「‘……はい、それでは五十六番様が五万三千ドルで落札となりました!’」
ようやく終わった。
そんな空気すらオークション会場にはあった。
「……それが目的だったのか?」
「ええ、今回の目玉ですよ」
「君が無駄なことをしないとは知っているが……落札した目的は気になるものだな」
「そのうち使うんですよ」
「そうか」
答えないのなら聞き出すことはしない。
マサヨシは短く答えるとシャンパンのお代わりを頼んだ。
「むっ? クロサキ……?」
シャンパンを受け取るマサヨシの視界にミクの姿が入ってきた。
薄暗い中、何かを抱えたミクはキョロキョロとしている。
マサヨシが軽く手を上げてやると、ミクはすぐにマサヨシを見つけて早足で近づいてきた。
「クロサキ、どうし……」
「トモナリ!」
「えっ? ふえっ!?」
ミクが抱えていた何かが胸から飛び出した。
聞き慣れた声が聞こえて振り向いたトモナリは、いきなり視界が真っ暗になって驚いた。
「んーふー! トモナリなのだぁ。トモナリの匂いなのだぁ〜」
顔面に何かがひっついて、頭のニオイが嗅がれていることはとりあえずトモナリにも分かった。
姿が見えなくとも何がひっついているのかも分かってはいる。
「申し訳ありません。抗えませんでした」
マサヨシの視線にミクはいつものように冷静沈着に答える。
「トモナリのところに行きたいとおっしゃられるので……」
ミクはスッと状況から目を逸らした。
「あれだけあったお菓子は?」
「……全部食べてしまいました」
「あれを全部か?」
「その……言い訳のしようもありません」
待っている間にミクとヒカリでお菓子を全部食べてしまった。
手持ち無沙汰になるとヒカリは待ちきれなくなって、トモナリのところに行きたいと言い始めた。
ミクも当然ダメだとは言ったのだけど、ヒカリがウルウルとした目をしてお願いするものだから負けてしまった。
ミクはクールなだけで冷酷な人ではない。
ヒカリのお願い攻撃を冷たくあしらえるほどに非情になれなかった。
「まあ……連れてきちゃったものはしょうがないですね」
トモナリはヒカリを顔面から引き剥がす。
ヒカリは怒らないで、と言わんばかりに目をキラキラさせている。
別にトモナリも怒ることはない。
こうなる可能性はあるかもしれないと思っていた。
たまたま注目度の高い商品が出ていて、他の人はオークションに集中している。
ヒカリの存在に気づいているのは周りの数人だけである。
騒ぎになると面倒だから少し大人しくしていてもらった。
状況的に騒ぎにならないのなら仕方ないと小さくため息をつくだけで終わらせる。
「クロサキさんもそんなに気にしなくていいですよ。悪いのはわがまま言ったヒカリですから」
ミクは珍しく少ししょんぼりとして見える。
トモナリはミクに対しても怒るつもりはない。
正直ヒカリにお願いされると断りにくいのはトモナリも同じだ。
だからお菓子というエサを置いてあったのだけど、思っていたよりも早々に食べ切ってしまった。
手持ち無沙汰だったから余計に食べるのが早かったのかもしれない。
「むふー!」
トモナリはヒカリを膝に乗せる。
オークションはまだ続いている。
一番の目的は確保したが、他にも欲しいと思うものはあった。
「トモナリ……あれ、なんだか良いものなのだ」
「あれが?」
「続きましては……A級ゲートから出てきたものとなっております。ただ何もわかりません! これがなんなのか鑑定しても情報が出てきません。それでもA級ゲートから出てきたものなので何かの価値はあるはずです!」
一般の人が見たら倒れてしまいそうな金額が飛び交うオークションの中で、次に出てきたものはただの箱だった。
手のひらぐらいの大きさの黒い木で出来た箱であるのだけど、オークション側でなんの箱なのか調べても情報が出てこなかった曰く付きの商品であった。
おそらく持ち主も何も分からなかったからオークションに出したのだろうとトモナリは思った。
入札が始まったけれど金額が動かない。
A級ゲートから出たものだとしてもどう利用して良いかも分からない箱にお金を出す物好きはいない。
まだまだオークションは続くし、一般公開されていない目玉商品も出ていないので、お金は少しでも温存したいのだろう。
しかしトモナリは箱の入札に参加した。
ようやく入札があって司会も嬉しそうな顔をする。
「あれから何か感じるのか?」
「うぬ。強い力を感じるのだ」
会場にいる誰にも分からないが、ヒカリは箱から何かを感じ取っていた。
ドラゴンであるヒカリが感じるなら何かがある。
トモナリは箱を買ってみることにした。
「‘56番様ご落札です!’」
結局他に入札はなく、トモナリはお手頃価格で箱を手に入れることができた。
箱以外にも欲しいなと思ったりしたものに入札はしたものの、お金持ちや現役で活躍している覚醒者の資金力には敵わなかった。
目玉商品となるゲートから出てきた剣は、日本円にして何十億という金額で落札されていたぐらいである。
「ううむ……あれ一個でお菓子何個買えるのだ……」
とんでもない金額が飛んでいったオークションにヒカリも驚きを隠せない。
お菓子で換算すれば何年かけても食べ切るのが難しいほどである。
ようやく終わった。
そんな空気すらオークション会場にはあった。
「……それが目的だったのか?」
「ええ、今回の目玉ですよ」
「君が無駄なことをしないとは知っているが……落札した目的は気になるものだな」
「そのうち使うんですよ」
「そうか」
答えないのなら聞き出すことはしない。
マサヨシは短く答えるとシャンパンのお代わりを頼んだ。
「むっ? クロサキ……?」
シャンパンを受け取るマサヨシの視界にミクの姿が入ってきた。
薄暗い中、何かを抱えたミクはキョロキョロとしている。
マサヨシが軽く手を上げてやると、ミクはすぐにマサヨシを見つけて早足で近づいてきた。
「クロサキ、どうし……」
「トモナリ!」
「えっ? ふえっ!?」
ミクが抱えていた何かが胸から飛び出した。
聞き慣れた声が聞こえて振り向いたトモナリは、いきなり視界が真っ暗になって驚いた。
「んーふー! トモナリなのだぁ。トモナリの匂いなのだぁ〜」
顔面に何かがひっついて、頭のニオイが嗅がれていることはとりあえずトモナリにも分かった。
姿が見えなくとも何がひっついているのかも分かってはいる。
「申し訳ありません。抗えませんでした」
マサヨシの視線にミクはいつものように冷静沈着に答える。
「トモナリのところに行きたいとおっしゃられるので……」
ミクはスッと状況から目を逸らした。
「あれだけあったお菓子は?」
「……全部食べてしまいました」
「あれを全部か?」
「その……言い訳のしようもありません」
待っている間にミクとヒカリでお菓子を全部食べてしまった。
手持ち無沙汰になるとヒカリは待ちきれなくなって、トモナリのところに行きたいと言い始めた。
ミクも当然ダメだとは言ったのだけど、ヒカリがウルウルとした目をしてお願いするものだから負けてしまった。
ミクはクールなだけで冷酷な人ではない。
ヒカリのお願い攻撃を冷たくあしらえるほどに非情になれなかった。
「まあ……連れてきちゃったものはしょうがないですね」
トモナリはヒカリを顔面から引き剥がす。
ヒカリは怒らないで、と言わんばかりに目をキラキラさせている。
別にトモナリも怒ることはない。
こうなる可能性はあるかもしれないと思っていた。
たまたま注目度の高い商品が出ていて、他の人はオークションに集中している。
ヒカリの存在に気づいているのは周りの数人だけである。
騒ぎになると面倒だから少し大人しくしていてもらった。
状況的に騒ぎにならないのなら仕方ないと小さくため息をつくだけで終わらせる。
「クロサキさんもそんなに気にしなくていいですよ。悪いのはわがまま言ったヒカリですから」
ミクは珍しく少ししょんぼりとして見える。
トモナリはミクに対しても怒るつもりはない。
正直ヒカリにお願いされると断りにくいのはトモナリも同じだ。
だからお菓子というエサを置いてあったのだけど、思っていたよりも早々に食べ切ってしまった。
手持ち無沙汰だったから余計に食べるのが早かったのかもしれない。
「むふー!」
トモナリはヒカリを膝に乗せる。
オークションはまだ続いている。
一番の目的は確保したが、他にも欲しいと思うものはあった。
「トモナリ……あれ、なんだか良いものなのだ」
「あれが?」
「続きましては……A級ゲートから出てきたものとなっております。ただ何もわかりません! これがなんなのか鑑定しても情報が出てきません。それでもA級ゲートから出てきたものなので何かの価値はあるはずです!」
一般の人が見たら倒れてしまいそうな金額が飛び交うオークションの中で、次に出てきたものはただの箱だった。
手のひらぐらいの大きさの黒い木で出来た箱であるのだけど、オークション側でなんの箱なのか調べても情報が出てこなかった曰く付きの商品であった。
おそらく持ち主も何も分からなかったからオークションに出したのだろうとトモナリは思った。
入札が始まったけれど金額が動かない。
A級ゲートから出たものだとしてもどう利用して良いかも分からない箱にお金を出す物好きはいない。
まだまだオークションは続くし、一般公開されていない目玉商品も出ていないので、お金は少しでも温存したいのだろう。
しかしトモナリは箱の入札に参加した。
ようやく入札があって司会も嬉しそうな顔をする。
「あれから何か感じるのか?」
「うぬ。強い力を感じるのだ」
会場にいる誰にも分からないが、ヒカリは箱から何かを感じ取っていた。
ドラゴンであるヒカリが感じるなら何かがある。
トモナリは箱を買ってみることにした。
「‘56番様ご落札です!’」
結局他に入札はなく、トモナリはお手頃価格で箱を手に入れることができた。
箱以外にも欲しいなと思ったりしたものに入札はしたものの、お金持ちや現役で活躍している覚醒者の資金力には敵わなかった。
目玉商品となるゲートから出てきた剣は、日本円にして何十億という金額で落札されていたぐらいである。
「ううむ……あれ一個でお菓子何個買えるのだ……」
とんでもない金額が飛んでいったオークションにヒカリも驚きを隠せない。
お菓子で換算すれば何年かけても食べ切るのが難しいほどである。

