「いるんだね?」
「……はい」
「ならいいんだ。ディーニ、俺は君たちを助け出すつもりだ」
「……マスターには何か深い考えがあるのですね」
ディーニはトモナリの目を見つめる。
他の人はディーニのことをまだオートマタと同じく警戒しているような目で見ているが、トモナリだけはまるで古くからの仲間のようにディーニに優しく目を向けていた。
「そんなに深いものじゃないさ」
トモナリは寂しげに笑った。
「他の子がどこにいるか分かる?」
「もはやこの屋敷は歪んでいます。囚われている場所がどこかなのかは分かりません。ただ近づけば存在を感じられるはずです」
「そうか。じゃあ近づいたら教えてくれ」
「分かりました、マスター」
「……それでは捜索を続けよう」
ディーニのことはやや警戒しつつも洋館の中の攻略を再開する。
「開けるぞ!」
ディーニを見つけた部屋の隣のドアをシノヅカが開ける。
オートマタが飛び出してきて、待機していたタンクに襲いかかろうとした。
「止まりなさい」
「……なんだ!?」
オートマタの胸から槍が飛び出してきて、タンクの盾に当たる直前で動きが止まった。
ディーニが手を伸ばし、冷たい目をしてオートマタのことを見ている。
「ディーニ……君がやったのか?」
イヌサワも驚いたような表情をしている。
「はい」
トモナリに対してはちゃんと向き直り、柔らかい表情を浮かべるのに、イヌサワに対してはディーニは見向きもしない。
「他のオートマタを止められるのか?」
「全てではありません。あの個体は私の情報を元に作られています。ですから私の命令が通じるのです」
「じゃあ通じない個体もいる……ということかな?」
「その通りです」
「それでもオートマタの一部を無力化できるのか」
顔にまで出さないが、みんなの中で驚きが広がる。
オートマタの出現数は多い。
少しでも油断すると危険なオートマタが、たとえ一部でも無力化できるのはかなり大きい。
「これは……想像よりもありがたいな」
イガラシはオートマタの背中を破壊して魔石を取り出す。
仲間になると聞いた時、単に一体分の戦力が増えるぐらいに考えていた。
しかし相手の一部を無力化できるなら戦力以上の価値がある。
「突入するぞ!」
飛び出してくるのは最初の一体のみ。
残りのオートマタは部屋に入ってこないと襲いかかってこない。
無視するという選択肢もあるが、無視した時に部屋にいるオートマタがどうするのか分からない。
無視したら部屋から出てきて、急に後ろから襲いかかってくることだってあり得ない話とは言い切れない。
普段になっても出会ったモンスターを倒しておくことは後々の安全のため、後顧の憂いを断つ意味でも必要な行為なのである。
タンクを前に部屋の中に入っていく。
武器を手に、あるいは体を変形させてオートマタが襲いくる。
「効果は本当にあるようだな」
何体かのオートマタが壁際に並んだまま動かない。
それがディーニの効果であることはすぐにわかった。
「ああああっ!」
「キムラ!」
キムラという覚醒者が悲鳴を上げる。
天井から降ってきたオートマタがキムラを後ろから抱きしめていた。
オートマタの腕からは無数の刃が飛び出していて、体がズタズタに斬り裂かれる。
「くそっ!」
蝦夷ギルドの仲間が助けようとするが、オートマタはキムラを盾にして攻撃させないようにしてしまう。
「本来人を傷つけることは許されていないはずですよ」
ディーニがオートマタの後ろに回り込んだ。
手の甲側の手首から刃が飛び出してきて、オートマタの背中を切り開く。
背中に手を突っ込むと乱雑に魔石を抜き取って、オートマタの腕を斬り落としてキムラを助ける。
「おい、大丈夫か!」
動きやすいようにモンスターの皮で作った鎧を身につけていたが、そんなものも切り裂いていた。
傷そのものは浅いが、胴体につけられた傷の数は多くて全身血で真っ赤になっている。
「ポーションを使え!」
ファンタジーの物語やゲームではポーションは万能な回復薬である。
しかしそんな都合のいい回復薬は本当にごく一部のものしかない。
現実世界におけるポーションとは魔力を含んだ特殊な薬で、傷の回復を早めてくれる効果があるものを指している場合が多い。
一般人に使っても効果があるけれど、覚醒者に使えば元々持っている回復力と相まってだいぶ傷の回復は早くなる。
「ううっ!」
飲むこともできるし傷に直接振りかけることもできる。
ただ傷に振りかけると染みてとんでもなく痛い。
「どうだ?」
「な、なんとか……」
ポーションも瀕死の状態から回復させてくれるような効果はない。
傷の回復を早めてくれるので、生きていて、傷の回復ができるような体力がなければならない。
今回キムラは傷そのものは浅かったおかげで、ポーションの効果が十分に発揮されることになった。
「どうせ抱きつかれるなら女の子がいいと思うけど、あんな死の抱擁は勘弁願いたいね」
イヌサワがディーニの力で立ったままのオートマタの体から魔石を抜き取った。
あんなふうにズタズタになってしまうハグなんてされたくないなと思って小さくため息をつく。
「……はい」
「ならいいんだ。ディーニ、俺は君たちを助け出すつもりだ」
「……マスターには何か深い考えがあるのですね」
ディーニはトモナリの目を見つめる。
他の人はディーニのことをまだオートマタと同じく警戒しているような目で見ているが、トモナリだけはまるで古くからの仲間のようにディーニに優しく目を向けていた。
「そんなに深いものじゃないさ」
トモナリは寂しげに笑った。
「他の子がどこにいるか分かる?」
「もはやこの屋敷は歪んでいます。囚われている場所がどこかなのかは分かりません。ただ近づけば存在を感じられるはずです」
「そうか。じゃあ近づいたら教えてくれ」
「分かりました、マスター」
「……それでは捜索を続けよう」
ディーニのことはやや警戒しつつも洋館の中の攻略を再開する。
「開けるぞ!」
ディーニを見つけた部屋の隣のドアをシノヅカが開ける。
オートマタが飛び出してきて、待機していたタンクに襲いかかろうとした。
「止まりなさい」
「……なんだ!?」
オートマタの胸から槍が飛び出してきて、タンクの盾に当たる直前で動きが止まった。
ディーニが手を伸ばし、冷たい目をしてオートマタのことを見ている。
「ディーニ……君がやったのか?」
イヌサワも驚いたような表情をしている。
「はい」
トモナリに対してはちゃんと向き直り、柔らかい表情を浮かべるのに、イヌサワに対してはディーニは見向きもしない。
「他のオートマタを止められるのか?」
「全てではありません。あの個体は私の情報を元に作られています。ですから私の命令が通じるのです」
「じゃあ通じない個体もいる……ということかな?」
「その通りです」
「それでもオートマタの一部を無力化できるのか」
顔にまで出さないが、みんなの中で驚きが広がる。
オートマタの出現数は多い。
少しでも油断すると危険なオートマタが、たとえ一部でも無力化できるのはかなり大きい。
「これは……想像よりもありがたいな」
イガラシはオートマタの背中を破壊して魔石を取り出す。
仲間になると聞いた時、単に一体分の戦力が増えるぐらいに考えていた。
しかし相手の一部を無力化できるなら戦力以上の価値がある。
「突入するぞ!」
飛び出してくるのは最初の一体のみ。
残りのオートマタは部屋に入ってこないと襲いかかってこない。
無視するという選択肢もあるが、無視した時に部屋にいるオートマタがどうするのか分からない。
無視したら部屋から出てきて、急に後ろから襲いかかってくることだってあり得ない話とは言い切れない。
普段になっても出会ったモンスターを倒しておくことは後々の安全のため、後顧の憂いを断つ意味でも必要な行為なのである。
タンクを前に部屋の中に入っていく。
武器を手に、あるいは体を変形させてオートマタが襲いくる。
「効果は本当にあるようだな」
何体かのオートマタが壁際に並んだまま動かない。
それがディーニの効果であることはすぐにわかった。
「ああああっ!」
「キムラ!」
キムラという覚醒者が悲鳴を上げる。
天井から降ってきたオートマタがキムラを後ろから抱きしめていた。
オートマタの腕からは無数の刃が飛び出していて、体がズタズタに斬り裂かれる。
「くそっ!」
蝦夷ギルドの仲間が助けようとするが、オートマタはキムラを盾にして攻撃させないようにしてしまう。
「本来人を傷つけることは許されていないはずですよ」
ディーニがオートマタの後ろに回り込んだ。
手の甲側の手首から刃が飛び出してきて、オートマタの背中を切り開く。
背中に手を突っ込むと乱雑に魔石を抜き取って、オートマタの腕を斬り落としてキムラを助ける。
「おい、大丈夫か!」
動きやすいようにモンスターの皮で作った鎧を身につけていたが、そんなものも切り裂いていた。
傷そのものは浅いが、胴体につけられた傷の数は多くて全身血で真っ赤になっている。
「ポーションを使え!」
ファンタジーの物語やゲームではポーションは万能な回復薬である。
しかしそんな都合のいい回復薬は本当にごく一部のものしかない。
現実世界におけるポーションとは魔力を含んだ特殊な薬で、傷の回復を早めてくれる効果があるものを指している場合が多い。
一般人に使っても効果があるけれど、覚醒者に使えば元々持っている回復力と相まってだいぶ傷の回復は早くなる。
「ううっ!」
飲むこともできるし傷に直接振りかけることもできる。
ただ傷に振りかけると染みてとんでもなく痛い。
「どうだ?」
「な、なんとか……」
ポーションも瀕死の状態から回復させてくれるような効果はない。
傷の回復を早めてくれるので、生きていて、傷の回復ができるような体力がなければならない。
今回キムラは傷そのものは浅かったおかげで、ポーションの効果が十分に発揮されることになった。
「どうせ抱きつかれるなら女の子がいいと思うけど、あんな死の抱擁は勘弁願いたいね」
イヌサワがディーニの力で立ったままのオートマタの体から魔石を抜き取った。
あんなふうにズタズタになってしまうハグなんてされたくないなと思って小さくため息をつく。

