「ミズキ、避けろ!」
「あ、あぶな!」
カニのハサミをミズキは間一髪回避する。
風を切る轟音が間近で聞こえてミズキは背中が冷えるような思いだった。
「あんまり本気で攻撃はしなくていい!」
「オッケー!」
通じない攻撃はむしろ大きな隙となってしまう。
今はまだ耐える時だ。
「食らうのだ!」
ヒカリが魔法を発動させる。
魔力が赤々と燃え上がる火の玉に変わってヒカリの周りに浮かび上がる。
広げた翼と両手をカニに向かって突き出すと火の玉が飛んでいく。
カニは丸まって火の玉を防御する。
「ハサミや甲羅はやっぱり厳しいな」
カニが防御体勢を取っている隙にトモナリは軽く斬りつけてみた。
ほんのわずかなミスリルの隙間から甲羅を攻撃してみたけれど、ミスリルがなくても甲羅は硬い。
剣を振りかぶってミスリルの隙間を狙うことも難しいのに、硬くて貫けるかも分からないと攻撃することもためらわれてしまう。
「トモナリ君、こっちは倒せたよ!」
トモナリたちが時間を稼いでいる間に、ミスリルクラブはすっかり茹で上がってしまっていた。
「よし! コウ、そのお湯をそのまま使うんだ!」
今のトモナリたちの実力で、ボスミスリルクラブを正面から倒すのは難しい。
やはり茹で上げ戦法を使うしかない。
「ヒカリ、お湯の温度を上げろ! サーシャはこっちに加わってミスリルクラブの気を引くぞ!」
一度ミスリルクラブの茹で上げに使ったお湯の温度はだいぶ下がっている。
ここは冷静になってお湯の温度を上げる。
「分かったのだ! ファイヤー!」
ヒカリがブレスを放ってお湯の玉を温め始める。
「トモナリ君……水は足したほうがいいかい?」
コウはボスミスリルクラブとお湯の玉を見比べる。
ミスリルクラブなら閉じ込められるほどの水量はあるけれど、ボスミスリルクラブを閉じ込めておくにはやや量が足りない。
「いや、そのままでいこう!」
水を足して、さらに温めている余裕はない。
「沸騰したら胴体をお湯で包むんだ!」
「胴体を……」
『トモナリ、妾も手伝おう』
ルビウスの声が頭の中で響く。
戦い始まったのでルビウスは召喚を解除して剣の中にいた。
「何を手伝うんだ?」
ミスリルクラブを引きつけるのは三人もいれば十分である。
ルビウスもいればより安定はするかもしれない。
『妾もあれを温めよう。そのほうが効率が良いだろう?』
「確かにな」
ルビウスは自分も出てお湯の玉を温めようと考えていた。
ヒカリだけでやるよりも、ルビウスも加わったほうが効率良くお湯を温められる。
「頼むぞ!」
「待っておれ。すぐにお湯にしてやろう!」
トモナリはルビウスは呼び出す。
「ほっ!」
呼び出されたミニ竜姿のルビウスはヒカリの逆側からブレスの炎を当てる。
「これならすぐに……サーシャ、避けるんだ!」
二竜力ならすぐにお湯も沸騰しそう。
あとはそれまでボスミスリルクラブを引きつけるだけだと振り返ったトモナリは、ボスミスリルクラブの口元がやたらと泡泡していることに気づいた。
何かをするつもりだと瞬間的に察した。
トモナリはボスミスリルクラブの正面にいるサーシャに向かって叫んだ。
「んん!」
トモナリの指示にサーシャも素早く反応した。
何が起こるのか考える前に回避行動をとった。
次の瞬間、ボスミスリルクラブの口から水が放たれた。
まるでウォーターカッターのように勢いよく吹き出された水は、サーシャの盾をかすめた。
角がスパッと切れて、盾の破片が地面に落ちる。
まともに正面から受けていたら危ないところであった。
「あんな攻撃もあるのか……」
ボスミスリルクラブのみの攻撃なのか、あるいは通常のミスリルクラブもあんな攻撃をするのか知らないが、意外な隠し玉を持っていたものだ。
「トモナリ君! お湯が沸いた!」
「よし! こっちだ!」
お湯の玉が激しく沸騰している。
あれは熱いだろうなと思いながら、トモナリはミスリルクラブの気を引きつけようと前に出る。
振り下ろされるハサミをかわしながら円を描くように移動する。
「コウ、今だ!」
トモナリを追いかけたボスミスリルクラブはいつの間にかお湯の玉に背を向ける形になっていた。
仲間が茹で上げられたせいか、戦いが始まったためか、不用心にお湯の玉に飛び込むことはしなかった。
けれどもやはり水の塊に対する警戒心はかなり薄いようだ。
「待ってたよ!」
コウはすごく焦ったい気持ちだった。
水の玉を維持するということはとても大切である。
しかし維持しているだけという役割は、仲間たちが必死に戦っている姿を見守るしかできない役割でもあった。
魔法で攻撃したり気を引いたりと戦いに参加したい焦ったさが強かった。
でもコウはそれでも水の玉を維持することに集中して耐えた。
ようやくの出番にコウはお湯となった玉を撃ち出すように動かした。
「それでいい!」
お湯の玉はボスミスリルクラブの胴体を包み込む。
全体を包み込むにはお湯が足りない。
でもトモナリはそれでいいと考えていた。
「何も全体を包み込む必要はないからな」
大事なのは内部に熱によるダメージを与えることだ。
内部というのは主に内臓を意図している。
つまりは胴体の中に熱によるダメージを与えられればいいのである。
「あ、あぶな!」
カニのハサミをミズキは間一髪回避する。
風を切る轟音が間近で聞こえてミズキは背中が冷えるような思いだった。
「あんまり本気で攻撃はしなくていい!」
「オッケー!」
通じない攻撃はむしろ大きな隙となってしまう。
今はまだ耐える時だ。
「食らうのだ!」
ヒカリが魔法を発動させる。
魔力が赤々と燃え上がる火の玉に変わってヒカリの周りに浮かび上がる。
広げた翼と両手をカニに向かって突き出すと火の玉が飛んでいく。
カニは丸まって火の玉を防御する。
「ハサミや甲羅はやっぱり厳しいな」
カニが防御体勢を取っている隙にトモナリは軽く斬りつけてみた。
ほんのわずかなミスリルの隙間から甲羅を攻撃してみたけれど、ミスリルがなくても甲羅は硬い。
剣を振りかぶってミスリルの隙間を狙うことも難しいのに、硬くて貫けるかも分からないと攻撃することもためらわれてしまう。
「トモナリ君、こっちは倒せたよ!」
トモナリたちが時間を稼いでいる間に、ミスリルクラブはすっかり茹で上がってしまっていた。
「よし! コウ、そのお湯をそのまま使うんだ!」
今のトモナリたちの実力で、ボスミスリルクラブを正面から倒すのは難しい。
やはり茹で上げ戦法を使うしかない。
「ヒカリ、お湯の温度を上げろ! サーシャはこっちに加わってミスリルクラブの気を引くぞ!」
一度ミスリルクラブの茹で上げに使ったお湯の温度はだいぶ下がっている。
ここは冷静になってお湯の温度を上げる。
「分かったのだ! ファイヤー!」
ヒカリがブレスを放ってお湯の玉を温め始める。
「トモナリ君……水は足したほうがいいかい?」
コウはボスミスリルクラブとお湯の玉を見比べる。
ミスリルクラブなら閉じ込められるほどの水量はあるけれど、ボスミスリルクラブを閉じ込めておくにはやや量が足りない。
「いや、そのままでいこう!」
水を足して、さらに温めている余裕はない。
「沸騰したら胴体をお湯で包むんだ!」
「胴体を……」
『トモナリ、妾も手伝おう』
ルビウスの声が頭の中で響く。
戦い始まったのでルビウスは召喚を解除して剣の中にいた。
「何を手伝うんだ?」
ミスリルクラブを引きつけるのは三人もいれば十分である。
ルビウスもいればより安定はするかもしれない。
『妾もあれを温めよう。そのほうが効率が良いだろう?』
「確かにな」
ルビウスは自分も出てお湯の玉を温めようと考えていた。
ヒカリだけでやるよりも、ルビウスも加わったほうが効率良くお湯を温められる。
「頼むぞ!」
「待っておれ。すぐにお湯にしてやろう!」
トモナリはルビウスは呼び出す。
「ほっ!」
呼び出されたミニ竜姿のルビウスはヒカリの逆側からブレスの炎を当てる。
「これならすぐに……サーシャ、避けるんだ!」
二竜力ならすぐにお湯も沸騰しそう。
あとはそれまでボスミスリルクラブを引きつけるだけだと振り返ったトモナリは、ボスミスリルクラブの口元がやたらと泡泡していることに気づいた。
何かをするつもりだと瞬間的に察した。
トモナリはボスミスリルクラブの正面にいるサーシャに向かって叫んだ。
「んん!」
トモナリの指示にサーシャも素早く反応した。
何が起こるのか考える前に回避行動をとった。
次の瞬間、ボスミスリルクラブの口から水が放たれた。
まるでウォーターカッターのように勢いよく吹き出された水は、サーシャの盾をかすめた。
角がスパッと切れて、盾の破片が地面に落ちる。
まともに正面から受けていたら危ないところであった。
「あんな攻撃もあるのか……」
ボスミスリルクラブのみの攻撃なのか、あるいは通常のミスリルクラブもあんな攻撃をするのか知らないが、意外な隠し玉を持っていたものだ。
「トモナリ君! お湯が沸いた!」
「よし! こっちだ!」
お湯の玉が激しく沸騰している。
あれは熱いだろうなと思いながら、トモナリはミスリルクラブの気を引きつけようと前に出る。
振り下ろされるハサミをかわしながら円を描くように移動する。
「コウ、今だ!」
トモナリを追いかけたボスミスリルクラブはいつの間にかお湯の玉に背を向ける形になっていた。
仲間が茹で上げられたせいか、戦いが始まったためか、不用心にお湯の玉に飛び込むことはしなかった。
けれどもやはり水の塊に対する警戒心はかなり薄いようだ。
「待ってたよ!」
コウはすごく焦ったい気持ちだった。
水の玉を維持するということはとても大切である。
しかし維持しているだけという役割は、仲間たちが必死に戦っている姿を見守るしかできない役割でもあった。
魔法で攻撃したり気を引いたりと戦いに参加したい焦ったさが強かった。
でもコウはそれでも水の玉を維持することに集中して耐えた。
ようやくの出番にコウはお湯となった玉を撃ち出すように動かした。
「それでいい!」
お湯の玉はボスミスリルクラブの胴体を包み込む。
全体を包み込むにはお湯が足りない。
でもトモナリはそれでいいと考えていた。
「何も全体を包み込む必要はないからな」
大事なのは内部に熱によるダメージを与えることだ。
内部というのは主に内臓を意図している。
つまりは胴体の中に熱によるダメージを与えられればいいのである。

