「暇だといえば嘘になるが、他の奴らほど忙しくもない。課外活動部の他のやつも進路は早めに決まってて余裕があるみたいだな」
「そうなんですか」
余裕があるというのも他の生徒に比べてという話だ。
やはり忙しいことに変わりはなく、なかなかトモナリも三年生の先輩たちと会えていない。
一年の時に三年だったフウカなんかからは、体験に行ったイガラシギルドに行くことにしたというメッセージをもらっていたこともあった。
今の三年生たちのなんとなくは聞いたりしていたが、細かくは知らなかった。
「余裕があるからフクロウ先輩の水着姿を眺めに来たんですか?」
「なっ……! お前っ!」
トモナリの軽い冗談。
しかしタケルは顔を真っ赤にしながらも思わずカエデのことを見る。
タケルがカエデに対してどんな感情を抱いているのかはみんな知っている。
カエデの方はどこまでの思いなのか測りかねるけれども、タケルを大切に思っていることはトモナリにもわかる。
「先輩スタイルいいですもん……」
「見るな、殺すぞ」
「先輩? 痛いですよ?」
トモナリがカエデを見ようとすると、タケルがトモナリの顔面を鷲掴みにした。
流石、カエデが気にしているというだけでまだ入学して間もないトモナリに勝負を仕掛けてきた男である。
「お前こそどうなんだ?」
「何がですか?」
「恋愛的な話だよ。正直お前はモテそうだ。言いたかないけどな」
トモナリの容姿は悪くない。
強いし、人柄もいい。
覚醒者としての将来性もあればモテない方がおかしいだろうとタケルは思う。
「周りに美人多い……そういったことは意識しないのか?」
「今のところ特にないですね」
確かに美人は多いな、と海で遊ぶ女の子たちを見て思った。
どんな容姿であれ素敵なところはあるものだとトモナリは思うが、女の子たちは見た目からして魅力的であることを否定できない。
恋愛的なことに興味がないとは言わない。
ただトモナリの中身は一応もう少し大人である。
ちょっと恋愛というものに距離を置いて見ているところはあるのかもしれない。
恋愛は相手も自分も互いに思い合ってのことだ。
一方的にこの子と口にするつもりはなかった。
「今のところヒカリが俺のパートナーですかね」
「それもまたハードルが高そうだ」
ヒカリも意外と嫉妬深いところがある。
仮にトモナリが恋愛するとなったらヒカリはなんと思うことだろうとタケルは目を細める。
小うるさい小姑みたいになるのだろうか。
「ははっ、まあ、そうした心配は相手ができてから考えますよ」
「モテる男の余裕か」
「先輩だってもう相手いるじゃないですか」
「別に俺はそういう関係じゃ……」
「何を話しているのだ?」
「あ、いえ、なんでもないです、お嬢!」
「お嬢ってのはやめなさいと言っているでしょう」
パラソルを立てて二人で話しているところに、いつの間にかカエデが後ろに来ていた。
お嬢なんていうと、ちょっとだけ危ない組織の人みたいだとカエデはため息をつく。
ただ実は最初にお嬢といえと言ったのはカエデだったりする。
ずっと昔の話だ。
「アイゼン、後で時間はいいか?」
「俺ですか? 構いませんよ」
「悪いね。今はとりあえず遊ぶといい」
「トモナリー! 終わったらこっちで遊ぶのだー!」
「ほら、呼ばれてるぞ」
「そうですね。行ってきます」
せっかく海に来たのだ。
遊ばないで見ているだけなんてつまらない。
トモナリもヒカリに誘われて海に向かっていった。
「んで、なんの話をしていたのだ?」
「いや……ちょっと将来の話をな」
「お前とアイゼンでか?」
「まあ、俺たちも先のことを考えることはあるさ」
「こんな海を前にして?」
「こんな海を前にしたからこそだ」
ーーーーー
夕焼けが海を赤く染めるまで遊んだ。
宿泊もオウルグループの方で用意してくれている。
ビーチを所有しているのは単なる娯楽ではなく、オウルグループの療養としての側面もある。
そのために海の近くには宿泊用の建物がいくつか建てられている。
「こういうのなんていうの? コテージ?」
「ヴィラよ」
「なんかオシャレなのだ、ゔぃら」
豪華な建物に泊まることができる。
海もあるのにプールもあるようなヴィラと呼ばれる宿泊施設はかなり贅沢な作りをしている。
「シェフもいるから、ディナーまではゆっくりしてちょうだい」
「い、至れり尽くせり!」
「先輩、懐深いっす」
流石に食事は自分たちで、と思っていたのだけど、カエデはなんとシェフまで用意してくれていた。
遊んで疲れた中で料理するのも大変なのでシェフが作ってくれるのはありがたい。
「アイゼン、少しいいか?」
「あっ、はい」
昼間言っていた件だろうとトモナリはカエデとタケルについていく。
宿泊する建物を出て、別のヴィラに向かう。
「ええと何があるんです?」
時間はあるかと聞かれたが、何をするのか聞いていなかった。
カエデのことだしおかしなことはしないだろうと思いつつも、わざわざ別のヴィラに向かう理由が分からない。
「まあ行けば分かる」
そう答えて同じく豪華なヴィラの中に入っていく。
「そうなんですか」
余裕があるというのも他の生徒に比べてという話だ。
やはり忙しいことに変わりはなく、なかなかトモナリも三年生の先輩たちと会えていない。
一年の時に三年だったフウカなんかからは、体験に行ったイガラシギルドに行くことにしたというメッセージをもらっていたこともあった。
今の三年生たちのなんとなくは聞いたりしていたが、細かくは知らなかった。
「余裕があるからフクロウ先輩の水着姿を眺めに来たんですか?」
「なっ……! お前っ!」
トモナリの軽い冗談。
しかしタケルは顔を真っ赤にしながらも思わずカエデのことを見る。
タケルがカエデに対してどんな感情を抱いているのかはみんな知っている。
カエデの方はどこまでの思いなのか測りかねるけれども、タケルを大切に思っていることはトモナリにもわかる。
「先輩スタイルいいですもん……」
「見るな、殺すぞ」
「先輩? 痛いですよ?」
トモナリがカエデを見ようとすると、タケルがトモナリの顔面を鷲掴みにした。
流石、カエデが気にしているというだけでまだ入学して間もないトモナリに勝負を仕掛けてきた男である。
「お前こそどうなんだ?」
「何がですか?」
「恋愛的な話だよ。正直お前はモテそうだ。言いたかないけどな」
トモナリの容姿は悪くない。
強いし、人柄もいい。
覚醒者としての将来性もあればモテない方がおかしいだろうとタケルは思う。
「周りに美人多い……そういったことは意識しないのか?」
「今のところ特にないですね」
確かに美人は多いな、と海で遊ぶ女の子たちを見て思った。
どんな容姿であれ素敵なところはあるものだとトモナリは思うが、女の子たちは見た目からして魅力的であることを否定できない。
恋愛的なことに興味がないとは言わない。
ただトモナリの中身は一応もう少し大人である。
ちょっと恋愛というものに距離を置いて見ているところはあるのかもしれない。
恋愛は相手も自分も互いに思い合ってのことだ。
一方的にこの子と口にするつもりはなかった。
「今のところヒカリが俺のパートナーですかね」
「それもまたハードルが高そうだ」
ヒカリも意外と嫉妬深いところがある。
仮にトモナリが恋愛するとなったらヒカリはなんと思うことだろうとタケルは目を細める。
小うるさい小姑みたいになるのだろうか。
「ははっ、まあ、そうした心配は相手ができてから考えますよ」
「モテる男の余裕か」
「先輩だってもう相手いるじゃないですか」
「別に俺はそういう関係じゃ……」
「何を話しているのだ?」
「あ、いえ、なんでもないです、お嬢!」
「お嬢ってのはやめなさいと言っているでしょう」
パラソルを立てて二人で話しているところに、いつの間にかカエデが後ろに来ていた。
お嬢なんていうと、ちょっとだけ危ない組織の人みたいだとカエデはため息をつく。
ただ実は最初にお嬢といえと言ったのはカエデだったりする。
ずっと昔の話だ。
「アイゼン、後で時間はいいか?」
「俺ですか? 構いませんよ」
「悪いね。今はとりあえず遊ぶといい」
「トモナリー! 終わったらこっちで遊ぶのだー!」
「ほら、呼ばれてるぞ」
「そうですね。行ってきます」
せっかく海に来たのだ。
遊ばないで見ているだけなんてつまらない。
トモナリもヒカリに誘われて海に向かっていった。
「んで、なんの話をしていたのだ?」
「いや……ちょっと将来の話をな」
「お前とアイゼンでか?」
「まあ、俺たちも先のことを考えることはあるさ」
「こんな海を前にして?」
「こんな海を前にしたからこそだ」
ーーーーー
夕焼けが海を赤く染めるまで遊んだ。
宿泊もオウルグループの方で用意してくれている。
ビーチを所有しているのは単なる娯楽ではなく、オウルグループの療養としての側面もある。
そのために海の近くには宿泊用の建物がいくつか建てられている。
「こういうのなんていうの? コテージ?」
「ヴィラよ」
「なんかオシャレなのだ、ゔぃら」
豪華な建物に泊まることができる。
海もあるのにプールもあるようなヴィラと呼ばれる宿泊施設はかなり贅沢な作りをしている。
「シェフもいるから、ディナーまではゆっくりしてちょうだい」
「い、至れり尽くせり!」
「先輩、懐深いっす」
流石に食事は自分たちで、と思っていたのだけど、カエデはなんとシェフまで用意してくれていた。
遊んで疲れた中で料理するのも大変なのでシェフが作ってくれるのはありがたい。
「アイゼン、少しいいか?」
「あっ、はい」
昼間言っていた件だろうとトモナリはカエデとタケルについていく。
宿泊する建物を出て、別のヴィラに向かう。
「ええと何があるんです?」
時間はあるかと聞かれたが、何をするのか聞いていなかった。
カエデのことだしおかしなことはしないだろうと思いつつも、わざわざ別のヴィラに向かう理由が分からない。
「まあ行けば分かる」
そう答えて同じく豪華なヴィラの中に入っていく。

