「ちょっと物々しいですね」
「ふっ、悪いな」
ヴィラの中には黒服姿の人たちがいた。
ただの黒服ではなくそれぞれ剣などの武器を腰に差している。
よくみると黒服の内側に防具もチラリと見える。
オウルグループの療養地なのでオウルグループの人がいてもおかしくはないのだが、会社員という感じではない。
誰かの護衛みたいだなとトモナリは思った。
「みんな僕のことを見ているのだ〜」
トモナリの頭にしがみついているヒカリは笑顔で黒服に手を振っている。
顔をほころばせるような人もいるが、多くの人はヒカリのファンサービスを無表情で受けて入れている。
ヴィラの奥に進むと部屋の前に二人の黒服が立っていた。
身長二メートルはありそうな大柄の男性とサングラスをかけた女性の黒服は、パッと見てすぐに覚醒者だと分かるオーラをしている。
「そちらの方が?」
「そうです」
女性の方がジロリとトモナリのことを見る。
警戒するような視線に、呼ばれてきたのはこっちなのになとトモナリは思った。
「失礼しました。お入りください」
ただ護衛という仕事が難しいことも理解はしている。
覚醒者という存在の出現で人を守ることが非常に困難になった。
覚醒者の刃は一瞬で迫り来る。
護衛対象が覚醒者ならともかく一般人だと対応なんてできない。
覚醒者にはインベントリという能力がある。
レベル10以上で解放されるので、ほとんどの人に大なり小なりインベントリがあることになる。
一般の人なら武器を持ち込まないようにすることやチェックすることもさほど難しくないが、覚醒者のインベントリの中身は本人しか把握出来ない。
インベントリの中身を全て出させることも本人の協力によるので現実的ではない。
相手が覚醒者かどうか、あるいはどのレベルにあるのか。
そんなことも見て判別するのは簡単じゃない。
つまり護衛が狙われた対象を守ることはかなり大変なのである。
トモナリのことを強く警戒しても仕方のないことである。
「待っていた。君に逢いたかったぞ」
「…………お父様!」
部屋の中に入ると一人の男性がいた。
白髪混じりの黒髪に男性な顔立ちをした中年はバスローブ姿だった。
前を結んでおらず、ぴっちりとした下着姿がチラリどころではなく見えている。
カエデは珍しく顔を赤くして声を荒らげる。
「お客を迎えるために体をキレイにしていたのだ」
バスローブの男はなんでこともないように笑う。
見れないようなだらしない体ではなく、鍛えられた引き締まった体ではある。
ただなんで半裸姿なのかはトモナリも気になる。
「非常に冷静な性格をしているな」
バスローブの男は、テーブルに置いてあったお酒の入ったコップを手に取ってトモナリの前に立つ。
近づいてみるとトモナリよりも頭半分ほど大きい。
「俺の名前は梟大将(フクロウタイショウ)。カエデの父……そしてオウルグループの社長だ」
覚醒者とはまた違った圧力を感じる人である。
全てを見透かすような目をしていて、格好を忘れてしまうぐらいの雰囲気がある。
「人は想定にないものに遭遇した時に本性が見える。俺を見ても君は眉ひとつ動かさなかったな。まるで老練したもののように落ち着いている」
「驚きましたよ? だいぶ……」
こんな状況なので誰が待ち受けているのか、なんとなく予想していた。
いざ部屋に入ると半裸の男性がいたのだからトモナリも普通に驚いた。
「驚いても顔に出さないということはなかなかできるものじゃない。すまないな。変な試し方をして」
タイショウはバスローブの前を閉じる。
ほんのわずかな動揺から人を見抜くこともできる。
トモナリがどんな人なのか見抜こうとわざと半裸バスローブ姿でいたのである。
変わった人というべきか、それとも大胆だというべきなのか、トモナリには判断できなかった。
「それで……何の用で俺を呼んだんですか?」
タイショウはオウルグループの社長である。
オウルグループは日本でも有数の大企業であり、その社長ともなればトモナリが簡単に会える人ではない。
そんな人に呼ばれるような理由は特に思いつかなかった。
「俺がオウルグループの社長と聞いても態度は変わらないか。それはいいな」
トモナリが変に下手に出ることもなくタイショウは笑顔を浮かべる。
「座ってくれ。君はまだ未成年……だもんな。何か飲みたいものはあるか?」
お酒でもいいですよと言いたかった。
回帰前には当然お酒なんかも飲んでいた。
飲まなきゃやっていられないような時もあったし、お酒は嫌いじゃなかった。
ただ今はまだ未成年である。
お酒くださいとは言えない。
「ジュースがいいのだ!」
ヒカリが手を上げて答える。
「君が噂のドラゴン君か。聞きしに勝る可愛らしさがあるな」
「じゃあ俺は水で」
これからシェフの料理も待っている。
カエデが用意してくれたシェフなのだから料理の腕にも期待できる。
あまり変にお腹に物を入れないようにしておくつもりだった。
「ジュースか……色々あるぞ」
タイショウが部屋にある冷蔵庫を開くと中にはドリンクが詰まっていた。
お酒の他にソフトドリンクも揃えてある。
「じゃあ……それなのだ!」
「これだな」
ヒカリが指したのは乳酸菌飲料であった。
タイショウはウィスキーグラスを手に取ると丸い氷を入れて乳酸菌飲料を注ぐ。
それだけで少しオシャレだ。
「ふっ、悪いな」
ヴィラの中には黒服姿の人たちがいた。
ただの黒服ではなくそれぞれ剣などの武器を腰に差している。
よくみると黒服の内側に防具もチラリと見える。
オウルグループの療養地なのでオウルグループの人がいてもおかしくはないのだが、会社員という感じではない。
誰かの護衛みたいだなとトモナリは思った。
「みんな僕のことを見ているのだ〜」
トモナリの頭にしがみついているヒカリは笑顔で黒服に手を振っている。
顔をほころばせるような人もいるが、多くの人はヒカリのファンサービスを無表情で受けて入れている。
ヴィラの奥に進むと部屋の前に二人の黒服が立っていた。
身長二メートルはありそうな大柄の男性とサングラスをかけた女性の黒服は、パッと見てすぐに覚醒者だと分かるオーラをしている。
「そちらの方が?」
「そうです」
女性の方がジロリとトモナリのことを見る。
警戒するような視線に、呼ばれてきたのはこっちなのになとトモナリは思った。
「失礼しました。お入りください」
ただ護衛という仕事が難しいことも理解はしている。
覚醒者という存在の出現で人を守ることが非常に困難になった。
覚醒者の刃は一瞬で迫り来る。
護衛対象が覚醒者ならともかく一般人だと対応なんてできない。
覚醒者にはインベントリという能力がある。
レベル10以上で解放されるので、ほとんどの人に大なり小なりインベントリがあることになる。
一般の人なら武器を持ち込まないようにすることやチェックすることもさほど難しくないが、覚醒者のインベントリの中身は本人しか把握出来ない。
インベントリの中身を全て出させることも本人の協力によるので現実的ではない。
相手が覚醒者かどうか、あるいはどのレベルにあるのか。
そんなことも見て判別するのは簡単じゃない。
つまり護衛が狙われた対象を守ることはかなり大変なのである。
トモナリのことを強く警戒しても仕方のないことである。
「待っていた。君に逢いたかったぞ」
「…………お父様!」
部屋の中に入ると一人の男性がいた。
白髪混じりの黒髪に男性な顔立ちをした中年はバスローブ姿だった。
前を結んでおらず、ぴっちりとした下着姿がチラリどころではなく見えている。
カエデは珍しく顔を赤くして声を荒らげる。
「お客を迎えるために体をキレイにしていたのだ」
バスローブの男はなんでこともないように笑う。
見れないようなだらしない体ではなく、鍛えられた引き締まった体ではある。
ただなんで半裸姿なのかはトモナリも気になる。
「非常に冷静な性格をしているな」
バスローブの男は、テーブルに置いてあったお酒の入ったコップを手に取ってトモナリの前に立つ。
近づいてみるとトモナリよりも頭半分ほど大きい。
「俺の名前は梟大将(フクロウタイショウ)。カエデの父……そしてオウルグループの社長だ」
覚醒者とはまた違った圧力を感じる人である。
全てを見透かすような目をしていて、格好を忘れてしまうぐらいの雰囲気がある。
「人は想定にないものに遭遇した時に本性が見える。俺を見ても君は眉ひとつ動かさなかったな。まるで老練したもののように落ち着いている」
「驚きましたよ? だいぶ……」
こんな状況なので誰が待ち受けているのか、なんとなく予想していた。
いざ部屋に入ると半裸の男性がいたのだからトモナリも普通に驚いた。
「驚いても顔に出さないということはなかなかできるものじゃない。すまないな。変な試し方をして」
タイショウはバスローブの前を閉じる。
ほんのわずかな動揺から人を見抜くこともできる。
トモナリがどんな人なのか見抜こうとわざと半裸バスローブ姿でいたのである。
変わった人というべきか、それとも大胆だというべきなのか、トモナリには判断できなかった。
「それで……何の用で俺を呼んだんですか?」
タイショウはオウルグループの社長である。
オウルグループは日本でも有数の大企業であり、その社長ともなればトモナリが簡単に会える人ではない。
そんな人に呼ばれるような理由は特に思いつかなかった。
「俺がオウルグループの社長と聞いても態度は変わらないか。それはいいな」
トモナリが変に下手に出ることもなくタイショウは笑顔を浮かべる。
「座ってくれ。君はまだ未成年……だもんな。何か飲みたいものはあるか?」
お酒でもいいですよと言いたかった。
回帰前には当然お酒なんかも飲んでいた。
飲まなきゃやっていられないような時もあったし、お酒は嫌いじゃなかった。
ただ今はまだ未成年である。
お酒くださいとは言えない。
「ジュースがいいのだ!」
ヒカリが手を上げて答える。
「君が噂のドラゴン君か。聞きしに勝る可愛らしさがあるな」
「じゃあ俺は水で」
これからシェフの料理も待っている。
カエデが用意してくれたシェフなのだから料理の腕にも期待できる。
あまり変にお腹に物を入れないようにしておくつもりだった。
「ジュースか……色々あるぞ」
タイショウが部屋にある冷蔵庫を開くと中にはドリンクが詰まっていた。
お酒の他にソフトドリンクも揃えてある。
「じゃあ……それなのだ!」
「これだな」
ヒカリが指したのは乳酸菌飲料であった。
タイショウはウィスキーグラスを手に取ると丸い氷を入れて乳酸菌飲料を注ぐ。
それだけで少しオシャレだ。

