「痛い……けど痛いで済んでるか……」
ビルの残骸に体を叩きつけられたトモナリは軽くうめく。
体は痛いが死んではいない。
ブラックドラゴンの攻撃をまともに受けて生きているだけありがたい。
「俺に何が起きてるんだ?」
力が宿るという表示はあったが、なんでいきなりそんなことが起きて、どこからなんの力が宿ったのかもわからない。
ドラゴンの攻撃に耐えられるほどの力なんて、尋常なものではない。
「それに……ヒカリもどうなってるんだ? そもそもあれはヒカリなのか……?」
ブラックドラゴンが咆哮する。
回帰前はただ恐怖を与えるような恐ろしい咆哮にしか聞こえなかったが、今はどこか悲しげな声に聞こえる。
「いや、あれはヒカリなんだ」
回帰前にヒカリは戦いたくないと言っていたことを思い出した。
戦いたくないのに抗えない何かによって戦わされていたのである。
今なら分かる。
ブラックドラゴンの咆哮は敵を威嚇するものではなく、ただただ望まないことをさせられている悲しい叫びだったのだと。
「止めてやらなきゃ……」
トモナリはゆっくりと立ち上がる。
誰が力を与えてくれたのかは知らないけれど、今はそんなことどうでもいい。
今のヒカリはただのブラックドラゴンだ。
ヒカリに戻してやらなきゃいけない。
今生み出されているのはただの悲劇だ。
戦いたくないブラックドラゴンとわずかな希望にかけて戦う人類。
どちらが勝っても幸せな結末などありはしない。
「ヒカリ……」
ブラックドラゴンがブレスを放って大きな爆発が起こる。
それだけでまだ人の命が散る。
「ヒカリー!」
トモナリはブラックドラゴンに向かって駆け出した。
「‘あいつは……’」
トモナリの装備も強い人たちが使っていたものが巡り巡ってきたもので、決して弱くはない。
けれどもブラックドラゴンの一撃で胸当てはもうぼろぼろになっていた。
先ほどドラゴンにやられたはずのやつが戻ってきたということに驚いている人もいる。
「悪いな……ちょっと痛くするぞ!」
トモナリはブレスを放とうとするブラックドラゴンの横っ面を剣で殴り飛ばす。
ブラックドラゴンの頭が弾かれてブレスがチリでかすみがかった空に飛んでいく。
ブレスに消し飛ばされて、ほんの一瞬だけ青空が見えたが、すぐにまたチリによって汚れた空に戻ってしまう。
「ヒカリ! 目を覚ませ!」
トモナリはブラックドラゴンと戦いながら声をかける。
もしかしたらヒカリの意識が目覚めて戦わずに済むかもしれない。
「くっ……!」
けれどもブラックドラゴンはトモナリに向かって前足を振り下ろす。
人なんて踏まれれば虫のように潰れてしまうだろう。
トモナリは飛び退いてかわす。
「俺のことが分からないのか……? ならショック療法だ!」
どうにもトモナリの声は通じていないようだ。
声をかけるだけでダメなら衝撃を与えてみる。
ブラックドラゴンのブレスを飛び上がって回避し、トモナリはブラックドラゴンの頭に剣を叩き込む。
「‘効いてるぞ!’」
「‘誰なのかは知らないが今がチャンスだ!’」
ブラックドラゴンの体がグラリと揺れた。
トモナリの出現に覚醒者たちも勢いづいて攻撃し始める。
「ヒカリ……俺はどうしたらいいんだ」
ブラックドラゴンが再び吠える。
どうしても悲しげな声に聞こえて、トモナリは胸が大きく痛んだ。
「どうすれば……」
このままブラックドラゴンを倒すのか、あるいは倒されるしかないのか。
ヒカリに声が届かない。
倒すことはできるのかもしれないけれど、それが本当に正しい選択なのか自信がない。
「言葉……そうか!」
トモナリは一度大きく下がって自分のステータスを見る。
レベルが100になっているけれど、最後のスキルスロットが空になっている。
そこは回帰前、交感力のスキルが入っていたところであった。
「アイテム全部投入でスキルの抽選を行う!」
交感力のスキルがないから言葉が通じない。
だとしたら納得もいく。
トモナリは回帰前にやったように全てのアイテムを使ってスキルの抽選を行う。
トモナリのインベントリが開いて中に入っていたアイテムが消えていく。
貴重なものも、そうでないものも全てがどこかに行ってしまった。
『ランダムスキルの抽選を行います』
インベントリが空になって、表示が目の前に現れる。
『確率変動が起こりました!』
続いて現れた表示はトモナリもよく覚えている。
「記憶の通りなら……」
『スキルの抽選が終わりました! EXスキルが抽選されました!』
ここまでは回帰前と同じように進んでいる。
いまだにEXスキルってやつがなんなのかは分かっていないが、今はどうでもよかった。
『EXスキル“滅竜の光”を手に入れました!』
「なん……だと?」
スキルが抽選されて選ばれた。
しかし選ばれたスキルは交感力ではなく、知らないスキルであった。
「滅竜の光……? ……おい、交感力は!」
トモナリは表示に手を伸ばすけれど、物理的な存在ではないためにそのまま触れることもなく手はすり抜ける。
全くもって望んでいたスキルじゃない。
ビルの残骸に体を叩きつけられたトモナリは軽くうめく。
体は痛いが死んではいない。
ブラックドラゴンの攻撃をまともに受けて生きているだけありがたい。
「俺に何が起きてるんだ?」
力が宿るという表示はあったが、なんでいきなりそんなことが起きて、どこからなんの力が宿ったのかもわからない。
ドラゴンの攻撃に耐えられるほどの力なんて、尋常なものではない。
「それに……ヒカリもどうなってるんだ? そもそもあれはヒカリなのか……?」
ブラックドラゴンが咆哮する。
回帰前はただ恐怖を与えるような恐ろしい咆哮にしか聞こえなかったが、今はどこか悲しげな声に聞こえる。
「いや、あれはヒカリなんだ」
回帰前にヒカリは戦いたくないと言っていたことを思い出した。
戦いたくないのに抗えない何かによって戦わされていたのである。
今なら分かる。
ブラックドラゴンの咆哮は敵を威嚇するものではなく、ただただ望まないことをさせられている悲しい叫びだったのだと。
「止めてやらなきゃ……」
トモナリはゆっくりと立ち上がる。
誰が力を与えてくれたのかは知らないけれど、今はそんなことどうでもいい。
今のヒカリはただのブラックドラゴンだ。
ヒカリに戻してやらなきゃいけない。
今生み出されているのはただの悲劇だ。
戦いたくないブラックドラゴンとわずかな希望にかけて戦う人類。
どちらが勝っても幸せな結末などありはしない。
「ヒカリ……」
ブラックドラゴンがブレスを放って大きな爆発が起こる。
それだけでまだ人の命が散る。
「ヒカリー!」
トモナリはブラックドラゴンに向かって駆け出した。
「‘あいつは……’」
トモナリの装備も強い人たちが使っていたものが巡り巡ってきたもので、決して弱くはない。
けれどもブラックドラゴンの一撃で胸当てはもうぼろぼろになっていた。
先ほどドラゴンにやられたはずのやつが戻ってきたということに驚いている人もいる。
「悪いな……ちょっと痛くするぞ!」
トモナリはブレスを放とうとするブラックドラゴンの横っ面を剣で殴り飛ばす。
ブラックドラゴンの頭が弾かれてブレスがチリでかすみがかった空に飛んでいく。
ブレスに消し飛ばされて、ほんの一瞬だけ青空が見えたが、すぐにまたチリによって汚れた空に戻ってしまう。
「ヒカリ! 目を覚ませ!」
トモナリはブラックドラゴンと戦いながら声をかける。
もしかしたらヒカリの意識が目覚めて戦わずに済むかもしれない。
「くっ……!」
けれどもブラックドラゴンはトモナリに向かって前足を振り下ろす。
人なんて踏まれれば虫のように潰れてしまうだろう。
トモナリは飛び退いてかわす。
「俺のことが分からないのか……? ならショック療法だ!」
どうにもトモナリの声は通じていないようだ。
声をかけるだけでダメなら衝撃を与えてみる。
ブラックドラゴンのブレスを飛び上がって回避し、トモナリはブラックドラゴンの頭に剣を叩き込む。
「‘効いてるぞ!’」
「‘誰なのかは知らないが今がチャンスだ!’」
ブラックドラゴンの体がグラリと揺れた。
トモナリの出現に覚醒者たちも勢いづいて攻撃し始める。
「ヒカリ……俺はどうしたらいいんだ」
ブラックドラゴンが再び吠える。
どうしても悲しげな声に聞こえて、トモナリは胸が大きく痛んだ。
「どうすれば……」
このままブラックドラゴンを倒すのか、あるいは倒されるしかないのか。
ヒカリに声が届かない。
倒すことはできるのかもしれないけれど、それが本当に正しい選択なのか自信がない。
「言葉……そうか!」
トモナリは一度大きく下がって自分のステータスを見る。
レベルが100になっているけれど、最後のスキルスロットが空になっている。
そこは回帰前、交感力のスキルが入っていたところであった。
「アイテム全部投入でスキルの抽選を行う!」
交感力のスキルがないから言葉が通じない。
だとしたら納得もいく。
トモナリは回帰前にやったように全てのアイテムを使ってスキルの抽選を行う。
トモナリのインベントリが開いて中に入っていたアイテムが消えていく。
貴重なものも、そうでないものも全てがどこかに行ってしまった。
『ランダムスキルの抽選を行います』
インベントリが空になって、表示が目の前に現れる。
『確率変動が起こりました!』
続いて現れた表示はトモナリもよく覚えている。
「記憶の通りなら……」
『スキルの抽選が終わりました! EXスキルが抽選されました!』
ここまでは回帰前と同じように進んでいる。
いまだにEXスキルってやつがなんなのかは分かっていないが、今はどうでもよかった。
『EXスキル“滅竜の光”を手に入れました!』
「なん……だと?」
スキルが抽選されて選ばれた。
しかし選ばれたスキルは交感力ではなく、知らないスキルであった。
「滅竜の光……? ……おい、交感力は!」
トモナリは表示に手を伸ばすけれど、物理的な存在ではないためにそのまま触れることもなく手はすり抜ける。
全くもって望んでいたスキルじゃない。

