「これでオークションも終わりか……やっぱり金持ちには敵わないな」
それなりにお金を持っていると思っていたが、会場にいる人たちと比べれば貧乏だと言われても反論できない。
最後に出てきた霊薬も目玉が飛び出そうな高額で落札されてオークションは終わった。
「失礼します。少しよろしいですか?」
オークション参加者にはホテルが宿泊できる部屋を用意してくれている。
せっかくだしいい部屋でのんびりしようと立ち上がったトモナリは声をかけられた。
オークション参加者の中には正体がバレたくないのか、仮面をつけて顔を隠している人もいた。
トモナリに声をかけてきたのは色黒の綺麗な顔を顔をした男性だったが、その後ろには仮面をつけた背の高い男性もいる。
「なんでしょうか?」
「お時間大丈夫ですか?」
日本人には見えないけれど、日本語が流暢だ。
「大丈夫ですが……」
「私はフィロンと申します。そちらのモンスター……貴方様のものでしょうか?」
フィロンはトモナリに抱えられているヒカリに視線を向けた。
「そうです」
もの、という言い方に引っ掛かりを覚えつつも、日本語話者でないのなら多少の言い方はしょうがないかと答える。
「こちらの方がそのモンスターを欲しがっております。売っていただけないでしょうか?」
「えっ?」
思わぬ交渉にトモナリは驚く。
「一億ドルお支払いいたします」
「ええっ!?」
さらりと提示された金額にまたしても驚く。
とんでもない金額だ。
それこそ一生遊んで暮らせる。
トモナリは仮面の男を見る。
顔全体を覆う仮面をつけているので顔は分からない。
ガッチリとした体格の男性なことは分かるけれど、声すらも分かっていない。
そんなお金をポンと出せる人なんて限られるだろうが、トモナリには仮面の男の正体の予想もついていない。
「いかがでしょうか?」
「申し訳ありませんが、こいつは商品じゃない。いくら積まれても売るつもりはありません」
「トモナリィ……」
一億ドルがすごい金額なことはヒカリも分かっている。
トモナリがヒカリのことを売るはずないと信じているものの、ちょっとドキドキしていた。
トモナリとしてはすごい金額だなと思っただけで少しも心は揺れていない。
ヒカリを手放すつもりなんて毛頭なかった。
一億ドルかけたってヒカリのような存在とまた契約できることなんてないし、お金を持っていたってこの先世界が荒れれば無用の長物になる。
何より友達を売るバカはいない。
ヒカリは感動して目をウルウルさせている。
フィロンは仮面の男に耳打ちする。
「…………分かりました。突然のお話、失礼いたしました。よろしければ別のことをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「お願いの内容によります」
トモナリはやや警戒しつつ答える。
「そちらのモンスターと触れ合わせていただくことはできるでしょうか?」
「触れ……えっ?」
「もっと分かりやすく言えば撫でさせてほしいということでございます」
「……そうですか。どうだ、ヒカリ?」
撫でるぐらいならトモナリとしては構わない。
マサヨシやクラスのみんなも時々撫でたりしている。
ヒカリさえよければトモナリが拒否することではなかった。
「むむぅ?」
ヒカリは仮面の男のことを見る。
ジーッと目を見つめ、仮面の男も堂々とヒカリのことを見つめ返す。
「うむ、よかろうなのだ!」
何か感じるものがあったのか、しばしの沈黙の後ヒカリは許可を出した。
「ただし仮面つけてて怪しいからトモナリに抱っこされたままじゃなきゃ嫌だぞ!」
仮面の男に敵意はなさそうだとヒカリは思った。
危ないことはしなさそう。
でも顔も出せない人を信用はしない。
「それでよろしいようです」
フィロンが確認を取ると仮面の男は大きく頷いた。
トモナリが仮面の男に近づくと、フィロンからほんのりと魔力が漏れ出して警戒をしているようだった。
単なる通訳ではなく、護衛も兼ねた覚醒者だったようである。
「どうぞ」
トモナリは抱きかかえたヒカリをずっと差し出す。
仮面の奥にあって分かりにくかったが、近くで見てみると仮面の男の瞳は紫色にも見える綺麗な色をしていた。
ヒカリに対して仮面の男はそっと手を伸ばす。
その手の出し方だけでヒカリを害する気がないことはよく分かる。
犬でも触るように下から触れる。
体格に似合わぬ優しい触り方だ。
仮面の奥の目が笑っている。
「こちらをお受け取りください」
「これは……?」
「正当な報酬でございます」
フィロンに差し出された紙をトモナリはさっと受け取ってしまった。
「報酬……?」
「お納めください。では失礼いたします」
渡された紙は小切手であった。
仮面の男はヒカリのことを一通り撫で回すとさっさと行ってしまった。
「一……十……百……十万か」
ちゃんと小切手の金額を確かめる暇もなかった。
あまり高額だと困るなと思いながら桁を数えてみると十万であった。
それぐらいなら高額ではない。
むしろヒカリを撫でただけなら高いぐらいかもしれない。
「……違うぞ」
「えっ?」
「十万‘円’ではなく十万‘ドル’だ」
「あっ……」
そう言えば最初の交渉もドルで提示してきた。
パッと日本円だろうと思ってしまっていたが、小切手をよくみるとドルであった。
「ちょ……こんなにもらっても困りますよー!」
もらった金額が想像よりもはるかに大きかった。
トモナリの叫びはすでにいない仮面の男には届かなかった。
ーーーーー
それなりにお金を持っていると思っていたが、会場にいる人たちと比べれば貧乏だと言われても反論できない。
最後に出てきた霊薬も目玉が飛び出そうな高額で落札されてオークションは終わった。
「失礼します。少しよろしいですか?」
オークション参加者にはホテルが宿泊できる部屋を用意してくれている。
せっかくだしいい部屋でのんびりしようと立ち上がったトモナリは声をかけられた。
オークション参加者の中には正体がバレたくないのか、仮面をつけて顔を隠している人もいた。
トモナリに声をかけてきたのは色黒の綺麗な顔を顔をした男性だったが、その後ろには仮面をつけた背の高い男性もいる。
「なんでしょうか?」
「お時間大丈夫ですか?」
日本人には見えないけれど、日本語が流暢だ。
「大丈夫ですが……」
「私はフィロンと申します。そちらのモンスター……貴方様のものでしょうか?」
フィロンはトモナリに抱えられているヒカリに視線を向けた。
「そうです」
もの、という言い方に引っ掛かりを覚えつつも、日本語話者でないのなら多少の言い方はしょうがないかと答える。
「こちらの方がそのモンスターを欲しがっております。売っていただけないでしょうか?」
「えっ?」
思わぬ交渉にトモナリは驚く。
「一億ドルお支払いいたします」
「ええっ!?」
さらりと提示された金額にまたしても驚く。
とんでもない金額だ。
それこそ一生遊んで暮らせる。
トモナリは仮面の男を見る。
顔全体を覆う仮面をつけているので顔は分からない。
ガッチリとした体格の男性なことは分かるけれど、声すらも分かっていない。
そんなお金をポンと出せる人なんて限られるだろうが、トモナリには仮面の男の正体の予想もついていない。
「いかがでしょうか?」
「申し訳ありませんが、こいつは商品じゃない。いくら積まれても売るつもりはありません」
「トモナリィ……」
一億ドルがすごい金額なことはヒカリも分かっている。
トモナリがヒカリのことを売るはずないと信じているものの、ちょっとドキドキしていた。
トモナリとしてはすごい金額だなと思っただけで少しも心は揺れていない。
ヒカリを手放すつもりなんて毛頭なかった。
一億ドルかけたってヒカリのような存在とまた契約できることなんてないし、お金を持っていたってこの先世界が荒れれば無用の長物になる。
何より友達を売るバカはいない。
ヒカリは感動して目をウルウルさせている。
フィロンは仮面の男に耳打ちする。
「…………分かりました。突然のお話、失礼いたしました。よろしければ別のことをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「お願いの内容によります」
トモナリはやや警戒しつつ答える。
「そちらのモンスターと触れ合わせていただくことはできるでしょうか?」
「触れ……えっ?」
「もっと分かりやすく言えば撫でさせてほしいということでございます」
「……そうですか。どうだ、ヒカリ?」
撫でるぐらいならトモナリとしては構わない。
マサヨシやクラスのみんなも時々撫でたりしている。
ヒカリさえよければトモナリが拒否することではなかった。
「むむぅ?」
ヒカリは仮面の男のことを見る。
ジーッと目を見つめ、仮面の男も堂々とヒカリのことを見つめ返す。
「うむ、よかろうなのだ!」
何か感じるものがあったのか、しばしの沈黙の後ヒカリは許可を出した。
「ただし仮面つけてて怪しいからトモナリに抱っこされたままじゃなきゃ嫌だぞ!」
仮面の男に敵意はなさそうだとヒカリは思った。
危ないことはしなさそう。
でも顔も出せない人を信用はしない。
「それでよろしいようです」
フィロンが確認を取ると仮面の男は大きく頷いた。
トモナリが仮面の男に近づくと、フィロンからほんのりと魔力が漏れ出して警戒をしているようだった。
単なる通訳ではなく、護衛も兼ねた覚醒者だったようである。
「どうぞ」
トモナリは抱きかかえたヒカリをずっと差し出す。
仮面の奥にあって分かりにくかったが、近くで見てみると仮面の男の瞳は紫色にも見える綺麗な色をしていた。
ヒカリに対して仮面の男はそっと手を伸ばす。
その手の出し方だけでヒカリを害する気がないことはよく分かる。
犬でも触るように下から触れる。
体格に似合わぬ優しい触り方だ。
仮面の奥の目が笑っている。
「こちらをお受け取りください」
「これは……?」
「正当な報酬でございます」
フィロンに差し出された紙をトモナリはさっと受け取ってしまった。
「報酬……?」
「お納めください。では失礼いたします」
渡された紙は小切手であった。
仮面の男はヒカリのことを一通り撫で回すとさっさと行ってしまった。
「一……十……百……十万か」
ちゃんと小切手の金額を確かめる暇もなかった。
あまり高額だと困るなと思いながら桁を数えてみると十万であった。
それぐらいなら高額ではない。
むしろヒカリを撫でただけなら高いぐらいかもしれない。
「……違うぞ」
「えっ?」
「十万‘円’ではなく十万‘ドル’だ」
「あっ……」
そう言えば最初の交渉もドルで提示してきた。
パッと日本円だろうと思ってしまっていたが、小切手をよくみるとドルであった。
「ちょ……こんなにもらっても困りますよー!」
もらった金額が想像よりもはるかに大きかった。
トモナリの叫びはすでにいない仮面の男には届かなかった。
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