「トモナリ〜」
「なんだよ?」
「怒られたって聞いたぜ?」
ユウトがニヤニヤとしながらトモナリに話しかける。
「まあ……怒られたっちゃ、怒られたかな……」
「なんだよ? その歯切れの悪い言い方」
先日トモナリはトレーニングルームの壁を吹き飛ばした。
浮かれたせいでスキルのデメリットを忘れて、コントロールを見誤ったのである。
幸いなことに周りに被害はなかった。
壊れた壁が外に飛んで落ちていったが、やや遅い時間帯で周りに生徒はいなかった。
壁がちょっと吹き飛んだくらいで建物そのものが壊れるわけもなく、被害といえばトモナリの右腕だけのようなものである。
スキルの暴走は時々起こりうる。
良いスキル、強力なスキルほど最初はコントロールできなくて突発的な事故が起こってしまうものなのだ。
仕方ないことではある。
だから他に怪我した人もいないし、壁を壊したことそのものは怒られたりしなかった。
ただ腕からの出血も激しく、心配をかけるなとマサヨシに怒られてしまったのである。
一応心配かけたくないからというトモナリのお願いで、ゆかりへの報告はしないでくれるということにはなった。
スキルの解放、抽選は覚醒者にとって重要なのでやるなとは言わないが、もっと周りに助けを求められる状況でやりなさいと言われた。
この年になって、そんな子供みたいな怒られ方するとは思いもしなかった。
「トレーニング棟の壁壊したのトモナリ君なんでしょ?」
「一体どんなスキル手に入れたらそんなことできるんですか?」
「結構良いの手に入れたんだよ。だけど少し調子乗ったな……」
トモナリは腕を見る。
ヒーラーの治療はすごいもので、ひどいものだった腕はすっかり治っている。
痛みもなく、後遺症や怪我の跡もない。
後でミクに何かお礼の品でも持っていかなきゃなと思った。
「良いスキルかぁ。羨ましいな」
「早く40になって新しいスキル欲しいよな」
やっぱり新しいスキルというのは覚醒者にとって憧れだ。
「今度どんなのか見せてよ。壁は壊さないようにしてさ」
「ああ、いいぜ」
今度はコントロール間違えないようにしたり、上手く使えるようにしとかなきゃなとトモナリは思った。
「なあ、コウ」
「なに?」
「お前の姉さん、どんなもの好きなんだ?」
「…………トモナリ君?」
「おい、怖い目すんなよ? そういうつもりじゃないから。壁壊した時に怪我して、治してもらったんだよ。だからお礼に何かと思っては」
「あっ、そういうこと」
一瞬コウが怖い顔をした。
別にトモナリはミクを口説こうなんて思っていない。
単純にお礼するのに好みを知りたかっただけである。
「そういうことって……どういうことを想像したのかな? お姉さん大好きなんだ〜」
「うっ……!」
ミズキにからかわれてコウが顔を赤くする。
ミクも高そうな杖をコウに贈っていたり、兄弟の仲は良さそうだ。
あんまりそんな会話をしたことなかったけど、コウはシスコンだったのかと意外な発見である。
「べ、別にそんなんじゃ……!」
「まあお姉さん綺麗だもんね〜」
「コウの気持ちも分かる」
「ねー」
「うぅ……姉さんには幸せになってほしいんだよ」
普段クールめなコウの可愛いところを見た気分になった。
「とりあえず姉さんは……辛いもの好きだよ」
勘違いしてしまったが、トモナリがお礼をしたいというのでコウは照れくさそうにミクの好みを答えたのだった。
「なんだよ?」
「怒られたって聞いたぜ?」
ユウトがニヤニヤとしながらトモナリに話しかける。
「まあ……怒られたっちゃ、怒られたかな……」
「なんだよ? その歯切れの悪い言い方」
先日トモナリはトレーニングルームの壁を吹き飛ばした。
浮かれたせいでスキルのデメリットを忘れて、コントロールを見誤ったのである。
幸いなことに周りに被害はなかった。
壊れた壁が外に飛んで落ちていったが、やや遅い時間帯で周りに生徒はいなかった。
壁がちょっと吹き飛んだくらいで建物そのものが壊れるわけもなく、被害といえばトモナリの右腕だけのようなものである。
スキルの暴走は時々起こりうる。
良いスキル、強力なスキルほど最初はコントロールできなくて突発的な事故が起こってしまうものなのだ。
仕方ないことではある。
だから他に怪我した人もいないし、壁を壊したことそのものは怒られたりしなかった。
ただ腕からの出血も激しく、心配をかけるなとマサヨシに怒られてしまったのである。
一応心配かけたくないからというトモナリのお願いで、ゆかりへの報告はしないでくれるということにはなった。
スキルの解放、抽選は覚醒者にとって重要なのでやるなとは言わないが、もっと周りに助けを求められる状況でやりなさいと言われた。
この年になって、そんな子供みたいな怒られ方するとは思いもしなかった。
「トレーニング棟の壁壊したのトモナリ君なんでしょ?」
「一体どんなスキル手に入れたらそんなことできるんですか?」
「結構良いの手に入れたんだよ。だけど少し調子乗ったな……」
トモナリは腕を見る。
ヒーラーの治療はすごいもので、ひどいものだった腕はすっかり治っている。
痛みもなく、後遺症や怪我の跡もない。
後でミクに何かお礼の品でも持っていかなきゃなと思った。
「良いスキルかぁ。羨ましいな」
「早く40になって新しいスキル欲しいよな」
やっぱり新しいスキルというのは覚醒者にとって憧れだ。
「今度どんなのか見せてよ。壁は壊さないようにしてさ」
「ああ、いいぜ」
今度はコントロール間違えないようにしたり、上手く使えるようにしとかなきゃなとトモナリは思った。
「なあ、コウ」
「なに?」
「お前の姉さん、どんなもの好きなんだ?」
「…………トモナリ君?」
「おい、怖い目すんなよ? そういうつもりじゃないから。壁壊した時に怪我して、治してもらったんだよ。だからお礼に何かと思っては」
「あっ、そういうこと」
一瞬コウが怖い顔をした。
別にトモナリはミクを口説こうなんて思っていない。
単純にお礼するのに好みを知りたかっただけである。
「そういうことって……どういうことを想像したのかな? お姉さん大好きなんだ〜」
「うっ……!」
ミズキにからかわれてコウが顔を赤くする。
ミクも高そうな杖をコウに贈っていたり、兄弟の仲は良さそうだ。
あんまりそんな会話をしたことなかったけど、コウはシスコンだったのかと意外な発見である。
「べ、別にそんなんじゃ……!」
「まあお姉さん綺麗だもんね〜」
「コウの気持ちも分かる」
「ねー」
「うぅ……姉さんには幸せになってほしいんだよ」
普段クールめなコウの可愛いところを見た気分になった。
「とりあえず姉さんは……辛いもの好きだよ」
勘違いしてしまったが、トモナリがお礼をしたいというのでコウは照れくさそうにミクの好みを答えたのだった。

