「今ごろ二人でお菓子でも食べていることだろうな」
ヒカリをうまく引き止めるためにお菓子を山盛り用意してきた。
ミクもお菓子は好きらしいので、上手くやってくれていればお菓子を食べていることだろう。
「少し早いが会場に移動しよう。時間になると混むからな」
マサヨシが時計を確認する。
オークションの時間も迫っている。
あまりギリギリだと人の移動に巻き込まれてしまう。
トモナリとマサヨシは早めに動く。
ホテルの地下にエレベーターで降りる。
エレベーターの扉が開くと白い通路。
監視カメラに見られながら通路を進むと突き当たりに黒服の覚醒者が二人、扉の前に立っている。
「お名前と招待状を」
「キトウマサヨシ。これが招待状だ」
マサヨシがスーツの内ポケットから黒い封筒を取り出す。
黒服の覚醒者が封筒を受け取って魔力を込めると、うっすらと模様が浮かび上がる。
中身ではなく、封筒そのものが招待状となっているのかと少し驚いてしまう。
「確認が取れました。ご協力感謝いたします」
黒服の覚醒者が扉をゆっくりと開く。
ホテルの地下にはオークション会場となるホールがあった。
トモナリたちはだいぶ早めに動いたのだが、もうすでにちらほらと会場には人がいた。
「何か飲み物はいるか?」
「あっ……じゃあ炭酸水でも」
トモナリとて緊張しないわけじゃない。
初めてのオークション、しかも上流階級のオークションに少し口が乾いていた。
お茶でもと考えていたが、オークションの直前にお茶というのも何だか雰囲気にそぐわないと思った。
軽くお酒でもいいのだけど、トモナリはまだ未成年である。
悩んだ末にノンアルコールのドリンクで思いついたのが炭酸水だった。
「シャンパンと炭酸水を」
「かしこまりました」
「シャンパン……ですか」
「せっかくなら少しは楽しまんとな」
羨ましいなとトモナリは思った。
中身はとっくに成人を迎えている。
回帰前はお酒を普通に飲んでいたし、辛い日常の中では癒しになっていたような時期もある。
今はもう酒に寄りかかるつもりはないものの、多少は飲みたいなと思うこともある。
「あらぁ? マサヨシじゃない?」
シャンパンと炭酸水が運ばれてきて、トモナリはちびちび飲んで口の中を潤す。
会場に人が増えてきたなと思っていたら、マサヨシに声をかけてきた女性がいた。
金髪に澄んだ青い瞳をした美人な人で、肩の出た赤いドレスを身につけている。
「久しぶりね」
「久しぶりだな、シンクレア」
マサヨシは横にシャンパングラスを置くと立ち上がって手を差し出す。
「引退したと聞いていたけれど……」
シンクレアと呼ばれた女性は握手に応じながらマサヨシの顔をじっと見つめる。
どんな関係なのか分からないが、雰囲気を見る限りでは少なくとも険悪な間柄ではなさそうだ。
「一線は退いた。しかし俺には俺のできることがあるからな」
「あなたらしいわね」
「君こそどうしてここに?」
「ここにいる目的なんて一つしかないでしょう? それよりもその子は? 私に黙って結婚でもした?」
シンクレアはトモナリのことを見る。
オークション会場にいるということは権力やお金、地位のある人ということになる。
トモナリも立ち上がって失礼がないようにしてあった。
「相変わらず独身だよ。この子は……戦友みたいなものだ」
「戦友……ずいぶんと若い戦友ね」
シンクレアは驚いたような顔をしていた。
トモナリも驚いた。
戦友という表現をされるとは思わなかったからだ。
軽い意味で使うこともあるけれど、シンクレアの驚いたような顔を見るにマサヨシが軽く戦友と口にするとは思えなかった。
「私はシンクレア・ランティルよ。よろしくね」
「アイゼントモナリです。よろしくお願いします」
握手をして分かった。
シンクレアは覚醒者だ。
しかもかなりしっかりとした実力の持ち主である。
握手をした時に手のひらに豆の感触を感じた。
剣を振り続けてきた人の手のひらをしている。
パッ見では華やかな人であるが、努力を重ねてきたことをしっかりとトモナリは理解した。
「積もる話はあるけれど……人が集まってきたわね」
オークション開始の時間が迫って、人が増えてきた。
長い立ち話をするのにはふさわしくなくなってしまった。
「また今度ね。アイゼン君、覚えておくわ」
優しい微笑みを残してシンクレアは自分の席に向かった。
「お知り合い……ですか?」
「……ああ、昔共に活動していたことがある。日本で活動していたこともあるから日本語が上手いだろう?」
単に仲間だった。
それ以上の雰囲気があるようには思ったものの、トモナリは踏み込んで聞くようなことはしなかった。
マサヨシが話さないことを聞き出すことはできない。
「今はアメリカで大きなギルドの役員をやっているはずだ。まだ彼女自身も活動をしている。高レベル、優秀なスキル持ちの良い覚醒者だ」
「そうなんですね」
気づくとオークションの時間も間近に迫っていた。
トモナリは改めてオークションの出品目録を確認する。
「競り合うこともあるかもしれないが、資金は大丈夫なのか?」
「……うーん、多分大丈夫だとは思うんですけどね」
一応トモナリもそれなりにお金を持っている。
高いものを競り落とすつもりはないが、あまり人と競るようなら諦める必要もある。
目的のものは是非とも競り落としたい。
最悪の場合は目的のものに全力を投じることになるだろう。
ヒカリをうまく引き止めるためにお菓子を山盛り用意してきた。
ミクもお菓子は好きらしいので、上手くやってくれていればお菓子を食べていることだろう。
「少し早いが会場に移動しよう。時間になると混むからな」
マサヨシが時計を確認する。
オークションの時間も迫っている。
あまりギリギリだと人の移動に巻き込まれてしまう。
トモナリとマサヨシは早めに動く。
ホテルの地下にエレベーターで降りる。
エレベーターの扉が開くと白い通路。
監視カメラに見られながら通路を進むと突き当たりに黒服の覚醒者が二人、扉の前に立っている。
「お名前と招待状を」
「キトウマサヨシ。これが招待状だ」
マサヨシがスーツの内ポケットから黒い封筒を取り出す。
黒服の覚醒者が封筒を受け取って魔力を込めると、うっすらと模様が浮かび上がる。
中身ではなく、封筒そのものが招待状となっているのかと少し驚いてしまう。
「確認が取れました。ご協力感謝いたします」
黒服の覚醒者が扉をゆっくりと開く。
ホテルの地下にはオークション会場となるホールがあった。
トモナリたちはだいぶ早めに動いたのだが、もうすでにちらほらと会場には人がいた。
「何か飲み物はいるか?」
「あっ……じゃあ炭酸水でも」
トモナリとて緊張しないわけじゃない。
初めてのオークション、しかも上流階級のオークションに少し口が乾いていた。
お茶でもと考えていたが、オークションの直前にお茶というのも何だか雰囲気にそぐわないと思った。
軽くお酒でもいいのだけど、トモナリはまだ未成年である。
悩んだ末にノンアルコールのドリンクで思いついたのが炭酸水だった。
「シャンパンと炭酸水を」
「かしこまりました」
「シャンパン……ですか」
「せっかくなら少しは楽しまんとな」
羨ましいなとトモナリは思った。
中身はとっくに成人を迎えている。
回帰前はお酒を普通に飲んでいたし、辛い日常の中では癒しになっていたような時期もある。
今はもう酒に寄りかかるつもりはないものの、多少は飲みたいなと思うこともある。
「あらぁ? マサヨシじゃない?」
シャンパンと炭酸水が運ばれてきて、トモナリはちびちび飲んで口の中を潤す。
会場に人が増えてきたなと思っていたら、マサヨシに声をかけてきた女性がいた。
金髪に澄んだ青い瞳をした美人な人で、肩の出た赤いドレスを身につけている。
「久しぶりね」
「久しぶりだな、シンクレア」
マサヨシは横にシャンパングラスを置くと立ち上がって手を差し出す。
「引退したと聞いていたけれど……」
シンクレアと呼ばれた女性は握手に応じながらマサヨシの顔をじっと見つめる。
どんな関係なのか分からないが、雰囲気を見る限りでは少なくとも険悪な間柄ではなさそうだ。
「一線は退いた。しかし俺には俺のできることがあるからな」
「あなたらしいわね」
「君こそどうしてここに?」
「ここにいる目的なんて一つしかないでしょう? それよりもその子は? 私に黙って結婚でもした?」
シンクレアはトモナリのことを見る。
オークション会場にいるということは権力やお金、地位のある人ということになる。
トモナリも立ち上がって失礼がないようにしてあった。
「相変わらず独身だよ。この子は……戦友みたいなものだ」
「戦友……ずいぶんと若い戦友ね」
シンクレアは驚いたような顔をしていた。
トモナリも驚いた。
戦友という表現をされるとは思わなかったからだ。
軽い意味で使うこともあるけれど、シンクレアの驚いたような顔を見るにマサヨシが軽く戦友と口にするとは思えなかった。
「私はシンクレア・ランティルよ。よろしくね」
「アイゼントモナリです。よろしくお願いします」
握手をして分かった。
シンクレアは覚醒者だ。
しかもかなりしっかりとした実力の持ち主である。
握手をした時に手のひらに豆の感触を感じた。
剣を振り続けてきた人の手のひらをしている。
パッ見では華やかな人であるが、努力を重ねてきたことをしっかりとトモナリは理解した。
「積もる話はあるけれど……人が集まってきたわね」
オークション開始の時間が迫って、人が増えてきた。
長い立ち話をするのにはふさわしくなくなってしまった。
「また今度ね。アイゼン君、覚えておくわ」
優しい微笑みを残してシンクレアは自分の席に向かった。
「お知り合い……ですか?」
「……ああ、昔共に活動していたことがある。日本で活動していたこともあるから日本語が上手いだろう?」
単に仲間だった。
それ以上の雰囲気があるようには思ったものの、トモナリは踏み込んで聞くようなことはしなかった。
マサヨシが話さないことを聞き出すことはできない。
「今はアメリカで大きなギルドの役員をやっているはずだ。まだ彼女自身も活動をしている。高レベル、優秀なスキル持ちの良い覚醒者だ」
「そうなんですね」
気づくとオークションの時間も間近に迫っていた。
トモナリは改めてオークションの出品目録を確認する。
「競り合うこともあるかもしれないが、資金は大丈夫なのか?」
「……うーん、多分大丈夫だとは思うんですけどね」
一応トモナリもそれなりにお金を持っている。
高いものを競り落とすつもりはないが、あまり人と競るようなら諦める必要もある。
目的のものは是非とも競り落としたい。
最悪の場合は目的のものに全力を投じることになるだろう。

