ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした

『あなたのおかげで永遠に続くと思われた冬は明けました』

 地面の草の間から小さな花々が生えてきている。
 他の小さな精霊たちは花々に集まり、キャッキャと花を愛でている。

『春もあり……冬もある。世界の正しき姿を取り戻してくださって感謝いたします。あなたにこれを』

 春の精霊は手を広げる。
 すると胸から光る何かが飛び出してきた。

「……タネ、なのだ?」

 春の精霊の胸から飛び出してきたものは何かのタネだった。

『手を』

 トモナリは言われるがままに春の精霊に手を差し出す。
 そっとトモナリの手に置かれたタネは手のひらほどの大きさがあってデカいという他に、不思議な生命力なようなものをトモナリに感じさせる。

『これは世界樹のタネ。全ての生命の母となる多いなる存在です』

「世界樹のタネだって!? おおっと!?」

 トモナリは驚いてタネを落としかけてしまう。
 世界樹という存在はいくつかのゲートで確認される。

 明確にどんなものかゲートの中で語られることはないのだけど、どの世界にとっても重要な存在であることは間違いない。
 しかしこの世界にも世界樹が現れたことがある。

 回帰前のある時にとある人が世界樹のタネを植えて、世界樹を世界に根付かせた。
 世界樹の枝は魔法を使う触媒や魔道具、武器となり、世界樹の実は怪我を癒やして覚醒者の力を強化した。

 何よりも世界樹は、モンスターを退けて人々を保護をしてくれたのである。
 結局モンスターの侵攻によって世界樹は無惨に倒されてしまった。

 世界樹の利用がもうちょっと早く、そしてもっとしっかり守っていれば変わっていたこともあるかもしれない。
 こんなところで世界樹のタネが手に入るのかとトモナリは驚いたのである。

『完全な世界樹のタネ
 強い生命を秘めた世界樹のタネ。
 春の精霊を助け出したことにより、生命を損なうことがなかった。
 発芽させるためには特殊な環境を整える必要がある。
 世界樹はあなたに感謝しています』

 世界樹のタネの説明を見てみる。
 確かに世界樹のタネだ。

 加えて‘完全な’なんて文言もついている。
 トモナリは世界樹のところに行ったことはあるが、成長に関わったことはない。

 だがどこかで世界樹を育てた人のインタビューを見たことがある。
 世界樹のタネは不完全な存在であり、発芽させるのに非常に苦労したと自慢げに答えていた。

 今手にしているのは完全な世界樹のタネ。
 もしかしたら春の精霊を助けたから完全なタネをもらえたのかもしれないとトモナリは思った。

『これも差し上げましょう』

『一握りの母なる肥料
 世界樹の実を混ぜて作られた肥料。
 土をより世界樹の発芽にふさわしい状態にしてくれる』

 トモナリのインベントリがパッと表示されて、一つのアイテムが追加された。

『これがあなたたちの世界の希望にならんことを願います』

「トモナリくーん!」

「あっ、みんななのだ!」

 ミズキたちが来て、ヒカリは手を振る。

「無事だったんだな。ボスは?」

「きいてよ! 急にあいつの氷割れたと思ったら地面からツタが伸びてきて拘束されちゃったんだよ!」

「その隙をついて倒したんだ。最後はラクショーだったな」

「それって……」

 トモナリは春の精霊を見る。
 春の精霊はニコリと笑っただけで明確に答えることはなかった。

『うーん! お仕事終わり!』

 急に春の精霊は両手を上げながら飛び上がった。

『ありがとう、優しい人! 私たちはまた春を暖かさを楽しむよ! またきっと冬は来る。でもそのうち冬は明けて、また春が来る』

「あれ……ここってこんな花咲いてたっけ?」

 気づけば地面は一面色とりどりの花畑になっていた。

『春! 今度は悪い冬にも負けないわ!』

「うわっ!」

 風が吹いた。
 花びらが風に舞い上がって、世界が色に染まる。

『それ、大切にしてね!』

 春の精霊は満面の笑みを浮かべた。
 外は夏。

 なのに冬と春を経験して、トモナリはとても不思議な気分になったのであった。