「もうやめて……お姉様」
シテトラは悲痛な表情を浮かべてモーノのことを見ている。
「ガアアッ!」
けれどもシテトラの声は届かない。
ディーニたちの囲いを無視してモーノはトモナリに襲いかかる。
「それはダメ」
「せめて私たちのことを見ろよ!」
ペンターゴとサントリがモーノを追いかける。
二人の攻撃をモーノが飛び上がって回避した。
流石に完全に無視はできないようである。
「うーん」
「トモナリ、ここは見守りなのだ!」
「そうだな。そうするか」
五人姉妹の戦いに加わるべきか。
悩んだトモナリの頭にヒカリが乗っかった。
確実にトモナリがモーノに狙われているが、この戦いはディーニたちのものである。
トモナリはあくまでも囮でいればいいのだ。
そして、ヒカリもディーニたちの心中を察して戦いを止めた。
ある種、ヒカリの心も少し成長しているのかもしれないとトモナリは思った。
「もどかしいのだ……」
「そうだな。悲しい戦いだな」
ディーニたち四体とモーノの一体の戦いである。
モーノの方が全体的な能力は高そうだが、流石に四体相手では分が悪い。
しかしディーニたちの攻撃はモーノを捉えきれずにいる。
力が及ばないからじゃない。
「どんなふうになろうとも家族は家族だからな……」
モーノは奇声をあげながら髪を振り乱し戦っている。
およそただのモンスターと違いはないが、それでもディーニたちは決定的な攻撃をためらっているのだ。
だから勝負がつかない。
しかしどこかで勝負はつけねばならないのだ。
「……ドウシテ! ココニイレバアナタタチハキズツカナイ!」
「そうかもしれません。でも……あの状態では死んでいるのと変わりないじゃない」
ディーニが腕に刃を生やしてモーノを斬りつける。
モーノの頬が切れるが、血も流れない。
「ワタシタチガワルインジャナイ。アイツラガワルイ!」
「そうだな。でも私たちは逃げるべきじゃなかった」
サントリの炎をまとった拳がモーノの腹を直撃する。
モーノの腹部が赤黒く焼ける。
「ワタシタチハヒトデナクナッタ! アイツラハワタシタチヲモンスタートオナジヨウニミテイタ!」
「でも私たちの心は人。それを失ってはならない!」
ヘキサムが前足を振り下ろして、モーノは腕を上げてガードする。
その隙をついてシテトラがモーノの顔面を殴り飛ばした。
「ワタシハオマエタチヲマモリタクテ……」
「お父様もそう言ってた。分かるよ。でもやり方が違う」
ペンターゴが斧を振る。
モーノも対抗して爪を繰り出すが、力負けしてモーノの右腕がバラバラに破壊される。
「ここで終わらせます」
「姉さん、もう休んでくれ」
「僕たちは大丈夫。心に負った傷もきっと乗り越えられる」
「いつも……ありがとう」
ディーニ、サントリ、シテトラ、ペンターゴが一斉に攻撃する。
顔は攻撃しなかった。
女性というほんのわずかな配慮だった。
モーノの胴体が真っ二つになって、上半身が飛んでいく。
「どうしてあの子たちを解放したの?」
モーノの上半身がトモナリの前に転がってくる。
赤い瞳には理性が見える。
「……かつて俺はサントリに救われたことがある。そのサントリの願いだったんだ」
「かつて救われた? おかしなことを言うのね」
「分からないだろうな。でもそうなんだ」
「あの子たちは普通じゃない……あの子たちは……」
「分かってる。彼女たちはオートマタじゃなくて……ホムンクルスだろ?」
「………………」
トモナリの答えにモーノは驚いたように目を見開く。
「少なくとも俺は彼女たちを邪険に扱うことはしない。こんなやつだって受け入れられてるんだぜ?」
「むっ! こんなやつとはなんなのだ!」
「はは、悪い悪い」
モーノはトモナリとヒカリのことをぼんやりと見上げる。
「……あの子たちは悲しみを背負ってる」
「それも知ってる。だがディーニたちはあんたのように一人じゃなくて、四人いる」
モーノは頭を動かしてディーニたちのことを見る。
「……そうね」
モーノは残っている左腕を持ち上げ、手を胸に突き刺した。
「あなたに任せるわ。あの子たちをお願い……」
自らの魔石を抜き取ってモーノはトモナリに差し出した。
「俺が何かするまでもないさ。きっと四人で支え合っていけるから」
「それでも……心配は…………尽きない……」
「分かったよ。俺に任せてくれ。四人のことは守るから」
モーノは微笑んだ。
トモナリがモーノの魔石を受け取ると、モーノの左腕は力無く床に落ちた。
『ゲートが攻略されました!
間も無くゲートの崩壊が始まります!
残り0:29』
モーノが動かなくなった瞬間に残りのオートマタも動かなくなって地面に倒れる。
トモナリもドラゴンズコネクトを解除して黒いコート姿から元の姿に戻る。
「トモナリ君!」
イヌサワが駆けつける。
「ボスは倒しました。ゲートを脱出しましょう」
ゲートは攻略されると消滅する。
消滅までの時間が長いゲートならのんびりしていてもいいが、オートマタは洋館の中も微妙に長く、消滅までの時間も割と短い。
早めに抜け出さねばならない。
「ご主人様、あちらが出口です」
「えっ?」
いつの間にかしまっていたホール奥のドアが再び開いた。
ドアの中は青白いゲートになっていた。
「帰り道用意してくれるのは、ありがたいな」
シテトラは悲痛な表情を浮かべてモーノのことを見ている。
「ガアアッ!」
けれどもシテトラの声は届かない。
ディーニたちの囲いを無視してモーノはトモナリに襲いかかる。
「それはダメ」
「せめて私たちのことを見ろよ!」
ペンターゴとサントリがモーノを追いかける。
二人の攻撃をモーノが飛び上がって回避した。
流石に完全に無視はできないようである。
「うーん」
「トモナリ、ここは見守りなのだ!」
「そうだな。そうするか」
五人姉妹の戦いに加わるべきか。
悩んだトモナリの頭にヒカリが乗っかった。
確実にトモナリがモーノに狙われているが、この戦いはディーニたちのものである。
トモナリはあくまでも囮でいればいいのだ。
そして、ヒカリもディーニたちの心中を察して戦いを止めた。
ある種、ヒカリの心も少し成長しているのかもしれないとトモナリは思った。
「もどかしいのだ……」
「そうだな。悲しい戦いだな」
ディーニたち四体とモーノの一体の戦いである。
モーノの方が全体的な能力は高そうだが、流石に四体相手では分が悪い。
しかしディーニたちの攻撃はモーノを捉えきれずにいる。
力が及ばないからじゃない。
「どんなふうになろうとも家族は家族だからな……」
モーノは奇声をあげながら髪を振り乱し戦っている。
およそただのモンスターと違いはないが、それでもディーニたちは決定的な攻撃をためらっているのだ。
だから勝負がつかない。
しかしどこかで勝負はつけねばならないのだ。
「……ドウシテ! ココニイレバアナタタチハキズツカナイ!」
「そうかもしれません。でも……あの状態では死んでいるのと変わりないじゃない」
ディーニが腕に刃を生やしてモーノを斬りつける。
モーノの頬が切れるが、血も流れない。
「ワタシタチガワルインジャナイ。アイツラガワルイ!」
「そうだな。でも私たちは逃げるべきじゃなかった」
サントリの炎をまとった拳がモーノの腹を直撃する。
モーノの腹部が赤黒く焼ける。
「ワタシタチハヒトデナクナッタ! アイツラハワタシタチヲモンスタートオナジヨウニミテイタ!」
「でも私たちの心は人。それを失ってはならない!」
ヘキサムが前足を振り下ろして、モーノは腕を上げてガードする。
その隙をついてシテトラがモーノの顔面を殴り飛ばした。
「ワタシハオマエタチヲマモリタクテ……」
「お父様もそう言ってた。分かるよ。でもやり方が違う」
ペンターゴが斧を振る。
モーノも対抗して爪を繰り出すが、力負けしてモーノの右腕がバラバラに破壊される。
「ここで終わらせます」
「姉さん、もう休んでくれ」
「僕たちは大丈夫。心に負った傷もきっと乗り越えられる」
「いつも……ありがとう」
ディーニ、サントリ、シテトラ、ペンターゴが一斉に攻撃する。
顔は攻撃しなかった。
女性というほんのわずかな配慮だった。
モーノの胴体が真っ二つになって、上半身が飛んでいく。
「どうしてあの子たちを解放したの?」
モーノの上半身がトモナリの前に転がってくる。
赤い瞳には理性が見える。
「……かつて俺はサントリに救われたことがある。そのサントリの願いだったんだ」
「かつて救われた? おかしなことを言うのね」
「分からないだろうな。でもそうなんだ」
「あの子たちは普通じゃない……あの子たちは……」
「分かってる。彼女たちはオートマタじゃなくて……ホムンクルスだろ?」
「………………」
トモナリの答えにモーノは驚いたように目を見開く。
「少なくとも俺は彼女たちを邪険に扱うことはしない。こんなやつだって受け入れられてるんだぜ?」
「むっ! こんなやつとはなんなのだ!」
「はは、悪い悪い」
モーノはトモナリとヒカリのことをぼんやりと見上げる。
「……あの子たちは悲しみを背負ってる」
「それも知ってる。だがディーニたちはあんたのように一人じゃなくて、四人いる」
モーノは頭を動かしてディーニたちのことを見る。
「……そうね」
モーノは残っている左腕を持ち上げ、手を胸に突き刺した。
「あなたに任せるわ。あの子たちをお願い……」
自らの魔石を抜き取ってモーノはトモナリに差し出した。
「俺が何かするまでもないさ。きっと四人で支え合っていけるから」
「それでも……心配は…………尽きない……」
「分かったよ。俺に任せてくれ。四人のことは守るから」
モーノは微笑んだ。
トモナリがモーノの魔石を受け取ると、モーノの左腕は力無く床に落ちた。
『ゲートが攻略されました!
間も無くゲートの崩壊が始まります!
残り0:29』
モーノが動かなくなった瞬間に残りのオートマタも動かなくなって地面に倒れる。
トモナリもドラゴンズコネクトを解除して黒いコート姿から元の姿に戻る。
「トモナリ君!」
イヌサワが駆けつける。
「ボスは倒しました。ゲートを脱出しましょう」
ゲートは攻略されると消滅する。
消滅までの時間が長いゲートならのんびりしていてもいいが、オートマタは洋館の中も微妙に長く、消滅までの時間も割と短い。
早めに抜け出さねばならない。
「ご主人様、あちらが出口です」
「えっ?」
いつの間にかしまっていたホール奥のドアが再び開いた。
ドアの中は青白いゲートになっていた。
「帰り道用意してくれるのは、ありがたいな」

