「ホラーゲームみたいな雰囲気だね」
準備を整えてオートマタゲートの中に入った。
ゲートを入ってすぐ正面に写真で見た洋館がある。
ボロボロの高い塀に囲まれた洋館、空は黒くて分厚い雲に覆われていて暗く、空気もなんとなく重たい。
周りには他に建物もなく、ところどころに生えている木々は黒く立ち枯れている。
まるでホラージャンルの映画やゲームのワンシーンのようだ。
イヌサワは興味深そうに周りのことを見ている。
「久しぶり」
「うにー! はーなーすーのーだー!」
「久しぶりですね、先輩」
イガラシギルドにはトモナリが一年生の時に三年生だったフウカがいる。
少し遅れて攻略直前に合流してきたフウカと久々に顔を合わせた。
相変わらずの無表情だが、トモナリとヒカリに会えて少し嬉しそうにも見える。
ヒカリはフウカに捕まって抱きかかえられている。
ヒカリも強くはなったが、フウカのホールドからは逃れられないようだ。
『ダンジョン階数:EX
ダンジョン難易度:Aクラス
最大入場数:100人
入場条件:レベル20以上
攻略条件:狂った姉を止めろ』
「狂った姉を止めろ……か」
トモナリは改めてゲートの情報を確認する。
ダンジョン難易度がAクラスなのは固定なので、いつものことである。
実際の中身としてはAクラスといかないようなゲートもあるし、モンスターとしてもそこまで強くないことも多い。
なかなか見ない表記なのはダンジョン階数のEXというものである。
これは今回攻略するフィールドが丸々洋館の中だからだ。
建物の中でも階層が分かれているゲートもあるが、洋館の中は階層に分かれておらず広い一つのフィールド扱いとなっている。
だが二階三階と上下もあるし、細かい部屋などもある。
階層という概念に囚われない特殊な作りということでEX表記になっている。
最大入場数は100と多いので問題にならない。
入場条件もレベル制限のみ、しかも20以上ならばこちらも問題になる人の方が少ないぐらいである。
やはりもっとも注目すべきは攻略条件だろう。
‘狂った姉を止めろ’という条件がなんなのか分かっている人はいない。
これまでの攻略は失敗に終わっていて最後まで進んだ人はいない。
狂った姉というやつがゲートのボスなのだろうということは誰にでも予想はつく。
しかしただボスを倒せというものではない理由までは分からない。
「みんな準備はいいな? 中は過酷だ。互いに助け合っていくぞ」
蝦夷ギルドとの協力もするが、慣れ親しんだイガラシギルド内での協力はより重要となる。
蝦夷ギルドのシノヅカを先頭にして洋館に向かっていく。
洋館を取り囲む塀の鉄門はシノヅカが近づくとゆっくりと開いた。
「まるで僕たち歓迎してくれているかのようだね」
洋館入り口のドアは開け放たれている。
開いた鉄門はみんなが中に入ると一人でに閉まった。
入ってくるといい。
そんな風に歓迎を受けているようだとイヌサワは感じた。
「タンク、頼むぞ」
洋館に入るのにタンクが数人、前に出る。
盾を構えて奇襲に警戒しながら洋館の中に足を踏み入れる。
「オートマタがいました!」
入ってすぐの奇襲はなかった。
しかし広いエントランスホールのど真ん中に数体の人形が立っていた。
話に聞いているオートマタである。
俯くようにして立っている美しい女性の姿を模したオートマタは、洋館の中に入ってきたトモナリたちに顔を向けた。
あるオートマタは腕から刃が飛び出し、あるオートマタは手に持っていた剣を構える。
それぞれの戦い方が違うと聞いていたが、本当に色々あるものだと感心してしまう。
「来るぞ!」
オートマタが動き出して戦いが始まった。
「放て!」
魔法使いたちが魔法を放つ。
回避できずに魔法が当たってオートマタの頭が壊れる。
頬の部分が崩れて中身が見えるが、オートマタは構わず飛びかかってきた。
タンクが盾でオートマタの攻撃を受け止め、タンクの後ろから飛び出した覚醒者が槍でオートマタの胴体を突き崩す。
「魔石が見えた!」
破壊された胴体の隙間から魔石が見える。
タンクの男がオートマタの胴体に手を突っ込んで魔石を引き抜く。
すると顔が壊れても、胴体に穴が空いても平気で動いていたオートマタが急に動きを止めて床に崩れ落ちた。
「えいっ」
フウカが闇の手を呼び出してオートマタを押しつぶす。
相手を全体的に攻撃できるパワータイプのスキルはオートマタに対して有効である。
「はっ!」
タンクが気を引いてくれている隙をついてトモナリはオートマタの腕を切り落とした。
ダメージはなくとも腕が無くなればオートマタの攻撃力は下がる。
「なっ……うわああっ!」
一人の覚醒者がオートマタに両腕を掴まれた。
どうするのかと思ったら、オートマタの口元が開いて鋭い針が飛び出してきた。
「……うっ?」
「大丈夫かい?」
「あ、はい、助かりました」
死をも覚悟したけれどいつまで経っても痛みはこない。
男が目を開けると目の前にいたはずのオートマタは、腕を掴んだ手だけを残して床でひしゃげていた。
イヌサワがスキルの重力操作で潰したのである。
準備を整えてオートマタゲートの中に入った。
ゲートを入ってすぐ正面に写真で見た洋館がある。
ボロボロの高い塀に囲まれた洋館、空は黒くて分厚い雲に覆われていて暗く、空気もなんとなく重たい。
周りには他に建物もなく、ところどころに生えている木々は黒く立ち枯れている。
まるでホラージャンルの映画やゲームのワンシーンのようだ。
イヌサワは興味深そうに周りのことを見ている。
「久しぶり」
「うにー! はーなーすーのーだー!」
「久しぶりですね、先輩」
イガラシギルドにはトモナリが一年生の時に三年生だったフウカがいる。
少し遅れて攻略直前に合流してきたフウカと久々に顔を合わせた。
相変わらずの無表情だが、トモナリとヒカリに会えて少し嬉しそうにも見える。
ヒカリはフウカに捕まって抱きかかえられている。
ヒカリも強くはなったが、フウカのホールドからは逃れられないようだ。
『ダンジョン階数:EX
ダンジョン難易度:Aクラス
最大入場数:100人
入場条件:レベル20以上
攻略条件:狂った姉を止めろ』
「狂った姉を止めろ……か」
トモナリは改めてゲートの情報を確認する。
ダンジョン難易度がAクラスなのは固定なので、いつものことである。
実際の中身としてはAクラスといかないようなゲートもあるし、モンスターとしてもそこまで強くないことも多い。
なかなか見ない表記なのはダンジョン階数のEXというものである。
これは今回攻略するフィールドが丸々洋館の中だからだ。
建物の中でも階層が分かれているゲートもあるが、洋館の中は階層に分かれておらず広い一つのフィールド扱いとなっている。
だが二階三階と上下もあるし、細かい部屋などもある。
階層という概念に囚われない特殊な作りということでEX表記になっている。
最大入場数は100と多いので問題にならない。
入場条件もレベル制限のみ、しかも20以上ならばこちらも問題になる人の方が少ないぐらいである。
やはりもっとも注目すべきは攻略条件だろう。
‘狂った姉を止めろ’という条件がなんなのか分かっている人はいない。
これまでの攻略は失敗に終わっていて最後まで進んだ人はいない。
狂った姉というやつがゲートのボスなのだろうということは誰にでも予想はつく。
しかしただボスを倒せというものではない理由までは分からない。
「みんな準備はいいな? 中は過酷だ。互いに助け合っていくぞ」
蝦夷ギルドとの協力もするが、慣れ親しんだイガラシギルド内での協力はより重要となる。
蝦夷ギルドのシノヅカを先頭にして洋館に向かっていく。
洋館を取り囲む塀の鉄門はシノヅカが近づくとゆっくりと開いた。
「まるで僕たち歓迎してくれているかのようだね」
洋館入り口のドアは開け放たれている。
開いた鉄門はみんなが中に入ると一人でに閉まった。
入ってくるといい。
そんな風に歓迎を受けているようだとイヌサワは感じた。
「タンク、頼むぞ」
洋館に入るのにタンクが数人、前に出る。
盾を構えて奇襲に警戒しながら洋館の中に足を踏み入れる。
「オートマタがいました!」
入ってすぐの奇襲はなかった。
しかし広いエントランスホールのど真ん中に数体の人形が立っていた。
話に聞いているオートマタである。
俯くようにして立っている美しい女性の姿を模したオートマタは、洋館の中に入ってきたトモナリたちに顔を向けた。
あるオートマタは腕から刃が飛び出し、あるオートマタは手に持っていた剣を構える。
それぞれの戦い方が違うと聞いていたが、本当に色々あるものだと感心してしまう。
「来るぞ!」
オートマタが動き出して戦いが始まった。
「放て!」
魔法使いたちが魔法を放つ。
回避できずに魔法が当たってオートマタの頭が壊れる。
頬の部分が崩れて中身が見えるが、オートマタは構わず飛びかかってきた。
タンクが盾でオートマタの攻撃を受け止め、タンクの後ろから飛び出した覚醒者が槍でオートマタの胴体を突き崩す。
「魔石が見えた!」
破壊された胴体の隙間から魔石が見える。
タンクの男がオートマタの胴体に手を突っ込んで魔石を引き抜く。
すると顔が壊れても、胴体に穴が空いても平気で動いていたオートマタが急に動きを止めて床に崩れ落ちた。
「えいっ」
フウカが闇の手を呼び出してオートマタを押しつぶす。
相手を全体的に攻撃できるパワータイプのスキルはオートマタに対して有効である。
「はっ!」
タンクが気を引いてくれている隙をついてトモナリはオートマタの腕を切り落とした。
ダメージはなくとも腕が無くなればオートマタの攻撃力は下がる。
「なっ……うわああっ!」
一人の覚醒者がオートマタに両腕を掴まれた。
どうするのかと思ったら、オートマタの口元が開いて鋭い針が飛び出してきた。
「……うっ?」
「大丈夫かい?」
「あ、はい、助かりました」
死をも覚悟したけれどいつまで経っても痛みはこない。
男が目を開けると目の前にいたはずのオートマタは、腕を掴んだ手だけを残して床でひしゃげていた。
イヌサワがスキルの重力操作で潰したのである。

