「着心地も悪くない」

 トモナリのサイズに合わせて作られているので、体にしっかりとフィットする。
 しなやかさを持ったミスリルは、トモナリの体の動きに合わせて柔らかく動いて邪魔をしない。

 守られている。
 そんな安心するような感覚があった。

『待っていたぞ』

「この声は……」

 ふと頭の中で声が聞こえた。

 ーーーーー

「あれ?」

 声が聞こえたと思った瞬間、気づいたらトモナリは工房ではない場所にいた。
 洞窟の中のような場所はなんとなく見覚えがある。

「久方ぶりだな」

 四角く切り取られた部屋のような洞窟の中にはソファーが置いてある。
 そこにスーツにコートのイケオジが座っていた。

「エド」

「名前を覚えていてくれたか」

 エドは目を細めて笑う。
 相変わらず渋い顔をしている。

「これは……」

 また何かの試練なのだろうかとトモナリは少し身構える。

「そう固くならずともいい。君……いや、主君が想像するようなことではないからな」

「しゅ、主君?」

 変な呼び方をされてトモナリは眉をひそめる。
 別にエドとは主従関係にない。

 主君などと呼ばれる筋合いはないのである。

「はははっ! まあ何も分からないだろうな」

 エドは穏やかに笑う。

「私は主君に力を貸すことになった。主君はアースドラゴンの意思に認められたのだ」

「アースドラゴンの意思……」

「そのおかげで私の思念はここに残ることになった。主君のことを補助して助けていけという思し召しであるのだ」

「……なるほどね」

 どうやらルビウスと似たようなものだとトモナリは察した。
 アースドラゴンの意思とかそうしたものが何なのかはよく分かっていないが、エドの魂が鎧の中に宿っているのだ。

「私を受け入れてくれるかな?」

 エドが立ち上がる。

「もちろん。でも主君……っていうのは何とかならない?」

「ふふ、何ともならない」

 エドは金色の瞳でトモナリのことを見つめる。
 スッと手を差し出してきたので、トモナリはそれに応じて手を握り返す。

「必要があれば私のことを呼ぶといい。私はいつでも主君のそばにいて、主君のことを守ろう」

「心強いよ。ありがとう」

「感謝を述べるのはこちらの方だ。ただ消えゆくのみだった私に最後の役割を与えてくれたのは……間違いなく主君だ」

「俺はそんな……」

「ドラゴンの友であろうとしてくれることは決して容易くない。従者と思うのが難しいなら歳の離れた友だと思ってほしい」

「……その方が気が楽そうですね」

 エドの手は大きくたくましい。
 アースドラゴンの力は戦ったので分かっている。

 仲間になってくれるならこれほど心強いことはない。
 主君と呼ばれることにはなれないが、大事に思ってくれるなら拒否する理由はない。

「ならば友となろう、主君よ」

 新たなるドラゴンの仲間。
 アースドラゴンのエドがトモナリの友達になったのであった。