「な、なんですか?」
「なんであれ……良い兆候じゃなさそうだな。窓から離れていてください。みんな、警戒だ」
何もなく大きな音が鳴るわけがない。
「ルビウス、外の様子を……」
「アイゼン、モンスターだ!」
ドンドンと天井を叩くような音が響く。
天井の一部が崩壊して落ちる。
ヌッと壊れた天井から赤黒い腕が伸びてくる。
デビルアームの腕だが、なんだかサイズがデカい。
「ブレイクアウトか……」
そのまま天井に手をつくようにしてデビルアームが顔を覗かせた。
明らかに他のものよりも大きく、ゲートのボスだろうとトモナリは思った。
ゲートのボスはブレイクが起きてもすぐにはゲートから出てこない。
しかし時間が経つと出てきてしまうこともある。
それをブレイクアウトと呼んでいる。
ゲートがブレイクを起こしてから時間が経っているのか、デビルアームがすぐにゲートから出てくるようなモンスターだったのか、どちらかは分からない。
ただ目の前にデビルアームのボスがいるということは間違いない。
「サントリ、ヤマザト先輩、俺でボスを倒す! 残りはシマダさんを守りながら適宜デビルアームを倒すんだ!」
「おう、やったるか!」
ボスを倒せばゲートが閉じるというのは変わらない。
ゲートが閉じるという表示は現れるので、ボスを倒せばゲート攻略組にも状況は伝わるはずだ。
めんどくさい状況ではあるものの、ディーニとサントリも残っていて、今の戦力だけでも十分戦えるとトモナリは思っていた。
今いるメンバーの中でも攻撃力高めな人で一気にボスを叩く。
「お前に負けてから俺も腕を磨いてきた」
タケルの体から魔力が溢れ出して輝く。
「ボスごとき俺一人でも倒してみせようか!」
床板が割れるほどに強く踏み込んでタケルはボスに向かう。
「たまにはこんなんもどうかな?」
サントリが指をパチンと鳴らす。
するとタケルの拳が炎に包まれた。
「邪魔をするな!」
ボスに向かうタケルの前にデビルアームが立ちはだかる。
炎をまとったタケルの拳は赤い軌跡を残して、一瞬でデビルアームの顎を殴り上げた。
頭が吹き飛びそうな衝撃を感じる間もなくデビルアームは天井に突き刺さってしまう。
「うわぉ……」
トモナリと戦った時はまだレベルも低く、それにトモナリのことを舐めていたというところは否めない。
あの時の動きは明らかに悪かったが、今のタケルはボクシングなどの格闘技も取り入れて見違えるようになっている。
デビルアームもランクが高い魔物ではない。
タケルの拳一振りで簡単にぶっ飛ばされてしまう。
「そんなもの当たるかよ!」
ボスもデカいデビルアームである。
ただデカい分だけ腕も長い。
タケルを近づかせまいと長い腕を活かして距離を取りながら攻撃するが、タケルは体を左右に揺らせてしっかりとボスデビルアームの攻撃を回避する。
「くらえ!」
攻撃をかわしながらタケルは前に出る。
懐に入り込んだタケルはボスデビルアームに拳を叩き込む。
拳の跡が残るほどの破壊力で腹を殴られて、ボスデビルアームは苦悶の表情を浮かべる。
「まだ終わりじゃないぜ」
タケルの体勢が変わる。
しっかりと腕を上げて、ステップで動くボクシングスタイルだったものが、足を地につけ手を脇の下に引く。
「はっ!」
逆の手を引きながら腰を回し、拳を回転させて突き出す。
いわゆる空手の正拳突きというやつだった。
ボスデビルアームの胸に直撃して、拳の形がくっきりと刻まされる。
ただ拳を振り回すだけじゃなく、すでにある格闘技の技術を習得してタケルはより強くなっていた。
「先輩……強いね」
「あんなの食らったら死んじゃうね……」
デビルアームと戦いながらナナとハルカもタケルの強さに驚いていた。
三年生の先輩の力を見る機会もなかなか多くない。
やはり力を見るためには相応の相手が必要となり、一年生ではそこまでの相手と戦うのを見学するのも危険だからだ。
実際トモナリもタケルの本気での戦いを目の当たりするのは久々なので、ここまで強くなっているのは驚きだった。
さすがは拳王。
王職と呼ばれる職業なだけはある。
「いいとこもらいますよ!」
弱点というほどでもないが、拳による殴打は破壊力があっても相手を殺す能力は武器を使った攻撃に比べて弱くなってしまう。
ボスデビルアームも死んでおらず、苦しそうに血を吐き出している。
死ぬまで殴り続けてもいいが、今はさっさと終わらせるのが先決である。
ボスデビルアームに素早く近づいたトモナリが剣を振り下ろして首を斬る。
「お前! 良いところ持っていきやがって!」
「ははっ、すいません!」
「……まあ良い。思っていたよりも雑魚だったな」
一、二年生の経験積みのための攻略でもあるので、ここまでレベルを上げてきたタケルからすれば苦戦することもない相手だった。
「……あっ!」
トモナリとタケルの戦いを見てしまって注意が散漫になった。
ハルカにデビルアームの攻撃が迫る。
「のりゃ!」
「……へっ?」
やられる。
そう思った瞬間、デビルアームが細切れになった。
「大丈夫……なのだ?」
「あ、ありがとうございます……ヒカリ先輩……」
ハルカを助けたのはヒカリだった。
腕をクロスして、キリッと良い顔をするヒカリにハルカは素直に頭を下げた。
「なんであれ……良い兆候じゃなさそうだな。窓から離れていてください。みんな、警戒だ」
何もなく大きな音が鳴るわけがない。
「ルビウス、外の様子を……」
「アイゼン、モンスターだ!」
ドンドンと天井を叩くような音が響く。
天井の一部が崩壊して落ちる。
ヌッと壊れた天井から赤黒い腕が伸びてくる。
デビルアームの腕だが、なんだかサイズがデカい。
「ブレイクアウトか……」
そのまま天井に手をつくようにしてデビルアームが顔を覗かせた。
明らかに他のものよりも大きく、ゲートのボスだろうとトモナリは思った。
ゲートのボスはブレイクが起きてもすぐにはゲートから出てこない。
しかし時間が経つと出てきてしまうこともある。
それをブレイクアウトと呼んでいる。
ゲートがブレイクを起こしてから時間が経っているのか、デビルアームがすぐにゲートから出てくるようなモンスターだったのか、どちらかは分からない。
ただ目の前にデビルアームのボスがいるということは間違いない。
「サントリ、ヤマザト先輩、俺でボスを倒す! 残りはシマダさんを守りながら適宜デビルアームを倒すんだ!」
「おう、やったるか!」
ボスを倒せばゲートが閉じるというのは変わらない。
ゲートが閉じるという表示は現れるので、ボスを倒せばゲート攻略組にも状況は伝わるはずだ。
めんどくさい状況ではあるものの、ディーニとサントリも残っていて、今の戦力だけでも十分戦えるとトモナリは思っていた。
今いるメンバーの中でも攻撃力高めな人で一気にボスを叩く。
「お前に負けてから俺も腕を磨いてきた」
タケルの体から魔力が溢れ出して輝く。
「ボスごとき俺一人でも倒してみせようか!」
床板が割れるほどに強く踏み込んでタケルはボスに向かう。
「たまにはこんなんもどうかな?」
サントリが指をパチンと鳴らす。
するとタケルの拳が炎に包まれた。
「邪魔をするな!」
ボスに向かうタケルの前にデビルアームが立ちはだかる。
炎をまとったタケルの拳は赤い軌跡を残して、一瞬でデビルアームの顎を殴り上げた。
頭が吹き飛びそうな衝撃を感じる間もなくデビルアームは天井に突き刺さってしまう。
「うわぉ……」
トモナリと戦った時はまだレベルも低く、それにトモナリのことを舐めていたというところは否めない。
あの時の動きは明らかに悪かったが、今のタケルはボクシングなどの格闘技も取り入れて見違えるようになっている。
デビルアームもランクが高い魔物ではない。
タケルの拳一振りで簡単にぶっ飛ばされてしまう。
「そんなもの当たるかよ!」
ボスもデカいデビルアームである。
ただデカい分だけ腕も長い。
タケルを近づかせまいと長い腕を活かして距離を取りながら攻撃するが、タケルは体を左右に揺らせてしっかりとボスデビルアームの攻撃を回避する。
「くらえ!」
攻撃をかわしながらタケルは前に出る。
懐に入り込んだタケルはボスデビルアームに拳を叩き込む。
拳の跡が残るほどの破壊力で腹を殴られて、ボスデビルアームは苦悶の表情を浮かべる。
「まだ終わりじゃないぜ」
タケルの体勢が変わる。
しっかりと腕を上げて、ステップで動くボクシングスタイルだったものが、足を地につけ手を脇の下に引く。
「はっ!」
逆の手を引きながら腰を回し、拳を回転させて突き出す。
いわゆる空手の正拳突きというやつだった。
ボスデビルアームの胸に直撃して、拳の形がくっきりと刻まされる。
ただ拳を振り回すだけじゃなく、すでにある格闘技の技術を習得してタケルはより強くなっていた。
「先輩……強いね」
「あんなの食らったら死んじゃうね……」
デビルアームと戦いながらナナとハルカもタケルの強さに驚いていた。
三年生の先輩の力を見る機会もなかなか多くない。
やはり力を見るためには相応の相手が必要となり、一年生ではそこまでの相手と戦うのを見学するのも危険だからだ。
実際トモナリもタケルの本気での戦いを目の当たりするのは久々なので、ここまで強くなっているのは驚きだった。
さすがは拳王。
王職と呼ばれる職業なだけはある。
「いいとこもらいますよ!」
弱点というほどでもないが、拳による殴打は破壊力があっても相手を殺す能力は武器を使った攻撃に比べて弱くなってしまう。
ボスデビルアームも死んでおらず、苦しそうに血を吐き出している。
死ぬまで殴り続けてもいいが、今はさっさと終わらせるのが先決である。
ボスデビルアームに素早く近づいたトモナリが剣を振り下ろして首を斬る。
「お前! 良いところ持っていきやがって!」
「ははっ、すいません!」
「……まあ良い。思っていたよりも雑魚だったな」
一、二年生の経験積みのための攻略でもあるので、ここまでレベルを上げてきたタケルからすれば苦戦することもない相手だった。
「……あっ!」
トモナリとタケルの戦いを見てしまって注意が散漫になった。
ハルカにデビルアームの攻撃が迫る。
「のりゃ!」
「……へっ?」
やられる。
そう思った瞬間、デビルアームが細切れになった。
「大丈夫……なのだ?」
「あ、ありがとうございます……ヒカリ先輩……」
ハルカを助けたのはヒカリだった。
腕をクロスして、キリッと良い顔をするヒカリにハルカは素直に頭を下げた。

