「まあ人でもこれぶつけられたら、結構致命的だよね」
グツグツと湯だち始めた水の玉をミズキは見上げる。
たとえ鍋いっぱいぐらいの量だとしても、お湯かけられたらかなりの大ダメージだ。
玉の中に閉じ込められなくとも、人ならかけられるだけで全身大火傷である。
そう考えると、茹で上げ戦法はかなり凶悪な作戦なのではないかと思えてきた。
モンスターのみならず人にもかなり有効になりそうである。
「確かにな」
盾を構えてもお湯を防ぎ切ることは難しい。
たとえ剣で切ってもお湯をかぶることになる。
そうなるとやはり回避するしかない。
お湯って意外と怖いなとミズキは思った。
「よし、コウ、やってしまぇい!」
水の玉はお湯の玉になった。
これ以上熱しても魔力の無駄なので、そろそろミスリルクラブにお湯の玉に飛び込んでもらう。
コウがお湯の玉を動かす。
動かすとお湯が揺れて、ほんの少しだけチャポチャポと音がする。
「ふふん、僕ならあんなものに引っかからないのだ」
ミスリルクラブは近づいてきたお湯の玉に気づくと、なんの疑いもなく飛び込んだ。
ヒカリはミスリルクラブをバカにしたように笑う。
どのミスリルクラブも簡単にお湯に飛び込んでくれる。
自分なら怪しい水の玉に飛び込むことはしないのにとヒカリは思う。
「まあきっと水が恋しいんだろうな」
モンスターにはモンスターの生態系があって、その結果の進化を遂げたのではないかと言われている。
ミスリルクラブがこんなところに住んでいるのはミスリルという使えるものがあって、ミスリルクラブを狙うような外敵がいないからだろう。
本来なら水辺にいたいはずなのだ。
だからお湯の玉だろうが、ろくに確かめず水があると飛び込んでしまうのである。
バカといえばバカなのだけど、そこに至るまでの経緯を想像してみると意外と可哀想だとも言えるかもしれない。
お湯の玉に飛び込んだミスリルクラブを外に出ないようにしながら、さらに熱を加えて茹で上げる。
ミスリルクラブは抵抗を見せるが、お湯の玉から出ることを邪魔されてだんだんと赤くなっていく。
「トモナリ君、来てる」
「他のも近くにいたのか!」
サーシャが横歩きではなく、縦で走ってくるミスリルクラブに気がついた。
どうやら近くに別の個体がいたらしい。
「……なんかデカくない?」
「ボス個体だ!」
走ってくるミスリルクラブを見て、なんだかサイズが大きいことに気がついた。
よくみると甲羅のミスリルも豪華である。
トモナリはすぐにそれがミスリルクラブのボス個体であると察した。
「コウはそのまま魔法を維持しろ! サーシャはミスリルクラブを閉じ込め続けろ!」
「わ、私は?」
「俺とミズキであいつを引きつけるぞ! ヒカリもこっち来い!」
「うぬ!」
お湯の玉に閉じ込められたミスリルクラブはすでに全身赤くなっている。
そう時間もかからずに倒すことができるだろう。
ならばボスミスリルクラブの方は少し時間を稼いで、ミスリルクラブが死ぬのを待ってから戦う方がいい。
コウは魔法の維持に集中してもらう。
力が強めなサーシャにはミスリルクラブの抵抗を抑えてもらって、トモナリとミズキでボスミスリルクラブの注意を引きつける。
ミスリルクラブの状態を見るに、もうお湯を温める必要はない。
ヒカリもボスミスリルクラブの方に来てもらう。
「ミズキ、無茶しないで回避を中心にするんだ!」
ミズキをボスミスリルクラブの方に選んだのには理由がある。
サーシャよりもミズキの方が素早さが高い。
ボスというのは大体能力的に通常モンスターよりも一つ上である。
三階にいるモンスターということは少なくとも一回のケイブマンティスと同等か、あるいは正面で戦えばミスリルクラブの方が強い可能性が高い。
どの点でミスリルクラブの方が優れているのかはハッキリとしない。
防御力という面ではミスリルクラブの方が遥かに上なのは言うまでもないが、攻撃力や破壊力という点でミスリルクラブが上か、ケイブマンティスが上かはなかなか比べにくい。
サーシャが盾で耐えながらということを、トモナリだけのフォローでは厳しい可能性もあった。
「ボーッ!」
ヒカリがブレスを放つ。
真っ赤な炎をミスリルクラブはハサミでガードする。
ハサミにもミスリルがくっつけられていて、ヒカリのブレスはミスリルに阻まれてしまう。
「にょわ!」
ボスミスリルクラブはヒカリに向かってハサミを振り下ろす。
ヒカリがかわすと、ハサミは地面に当たる。
鈍い音がして地面が砕けて石が飛ぶ。
ミスリルもまとって硬いハサミの威力は侮れない。
ここまでマトモにミスリルクラブと正面から戦ってこなかったのに、いきなりボスと戦うことになるなんてとトモナリは顔をしかめる。
「はあっ! ううっ!」
ミズキがボスミスリルクラブに切り掛かった。
ミスリルクラブは防御すらしない。
甲羅に部分をミズキは切りつけたのであるのだが、あまりにも硬くて傷一つつけられない。
むしろ切りつけたミズキの手の方が痺れてしまうぐらいなのであった。
グツグツと湯だち始めた水の玉をミズキは見上げる。
たとえ鍋いっぱいぐらいの量だとしても、お湯かけられたらかなりの大ダメージだ。
玉の中に閉じ込められなくとも、人ならかけられるだけで全身大火傷である。
そう考えると、茹で上げ戦法はかなり凶悪な作戦なのではないかと思えてきた。
モンスターのみならず人にもかなり有効になりそうである。
「確かにな」
盾を構えてもお湯を防ぎ切ることは難しい。
たとえ剣で切ってもお湯をかぶることになる。
そうなるとやはり回避するしかない。
お湯って意外と怖いなとミズキは思った。
「よし、コウ、やってしまぇい!」
水の玉はお湯の玉になった。
これ以上熱しても魔力の無駄なので、そろそろミスリルクラブにお湯の玉に飛び込んでもらう。
コウがお湯の玉を動かす。
動かすとお湯が揺れて、ほんの少しだけチャポチャポと音がする。
「ふふん、僕ならあんなものに引っかからないのだ」
ミスリルクラブは近づいてきたお湯の玉に気づくと、なんの疑いもなく飛び込んだ。
ヒカリはミスリルクラブをバカにしたように笑う。
どのミスリルクラブも簡単にお湯に飛び込んでくれる。
自分なら怪しい水の玉に飛び込むことはしないのにとヒカリは思う。
「まあきっと水が恋しいんだろうな」
モンスターにはモンスターの生態系があって、その結果の進化を遂げたのではないかと言われている。
ミスリルクラブがこんなところに住んでいるのはミスリルという使えるものがあって、ミスリルクラブを狙うような外敵がいないからだろう。
本来なら水辺にいたいはずなのだ。
だからお湯の玉だろうが、ろくに確かめず水があると飛び込んでしまうのである。
バカといえばバカなのだけど、そこに至るまでの経緯を想像してみると意外と可哀想だとも言えるかもしれない。
お湯の玉に飛び込んだミスリルクラブを外に出ないようにしながら、さらに熱を加えて茹で上げる。
ミスリルクラブは抵抗を見せるが、お湯の玉から出ることを邪魔されてだんだんと赤くなっていく。
「トモナリ君、来てる」
「他のも近くにいたのか!」
サーシャが横歩きではなく、縦で走ってくるミスリルクラブに気がついた。
どうやら近くに別の個体がいたらしい。
「……なんかデカくない?」
「ボス個体だ!」
走ってくるミスリルクラブを見て、なんだかサイズが大きいことに気がついた。
よくみると甲羅のミスリルも豪華である。
トモナリはすぐにそれがミスリルクラブのボス個体であると察した。
「コウはそのまま魔法を維持しろ! サーシャはミスリルクラブを閉じ込め続けろ!」
「わ、私は?」
「俺とミズキであいつを引きつけるぞ! ヒカリもこっち来い!」
「うぬ!」
お湯の玉に閉じ込められたミスリルクラブはすでに全身赤くなっている。
そう時間もかからずに倒すことができるだろう。
ならばボスミスリルクラブの方は少し時間を稼いで、ミスリルクラブが死ぬのを待ってから戦う方がいい。
コウは魔法の維持に集中してもらう。
力が強めなサーシャにはミスリルクラブの抵抗を抑えてもらって、トモナリとミズキでボスミスリルクラブの注意を引きつける。
ミスリルクラブの状態を見るに、もうお湯を温める必要はない。
ヒカリもボスミスリルクラブの方に来てもらう。
「ミズキ、無茶しないで回避を中心にするんだ!」
ミズキをボスミスリルクラブの方に選んだのには理由がある。
サーシャよりもミズキの方が素早さが高い。
ボスというのは大体能力的に通常モンスターよりも一つ上である。
三階にいるモンスターということは少なくとも一回のケイブマンティスと同等か、あるいは正面で戦えばミスリルクラブの方が強い可能性が高い。
どの点でミスリルクラブの方が優れているのかはハッキリとしない。
防御力という面ではミスリルクラブの方が遥かに上なのは言うまでもないが、攻撃力や破壊力という点でミスリルクラブが上か、ケイブマンティスが上かはなかなか比べにくい。
サーシャが盾で耐えながらということを、トモナリだけのフォローでは厳しい可能性もあった。
「ボーッ!」
ヒカリがブレスを放つ。
真っ赤な炎をミスリルクラブはハサミでガードする。
ハサミにもミスリルがくっつけられていて、ヒカリのブレスはミスリルに阻まれてしまう。
「にょわ!」
ボスミスリルクラブはヒカリに向かってハサミを振り下ろす。
ヒカリがかわすと、ハサミは地面に当たる。
鈍い音がして地面が砕けて石が飛ぶ。
ミスリルもまとって硬いハサミの威力は侮れない。
ここまでマトモにミスリルクラブと正面から戦ってこなかったのに、いきなりボスと戦うことになるなんてとトモナリは顔をしかめる。
「はあっ! ううっ!」
ミズキがボスミスリルクラブに切り掛かった。
ミスリルクラブは防御すらしない。
甲羅に部分をミズキは切りつけたのであるのだが、あまりにも硬くて傷一つつけられない。
むしろ切りつけたミズキの手の方が痺れてしまうぐらいなのであった。

