「一体なんの変化があったんですか?」
くじ引きを終えて、控え室に戻った。
去年まではお客を入れたり中継したりと興行的なことを頑なにやってこなかった。
なのに、どうして今年はこのようなことをやり始めたのか謎である。
マサヨシなら何か知っているかもしれないと、トモナリは訊ねてみた。
「……人が代わったのだ」
「人?」
「開催国が主催として交流戦を取り仕切るが、どこが開催国なんかを決めていると思う?」
「……分かりません」
「そうしたことを決める運営委員会のようなものがあるのだ。メンバーはアメリカの覚醒者を始めとして、十名ほど。しかし去年の事件がアメリカで起きたためにアメリカの役員が減り、別の人が入ったのだ。そのために影響力が少なくなった」
「アメリカは興行化に反対だったんですか?」
「その通りだ」
興行化したいヨーロッパ諸国が主催となり、興行化に対して運営側も容認の姿勢を示した。
もはや止める人はいなかったのである。
「ただ実際にこんなふうになっているとは……俺も直前に聞かされて知ったのだ」
マサヨシは深いため息をつく。
観客がいるようなことを事前に伝えられればよかったのだけど、マサヨシもこんなことになっているのは知らなかったのだ。
生徒たちのことを中継するのに難色を示すと分かっていたからかもしれない。
「まあ、もうここまできた以上は戦うしかないですけどね」
一応プライドもかかっている。
事前に出場辞退するならまだしも、ここまで来ておいて観客がいるから辞めますとはいかない。
トモナリ一人がバカにされるだけならともかく、今いるメンバーや後の日本も何かを言われるかもしれない。
トモナリはそんなこと気にしないが、今後に影響するような判断は避けたい。
「どうせなら世界に知らしめてやりましょうか」
顔が知られるリスクはあるけれど、戦いにおいて手を抜くつもりはない。
トモナリもだいぶ力をつけてきたので、そろそろさらに先のことを考える時が来ていた。
有名になることのデメリットもあるけれど、何かの活動をしていく上で知名度というものがあれば話がスムーズになることもある。
「去年こそ優勝しましたけど、やっぱりその実力を疑う人は多いですもんね」
日本が団体戦で優勝した結果総合的にも優勝扱いされたが、それは個人戦がないこともあるし、中国のメイリンの棄権などの要素もある。
それなりには強かったのだろう。
しかし日本が実力のみで優勝したのだと言えるかは疑問符がつく。
優勝国として警戒はされているものの、今年の優勝候補ではない。
そんな評価を公衆の面前で覆すチャンスではある。
「多少セキュリティなんかに不安はあるが、そこら辺もしっかりはしているはずだ」
「そうですね。人は多いけどやることは変わらない。みんな、優勝目指して頑張るぞ」
何事も良い面を見るようにしよう。
後々覚醒者として活動するための顔を売る場だと考えることにした。
ーーーーー
「初戦の相手はオーストラリアか」
翌日一番を引いたトモナリたち日本勢は最初の戦いが試合となった。
対戦相手はオーストラリア。
国の強さとしては普通ぐらいと見られている。
団体戦のルールは去年と変わらない。
全体のメンバーから七人を選出して、そこからさらに五人を選ぶ。
一年生に当たる十六歳組が一人から二人で二年生に当たる十七歳組が五人から六人の七人をまずは選ぶことになる。
もちろんトモナリは出場する。
日本の中でもトップ戦力だからだ。
個人の戦力的に強いのはコウであるが、こういう時には難しいところがある。
団体戦が複数同時の戦いならこうは間違いなくメンバー入りしていただろうが、コウは魔法使いであるので接近戦を苦手とする。
相手も魔法使いならいいけれど、そうじゃなかった場合戦うのが辛いのである。
魔法使いを選出している国もあるから一概にダメだとは言えない。
ただこういう戦いになると他のメンバーにした方がいいと意見は一致した。
「今年もよろしく頼むぜ」
「本当はあんまり出たくないんだけどね」
アカデミーの課外活動部が主に日本代表を構成しているが、去年同様にアカデミー外からも人は呼んでいる。
去年十六歳組として団体戦に出ていたアユムは今年も声をかけられていた。
ギルドからの後押しで出場することになったアユムは乗り気ではない顔をしている。
「今回はお前にも出てもらおうかな」
トモナリの他にミズキとユウト、サーシャを選び出した。
マコトは正面から戦うタイプでもなく、緊張してしまうタイプなので外れてもらい、アユムを加えることにした。
「一年はお前に頑張ってもらうぞ」
「うっす! 任せてくださいっす」
「頑張らせていただきます」
一年生の方は一人はアカデミーからミヤマエを選ぶ。
そしてもう一人は、アカデミー外から招待された佐々木大吾(ササキダイゴ)という覚醒者に任せることにした。
ササキはすでに覚醒者として活動していて、レベルだけならミヤマエよりも高い。
「さて、あとは実際に誰が戦うかだな」
七人の出場メンバーは決まった。
次は実際に戦う五人を誰にするかである。
くじ引きを終えて、控え室に戻った。
去年まではお客を入れたり中継したりと興行的なことを頑なにやってこなかった。
なのに、どうして今年はこのようなことをやり始めたのか謎である。
マサヨシなら何か知っているかもしれないと、トモナリは訊ねてみた。
「……人が代わったのだ」
「人?」
「開催国が主催として交流戦を取り仕切るが、どこが開催国なんかを決めていると思う?」
「……分かりません」
「そうしたことを決める運営委員会のようなものがあるのだ。メンバーはアメリカの覚醒者を始めとして、十名ほど。しかし去年の事件がアメリカで起きたためにアメリカの役員が減り、別の人が入ったのだ。そのために影響力が少なくなった」
「アメリカは興行化に反対だったんですか?」
「その通りだ」
興行化したいヨーロッパ諸国が主催となり、興行化に対して運営側も容認の姿勢を示した。
もはや止める人はいなかったのである。
「ただ実際にこんなふうになっているとは……俺も直前に聞かされて知ったのだ」
マサヨシは深いため息をつく。
観客がいるようなことを事前に伝えられればよかったのだけど、マサヨシもこんなことになっているのは知らなかったのだ。
生徒たちのことを中継するのに難色を示すと分かっていたからかもしれない。
「まあ、もうここまできた以上は戦うしかないですけどね」
一応プライドもかかっている。
事前に出場辞退するならまだしも、ここまで来ておいて観客がいるから辞めますとはいかない。
トモナリ一人がバカにされるだけならともかく、今いるメンバーや後の日本も何かを言われるかもしれない。
トモナリはそんなこと気にしないが、今後に影響するような判断は避けたい。
「どうせなら世界に知らしめてやりましょうか」
顔が知られるリスクはあるけれど、戦いにおいて手を抜くつもりはない。
トモナリもだいぶ力をつけてきたので、そろそろさらに先のことを考える時が来ていた。
有名になることのデメリットもあるけれど、何かの活動をしていく上で知名度というものがあれば話がスムーズになることもある。
「去年こそ優勝しましたけど、やっぱりその実力を疑う人は多いですもんね」
日本が団体戦で優勝した結果総合的にも優勝扱いされたが、それは個人戦がないこともあるし、中国のメイリンの棄権などの要素もある。
それなりには強かったのだろう。
しかし日本が実力のみで優勝したのだと言えるかは疑問符がつく。
優勝国として警戒はされているものの、今年の優勝候補ではない。
そんな評価を公衆の面前で覆すチャンスではある。
「多少セキュリティなんかに不安はあるが、そこら辺もしっかりはしているはずだ」
「そうですね。人は多いけどやることは変わらない。みんな、優勝目指して頑張るぞ」
何事も良い面を見るようにしよう。
後々覚醒者として活動するための顔を売る場だと考えることにした。
ーーーーー
「初戦の相手はオーストラリアか」
翌日一番を引いたトモナリたち日本勢は最初の戦いが試合となった。
対戦相手はオーストラリア。
国の強さとしては普通ぐらいと見られている。
団体戦のルールは去年と変わらない。
全体のメンバーから七人を選出して、そこからさらに五人を選ぶ。
一年生に当たる十六歳組が一人から二人で二年生に当たる十七歳組が五人から六人の七人をまずは選ぶことになる。
もちろんトモナリは出場する。
日本の中でもトップ戦力だからだ。
個人の戦力的に強いのはコウであるが、こういう時には難しいところがある。
団体戦が複数同時の戦いならこうは間違いなくメンバー入りしていただろうが、コウは魔法使いであるので接近戦を苦手とする。
相手も魔法使いならいいけれど、そうじゃなかった場合戦うのが辛いのである。
魔法使いを選出している国もあるから一概にダメだとは言えない。
ただこういう戦いになると他のメンバーにした方がいいと意見は一致した。
「今年もよろしく頼むぜ」
「本当はあんまり出たくないんだけどね」
アカデミーの課外活動部が主に日本代表を構成しているが、去年同様にアカデミー外からも人は呼んでいる。
去年十六歳組として団体戦に出ていたアユムは今年も声をかけられていた。
ギルドからの後押しで出場することになったアユムは乗り気ではない顔をしている。
「今回はお前にも出てもらおうかな」
トモナリの他にミズキとユウト、サーシャを選び出した。
マコトは正面から戦うタイプでもなく、緊張してしまうタイプなので外れてもらい、アユムを加えることにした。
「一年はお前に頑張ってもらうぞ」
「うっす! 任せてくださいっす」
「頑張らせていただきます」
一年生の方は一人はアカデミーからミヤマエを選ぶ。
そしてもう一人は、アカデミー外から招待された佐々木大吾(ササキダイゴ)という覚醒者に任せることにした。
ササキはすでに覚醒者として活動していて、レベルだけならミヤマエよりも高い。
「さて、あとは実際に誰が戦うかだな」
七人の出場メンバーは決まった。
次は実際に戦う五人を誰にするかである。

