!」
「‘決勝戦、先鋒同士の戦いは日本が勝利をもぎ取りました!’」
片手を突き上げて勝利を喜ぶミヤマエだけど、歓声は少ない。
やはりドイツを応援している人が多いようである。
勝ち残りとなるのでミヤマエの次の試合は一つ年上の相手となる。
しかし初戦で全力を尽くしたミヤマエはあっさりと負けてしまった。
「んじゃ、俺がいこーか」
次鋒として出たのはユウトである。
「ユウト、頑張れよ」
「お前みたいに残り全部勝ってきてやるよ」
ニッと笑ってユウトはミヤマエと入れ替わりでステージに上がる。
ユウトの職業は戦士である。
言ってしまえば可もなく不可もない普通の職業であり、希少な職業ではない。
覚醒者を集めれば、戦士の職業で被ってしまう人が何人か出ることだろう。
しかしそれでもユウトは腐ることなく前を向いていた。
ぶつくさ文句を言い、やりたくないなんて言いながらも、誰よりも真面目にトレーニングに打ち込んだ。
本当に血が滲むほどにユウトが努力して、みんなに置いていかれないようにしていることをトモナリは知っている。
一本の剣。
それがユウトの武器だ。
特徴だけ取り出せば他の人と大差はないが、ユウトはそれでいいと思っている。
「一本の剣を極め、一本の剣に至る」
もっと特殊な武器を使うことも考えたことがある。
けれどトモナリにそれを止められた。
愚直でもいいから剣を極めろと言われた。
そして剣に至れとも言われた。
剣に至る。
このことがどんなことなのか分からないが、お前はそれでいいんだというトモナリの言葉はユウトの心に残っている。
「戦士なんて職業クソ喰らえと思ってたけどさ……こんなところまで来られるんだな」
ちょっと初期の能力値が高かったから特進クラスに選ばれた。
入学時のやる気もあったし、そんなところから課外活動部にも誘われた。
でもトモナリを始めとして周りのみんなは希少な職業を持っていて、良いスキルを得ている。
ふとした瞬間に劣等感に苛まれることもあった。
でも今はそんな劣等感はユウトの中にない。
トモナリが認めてくれたから。
「最強にはなれないかもしれないけど、最高にはなれる。トモナリはなんだかもっと先を見てて……きっと最高の戦士がそばに必要になる」
周りが全てドイツを応援していようとも関係ない。
志を共にする仲間が応援してくれているならこれほど心強いことはないのだから。
「おぉ……でっか」
対戦相手はボディービルダーのようなムキムキの体をした男だった。
「‘日本の次鋒は職業戦士のミタカユウト! ここまでの試合では確実に勝利をもぎ取るような戦いを見せてくれています。対する相手はここまで屈強な肉体で場を沸かしてくれた狂戦士イルブン!’」
「‘はっ! 戦士か。つまらない職業だな!’」
ユウトはここまでで目立った活躍をしていない。
しかし連勝はしないというだけで確実に一勝をとってきた。
それはちょっと手を抜いているというところもあった。
団体戦なのだからあまり一人が負担をしすぎることも良くはない。
イルブンはユウトの職業を聞いて、思わずニヤリと笑う。
「何言ってんのかわかんねぇけど……俺のこと舐めてるな? トモナリは言ってたぜ。相手の実力が分からないような奴は馬鹿だってな」
言ってしまえばユウトは実力を隠してきた。
全力を出せば二勝三勝できたような場面もあった。
他のみんななら勝てそうだからと一勝に留めていた。
「‘俺は狂戦士だ! ただの戦士とは違う! 俺の力で日本を叩き潰してやるよ!’」
イルブンは自身の武器である斧を振り下ろす。
戦士のステータス的な伸びでいけば力がよく伸びるだろう。
ただその人の中で伸びやすいというだけで、基本的に戦士のステータスの伸びは平均的である。
対して狂戦士は普通よりは珍しめな職業になる。
かなり力に偏った職業であり、ステータスも力がよく伸びるのだ。
スキルもデメリットがありながらも力を強化するようなものが得られやすい。
同じようにレベルアップしてきたとしたら、戦士と狂戦士では狂戦士の方が力は強くなる。
まさしく力の差を見せつけようとイルブンはしていたのだった。
「‘なんだと……!’」
「へっ、こんなもんか?」
ユウトは逃げもせず、正面からイルブンの斧を受け止めた。
イルブンはそのまま押し切ってやろうと力を込めるけれど、斧は動かない。
ミヤマエは体を大きくねじって力を溜め、大きく剣を振る。
剣から放たれた炎と冷気が渦を巻いて一つの小さな旋風となる。
「‘……負けない! 昇風撃!’」
ドイツの女の子もスキルを使ってミヤマエに対抗しようとする。
剣から吹き上がる風が生み出されて、ミヤマエの炎と氷の旋風とぶつかる。
渦巻く旋風が押されて一瞬歪む。
「いけぇー!」
「‘……なっ’」
再び旋風が吹き上げる風を押し返し、ドイツの女の子に迫った。
「‘きゃああっ!’」
ドイツの女の子が旋風に巻き込まれて吹き飛ぶ。
魔道具が限界を迎えて、ガラスが割れるような音が響いて保護している魔法が破壊されてしまった。
「っしゃあ!」
「‘決勝戦、先鋒同士の戦いは日本が勝利をもぎ取りました!’」
片手を突き上げて勝利を喜ぶミヤマエだけど、歓声は少ない。
やはりドイツを応援している人が多いようである。
勝ち残りとなるのでミヤマエの次の試合は一つ年上の相手となる。
しかし初戦で全力を尽くしたミヤマエはあっさりと負けてしまった。
「んじゃ、俺がいこーか」
次鋒として出たのはユウトである。
「ユウト、頑張れよ」
「お前みたいに残り全部勝ってきてやるよ」
ニッと笑ってユウトはミヤマエと入れ替わりでステージに上がる。
ユウトの職業は戦士である。
言ってしまえば可もなく不可もない普通の職業であり、希少な職業ではない。
覚醒者を集めれば、戦士の職業で被ってしまう人が何人か出ることだろう。
しかしそれでもユウトは腐ることなく前を向いていた。
ぶつくさ文句を言い、やりたくないなんて言いながらも、誰よりも真面目にトレーニングに打ち込んだ。
本当に血が滲むほどにユウトが努力して、みんなに置いていかれないようにしていることをトモナリは知っている。
一本の剣。
それがユウトの武器だ。
特徴だけ取り出せば他の人と大差はないが、ユウトはそれでいいと思っている。
「一本の剣を極め、一本の剣に至る」
もっと特殊な武器を使うことも考えたことがある。
けれどトモナリにそれを止められた。
愚直でもいいから剣を極めろと言われた。
そして剣に至れとも言われた。
剣に至る。
このことがどんなことなのか分からないが、お前はそれでいいんだというトモナリの言葉はユウトの心に残っている。
「戦士なんて職業クソ喰らえと思ってたけどさ……こんなところまで来られるんだな」
ちょっと初期の能力値が高かったから特進クラスに選ばれた。
入学時のやる気もあったし、そんなところから課外活動部にも誘われた。
でもトモナリを始めとして周りのみんなは希少な職業を持っていて、良いスキルを得ている。
ふとした瞬間に劣等感に苛まれることもあった。
でも今はそんな劣等感はユウトの中にない。
トモナリが認めてくれたから。
「最強にはなれないかもしれないけど、最高にはなれる。トモナリはなんだかもっと先を見てて……きっと最高の戦士がそばに必要になる」
周りが全てドイツを応援していようとも関係ない。
志を共にする仲間が応援してくれているならこれほど心強いことはないのだから。
「おぉ……でっか」
対戦相手はボディービルダーのようなムキムキの体をした男だった。
「‘日本の次鋒は職業戦士のミタカユウト! ここまでの試合では確実に勝利をもぎ取るような戦いを見せてくれています。対する相手はここまで屈強な肉体で場を沸かしてくれた狂戦士イルブン!’」
「‘はっ! 戦士か。つまらない職業だな!’」
ユウトはここまでで目立った活躍をしていない。
しかし連勝はしないというだけで確実に一勝をとってきた。
それはちょっと手を抜いているというところもあった。
団体戦なのだからあまり一人が負担をしすぎることも良くはない。
イルブンはユウトの職業を聞いて、思わずニヤリと笑う。
「何言ってんのかわかんねぇけど……俺のこと舐めてるな? トモナリは言ってたぜ。相手の実力が分からないような奴は馬鹿だってな」
言ってしまえばユウトは実力を隠してきた。
全力を出せば二勝三勝できたような場面もあった。
他のみんななら勝てそうだからと一勝に留めていた。
「‘俺は狂戦士だ! ただの戦士とは違う! 俺の力で日本を叩き潰してやるよ!’」
イルブンは自身の武器である斧を振り下ろす。
戦士のステータス的な伸びでいけば力がよく伸びるだろう。
ただその人の中で伸びやすいというだけで、基本的に戦士のステータスの伸びは平均的である。
対して狂戦士は普通よりは珍しめな職業になる。
かなり力に偏った職業であり、ステータスも力がよく伸びるのだ。
スキルもデメリットがありながらも力を強化するようなものが得られやすい。
同じようにレベルアップしてきたとしたら、戦士と狂戦士では狂戦士の方が力は強くなる。
まさしく力の差を見せつけようとイルブンはしていたのだった。
「‘なんだと……!’」
「へっ、こんなもんか?」
ユウトは逃げもせず、正面からイルブンの斧を受け止めた。
イルブンはそのまま押し切ってやろうと力を込めるけれど、斧は動かない。

