ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした

「もう忘れないもんね!」

 ミズキは胸を張る。
 温かくなってきてちょっと元気になった。

「まあ、そろそろ警戒するぞ」

 ゲートから離れてきた。
 もういつモンスターが出てきてもおかしくない。

「出てくるモンスターは確認できていないんですよね?」

「はい。ドローンによる事前調査ではモンスターは見つかりませんでした」

 雪山があるなどの調査はゲートに入ってすぐの場所からドローンで行われた。
 直接誰かがゲートの中を歩き回って得られた情報ではない。

 基本的にドローン調査でモンスターが見つかることも多いのだけど、隠れるモンスターがいたりドローンにも反応しないモンスターがいたりする。

「にしても……」

 トモナリは周りの様子を確認する。
 ひたすら雪しかない。

 隠れられるような場所はなく、ドローンに映らないというのもおかしな話だ。

「みんなもしっかりも警戒するように。奇襲の可能性が大きい」

 表を出歩いていなくともモンスターがいないなんてことはまずあり得ない。
 となるとどこかにモンスターがいる。

 つまり潜んでいるのだ。
 こうしたモンスターは奇襲してくることが多い。

「コウ! 下がれ!」

 ザクザクと雪を踏み締めて歩いていると不自然に雪が盛り上がっているところがあった。
 おかしいなと思ってトモナリは警戒していた。

 すると盛り上がっているところがさらにボコっと動いた。
 何かが雪の中から飛び出してきて、トモナリは手にルビウスを召喚しながら飛び出したものに向かう。

「くっ!」

 飛び出してきたものは真っ白なサルのようなモンスターだった。
 ややモコモコとしていて顔や手など毛がないところは黒い。

 言うなれば小さい雪男みたいだとトモナリは思った。
 コウも体を鍛えていて、トモナリとトレーニングを重ねている。

 狙われたら何もできない魔法使いとは違う。
 振り下ろされた鋭い爪をかわし、走ってくるトモナリの後ろに素早く下がる。

「はああっ!」

 剣に炎をまとい、白いサルのことを斬りつける。
 斬られると白いサルはけたたましい叫び声をあげて地面に倒れた。

「来るぞ! みんな戦闘体制だ!」

 白いサルの断末魔に呼応するように地面の雪がボコボコと盛り上がる。
 そして雪の中から何匹もの白いサルが出てきた。

 一体目は油断していたし簡単に倒せた。
 だが、もうそう簡単にはいかないだろう。

 サーシャが盾を構えて前に出る。
 白いサルは叫び声を上げながらサーシャに襲いかかり、サーシャは盾を使って巧みに白いサルの攻撃をいなす。

「わははー! やるのだー!」

 トモナリによってポカポカにあったまったヒカリも、服の中から飛び出して戦う。
 飛びかかってきた白いサルを空中でひらりとかわして、反対に爪で切り裂く。

 イワヤとダテには自由に動いてもらう。
 二人もオウルグループで働く経験者だし、トモナリは二人の実力や動きが分からない。

 変に固定した役割を与えるより自由に動いてもらった方がいいだろうと考えた。
 イワヤは小さめの盾と剣を使った安定的なスタイルで、ダテは槍を使って果敢に攻めていくスタイルであった。

「お披露目! 私の光丸!」

 ミズキが刀を抜きざまに振り抜いた。
 オウルグループによって作ってもらったものだが、ミスリル採掘にも協力したのでミスリル入りの良い武器となっている。

 実戦で使うのは初めてであり、切れ味の高さにミズキも思わずニンマリしてしまう。
 刀の名前は丸らしい。

 どこからとったのかは一目瞭然だ。

「怪我した奴はいるか?」

「大丈夫!」

「うむ、こんな奴らに負けるはずがないのだ!」

 あっという間に戦いは終わった。
 少し拍子抜けだなとは思うものの、怪我なく終われるのならその方がいい。

「イエティ、ビッグフット系のモンスターだな」

 倒した白いサルをインベントリに入れながら観察する。
 雪の環境に現れるサルのようなモンスターはイエティ系やビッグフット系と呼ばれることが多い。

 実際はサルの仲間だろうが、大型の種類になるとUMAとして話を聞くイエティのようなのである。

「ただ楽だったな」

 ゲートの難易度はEクラス。
 レベルの目安としては20から40ぐらいと幅があるので、一概にどれほど難しいかは言えないが、レベル40近くの難易度ではなさそうだ。

「特殊能力、魔法はなし。接近戦メインで、動きは素早いけど力は強くない」

 ミニイエティのサイズは人の腰ほどのサイズしかない。
 どちらかといえばゴブリンやコボルトに近いサイズである。

 今のところ脅威となる能力はない。

「雪の中からの奇襲に気をつけて進んでいこう」

 雪から突然飛び出してくることが厄介といえば厄介だ。
 とりあえず引き返す要素もないのでそのまま進んでいくことにした。